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『これより、新入生歓迎会を始めます』


校内放送で生徒会長がそう告げると、新入生歓迎会が始まる。

教室から部室に向かおうとすると、紅梨さんに引き止められる。


「ん?」

「一緒に行きません?」

「オッケー。それより安城さん、紅梨さんになるんじゃないの?」


他の人に聴こえるか聞こえないかくらいの声で言う。


「あ・・・・・・。そ、そうでしたね。私はこれから澤井になるところだったんですよ」


あ、これ絶対に忘れてたやつ。

だが、ここはあえて・・・・・・。


「んじゃ、俺は先に部室に行ってる」

「分かりました。ちなみに本気でやります?」

「どういう事?」

「五十嵐先輩以外は安城=澤井と知ってますし」

「カラコンとか外して髪の色も染め直すってこと?」

「はい」

「時間掛かんない?」

「大丈夫です。15分あればできます」

「すごくね?」

「では、私はこれで」


紅梨さんは鞄を持って外に出ていった。


「それじゃ、僕らも行こうか」

「サーチエクスペンシブ・・・・・・。いつから聞いてた?」

「最初から」



部室に到着すると、既に五十嵐先輩と水無瀬が準備を進めていた。

1年生は最初の15分は各部活の紹介動画を見ることになっている。


「というか、ふと思ったんだけど、五十嵐先輩って高1じゃね?」

「そうだよ?」

「中高一貫校とはいえ、先輩が高校に行った気がしない」


紗弥さん、随分と強気ですね。


「まぁね。元々俺は成績が悪いからな」

「だから安城さんに教わってるのね」

「そういう事。おっと、そろそろ時間だ。澤井さんはいつ来るって?」

「た、多分もうすぐじゃないかな〜?」


サーチエクスペンシブ。

語尾が上がってて凄いわかりやすいウソを付くな。

こんなんで騙されるやつなんて居るわけ――――


「そうか。良かった」


居たわ。

俺が呆れていると、部室の扉が開く。

全員の視線がそっちに向く。


「遅くなりました」


入ってきたのは水色の髪を2つに結び、オッドアイで制服の紅梨さん。


「えっと・・・・・・あなたが澤井さんですか」

「お初にお目にかかります。五十嵐さん。私は澤井紅梨です。『紅梨』でいいですよ」

「こう見えてこの人中2になったばっかですからね。五十嵐先輩のほうが歳上ですよ」


サードラインがぼそっと呟く。


「川中さん?後で少しお話しましょうか」

「え?何で?」


紅梨さんの目、怖っ。


「今日は来てくれてありがとうございます」

「いえ、だと思えば楽ですね」

「最後の?」


思わず水無瀬が会話に入る。


「はい。紗弥さんや島田くんは知ってると思いますが」

「『私はこの事件が終わったら探偵を辞める』だっけ?」


紗弥さんは暗唱する。

少し違う気がするけど・・・・・・。


「はい」

「じゃ、なおさらこんなところじゃ悪いんじゃないの?」


五十嵐先輩が心配そうに言う。


「私的にはこちらの方が安心したというか、だから気にしないでください」

「そういうことにしておく」

「ありがとうございます。それで、今日私は何をすれば良いんですか?」


紅梨さん、流石だな。

サードラインを目力で圧殺した後に、五十嵐先輩を納得させるとは。

俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。



「お、1年生が来た」


サードラインが廊下に出していた上半身を引っ込ませる。

が、それもつかの間。

すぐに宣伝用の板を掲げて部室の前に立つ。

ま、同好会だから入る人少なそうだし。

俺はゆっくりするとするか。


「ルーズセル、今いいか?」


サーチエクスペンシブがかしこまったように言う。


「何だ?」

「昨日WPTで言ったことなんだけど」

「あぁ、あれね」

「これは他人に言うなよ」

「言わねぇよ」

「ルーズセル、意外とお人好しだからなぁ。なんとも言えないんだよな」

「俺のこと、信用してなさすぎ。泣いた」

「まぁまぁ。本題に入るけど」


サーチエクスペンシブが真顔に戻る。


「それも国家機密情報」

「は、はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」


思わず声を挙げてしまった。

え、俺の聴き間違い?


「え?もう1回言って。俺の聞き間違いかもしれん」

「国家機密情報」


聴き間違えなんかじゃなかった。

え?

それ大分まずいんじゃないの?


「大丈夫。まだ可能性が五分五分ってところだから」

「いや、そういう問題じゃなくてですね・・・・・・」


ダメだ。

この人に何を言っても無駄だ。


「ちょっとそこの2人、遊んでないで勧誘してきて」


紗弥さんが腰に手を当てて言う。


「そもそも同好会に入る人なんか相当いないって」

「あ、そう?へぇ。そんな事言うんだ。ふぅん」


今日の紗弥さん、煽り点数満点だな。

残念だが、俺は煽り耐性満点だぜ。

その攻撃は俺には無効化される!!


「ねぇねぇねぇ聴いてる?」


フッ。

紗弥さんが心を読めないからって態度が変わるわけない。


「はいはい。そんなに言うなら紗弥さんが勧誘してくれば?」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??島田くん、殺されたいの?」


冗談に聴こえるが、この子なら殺りかねない。

この前まで戦場に立ってたからな・・・・・・。


「――――なわけねぇだろ」

「大丈夫。殺る時は痛みを感じないスピードで首を落としてあげるから」

「それ、俺死んでるよね」

「もちろん」


深くため息を着いてから椅子に座る。


「ルーズセル、大人しく廊下に立つか」

「折れんの早くねぇか?サーチエクスペンシブにしては・・・・・・」


そう言いかけて言葉を失った。

そこに立っていたのは、気絶したサーチエクスペンシブの首根っこを持って

俺に笑顔でサーチエクスペンシブの声真似して言う紅梨さんが立っていた。




≪To The Next Story...≫

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