1-2
『これより、新入生歓迎会を始めます』
校内放送で生徒会長がそう告げると、新入生歓迎会が始まる。
教室から部室に向かおうとすると、紅梨さんに引き止められる。
「ん?」
「一緒に行きません?」
「オッケー。それより安城さん、紅梨さんになるんじゃないの?」
他の人に聴こえるか聞こえないかくらいの声で言う。
「あ・・・・・・。そ、そうでしたね。私はこれから澤井になるところだったんですよ」
あ、これ絶対に忘れてたやつ。
だが、ここはあえて・・・・・・。
「んじゃ、俺は先に部室に行ってる」
「分かりました。ちなみに本気でやります?」
「どういう事?」
「五十嵐先輩以外は安城=澤井と知ってますし」
「カラコンとか外して髪の色も染め直すってこと?」
「はい」
「時間掛かんない?」
「大丈夫です。15分あればできます」
「すごくね?」
「では、私はこれで」
紅梨さんは鞄を持って外に出ていった。
「それじゃ、僕らも行こうか」
「サーチエクスペンシブ・・・・・・。いつから聞いてた?」
「最初から」
◆
部室に到着すると、既に五十嵐先輩と水無瀬が準備を進めていた。
1年生は最初の15分は各部活の紹介動画を見ることになっている。
「というか、ふと思ったんだけど、五十嵐先輩って高1じゃね?」
「そうだよ?」
「中高一貫校とはいえ、先輩が高校に行った気がしない」
紗弥さん、随分と強気ですね。
「まぁね。元々俺は成績が悪いからな」
「だから安城さんに教わってるのね」
「そういう事。おっと、そろそろ時間だ。澤井さんはいつ来るって?」
「た、多分もうすぐじゃないかな〜?」
サーチエクスペンシブ。
語尾が上がってて凄いわかりやすいウソを付くな。
こんなんで騙されるやつなんて居るわけ――――
「そうか。良かった」
居たわ。
俺が呆れていると、部室の扉が開く。
全員の視線がそっちに向く。
「遅くなりました」
入ってきたのは水色の髪を2つに結び、オッドアイで制服の紅梨さん。
「えっと・・・・・・あなたが澤井さんですか」
「お初にお目にかかります。五十嵐さん。私は澤井紅梨です。『紅梨』でいいですよ」
「こう見えてこの人中2になったばっかですからね。五十嵐先輩のほうが歳上ですよ」
サードラインがぼそっと呟く。
「川中さん?後で少しお話しましょうか」
「え?何で?」
紅梨さんの目、怖っ。
「今日は来てくれてありがとうございます」
「いえ、最後の仕事だと思えば楽ですね」
「最後の?」
思わず水無瀬が会話に入る。
「はい。紗弥さんや島田くんは知ってると思いますが」
「『私はこの事件が終わったら探偵を辞める』だっけ?」
紗弥さんは暗唱する。
少し違う気がするけど・・・・・・。
「はい」
「じゃ、なおさらこんなところじゃ悪いんじゃないの?」
五十嵐先輩が心配そうに言う。
「私的にはこちらの方が安心したというか、だから気にしないでください」
「そういうことにしておく」
「ありがとうございます。それで、今日私は何をすれば良いんですか?」
紅梨さん、流石だな。
サードラインを目力で圧殺した後に、五十嵐先輩を納得させるとは。
俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
◆
「お、1年生が来た」
サードラインが廊下に出していた上半身を引っ込ませる。
が、それもつかの間。
すぐに宣伝用の板を掲げて部室の前に立つ。
ま、同好会だから入る人少なそうだし。
俺はゆっくりするとするか。
「ルーズセル、今いいか?」
サーチエクスペンシブがかしこまったように言う。
「何だ?」
「昨日WPTで言ったことなんだけど」
「あぁ、あれね」
「これは他人に言うなよ」
「言わねぇよ」
「ルーズセル、意外とお人好しだからなぁ。なんとも言えないんだよな」
「俺のこと、信用してなさすぎ。泣いた」
「まぁまぁ。本題に入るけど」
サーチエクスペンシブが真顔に戻る。
「それも国家機密情報」
「は、はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
思わず声を挙げてしまった。
え、俺の聴き間違い?
「え?もう1回言って。俺の聞き間違いかもしれん」
「国家機密情報」
聴き間違えなんかじゃなかった。
え?
それ大分まずいんじゃないの?
「大丈夫。まだ可能性が五分五分ってところだから」
「いや、そういう問題じゃなくてですね・・・・・・」
ダメだ。
この人に何を言っても無駄だ。
「ちょっとそこの2人、遊んでないで勧誘してきて」
紗弥さんが腰に手を当てて言う。
「そもそも同好会に入る人なんか相当いないって」
「あ、そう?へぇ。そんな事言うんだ。ふぅん」
今日の紗弥さん、煽り点数満点だな。
残念だが、俺は煽り耐性満点だぜ。
その攻撃は俺には無効化される!!
「ねぇねぇねぇ聴いてる?」
フッ。
紗弥さんが心を読めないからって態度が変わるわけない。
「はいはい。そんなに言うなら紗弥さんが勧誘してくれば?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??島田くん、殺されたいの?」
冗談に聴こえるが、この子なら殺りかねない。
この前まで戦場に立ってたからな・・・・・・。
「――――なわけねぇだろ」
「大丈夫。殺る時は痛みを感じないスピードで首を落としてあげるから」
「それ、俺死んでるよね」
「もちろん」
深くため息を着いてから椅子に座る。
「ルーズセル、大人しく廊下に立つか」
「折れんの早くねぇか?サーチエクスペンシブにしては・・・・・・」
そう言いかけて言葉を失った。
そこに立っていたのは、気絶したサーチエクスペンシブの首根っこを持って
俺に笑顔でサーチエクスペンシブの声真似して言う紅梨さんが立っていた。
≪To The Next Story...≫
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