【壊された大橋】〜【六九】
【壊された大橋】
ホテルの直ぐ隣に食事を取れる所があるというので、タロとケリイは行ってみた。
店内は壁も木造になっていて温かい雰囲気。カウンター席もある。
二人は、テーブル席に着いた。奥から姿を見せた店員が、
「いらっしゃいませ……」
キュートな服装を着た若い女性だった。
「……ですね。しばらくお待ちくださいね」
注文を聞いて彼女が戻って行くと、
「タロは、随分嬉しそうだ……」
「えッ?」
「あの娘が、そんなに可愛いの?」
「ああ、え? あの人……、確かに可愛いね」
「へえ……」
そして、運ばれてきた料理を無口になったケリイと食した。タロは薬草探しのヒントになる情報を得られないかと頭がいっぱいで、彼女のその態度は特に気にならない。
料理を食べ終える頃になって、店に入って来た男性客がカウンター席に坐ると、男性店員に、
「西の大橋だけでなく、東の大橋まで壊されたってさあ」
「本当かい?」
「西の方の修理も、まだ終わってないのになあ……」
会話を、タロは耳をそば立てて聞いた。
【六五】
タイミングを見計らって彼らの会話に入って分かったことには、この街の周囲三方向は河で囲まれており、西と東には橋が掛かっているのだが、どちらも怪物に壊され現在通行できない状態になっているのだった。怪物は、赤い顔をしたカラスのような見た目で巨大で、始めの内は通行人を脅かすだけだったようだが、その内、橋の木材を突付くようにもなったらしい。
男性客は、
「へえ、君たち冒険者なんだ。へえ、薬草を……。西の橋が通れるようにならなきゃ、伝説の山には向かえませんよ。ここから北に行っても大きな河ですからね……。ところで、赤い髪の彼女、可愛いね……」
【六六】
街を歩きながら、
「気まぐれにカラス? が来るから修理が進まないらしいね」
ケリイの言葉にタロは、
「うん。そういうことみたいだね」
「ここは冒険者らしく、退治しちゃおうか?」
「えッ? 出来るかなあ」
「何だか暴れたい気分だし……」
【六七】
二人は、西の大橋を見てみることにした。一晩待って、早朝に出発した。
街の門の前にいる人たちからは、
「大橋に行くことを止めることはしませんが、行ったところで通ることは出来ませんよ」
注意を受けた。
【六八】
歩く内に、成る程、街の領域からそう遠くない所に大きな橋が見えてくる。近くには何やら建物もあるようである。
街の門と同じく、剣闘士のような格好をした人たちがいる。
「冒険者の方でしょうか? 橋の修理が終わるまでは通行できません。また、修理は方法を現在検討中で、何時終了するとは言えません。勿論、急いではいますが……。我々としては怪物の駆除も考えており、街在住の研究者に調査を依頼しています。……そうです、怪物の性質を知り、駆除の遣り方を考えるためです」
【六九】
この剣闘士のような人たちは、結局どんな人たちなのかというと、タロは少しずつ理解することになったのだが、街の有志の人たちらしい。有志といっても、所属している団体からはマネーも出ているそうだ。街の人たちは団体に寄付をしている。タロがいた街では聞いたことがなかったシステムだ。リサの住まいの周辺だけで生活していたから、知らないだけなのかも知れないが……。
そう言えば、怪物の研究者の存在というのも聞いたことがない気がする。
街が、タロのいた街と比べて大きな街であるのは間違いない。様々な人が住んでいる。
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