八年後
「徹君。今日は飲みに行かないかい?」
仕事終わりのアフターファイブに課長からそう言われたのだが、子供と妊娠している嫁が俺の帰りを待っているから帰らねばならない。
「すいません課長。今日は舎・・・いや嫁に早く帰ると約束してまして。」
「おぉっと、それは残念だ。まぁ、君は後々は大徳寺グループを背負って立つ人だ。あまり強くは誘えないな。ガッハハ!!」
「恐縮です。」
まさかこの俺がスーツに身を包んで働く日が来るなんて夢にも思わなかった。
それというのも、あの後なんやかんやあって、俺と希望が付き合うことになり、そしたら希望が有名企業の大徳寺カンパニーの令嬢であることが判明。
俺と希望が結婚するためには、俺が大徳寺家の養子になり、一流大学を出て教養を身につけ、大徳寺カンパニーに自力で入らないといけなかった。
不良で九九も言えないほどバカだった俺は、働きながら死ぬ気で勉強、一流大学に何とか合格し、更に気を抜かずに就職戦争を勝ち抜いて、何とか大徳寺カンパニーに入社することができた。
人間死ぬ気になれば何でも出来るんだと今は自信を持って言えるな。うん、不可能なんて無い。
営業部に入った俺は営業成績トップをキープ中。それでも希望の親父さんから言わせればギリギリらしいので、今でも気が気じゃない。
だが、そんな苦労も家に帰れば吹き飛んでしまう。
俺は会社を足早に退社し、我がマイホームであるマンションに急いだ。
「ただいま!!」
俺が家に帰ると希望が深々と頭を下げていた。
「アニキお帰りなさい、お務めご苦労さまです。」
「おう。先に正一(しょういち)と風呂入っても良いか?」
「はい、じゃあ正一を起こしてきますね。」
・・・まぁ、毎度のことなんだが一応注意しておくか。
「あのよ、そろそろ『アニキ』はやめねぇか?とっくにお前は俺の舎弟じゃねぇんだからよ。『アナタ』とか『徹さん』とか呼び方なら色々あるだろうよ。」
俺がこう言うと希望は顔を赤くした。
「そ、そんなの照れちまいますよ。やだぁ♪恥ずかしい♪」
コイツ、こういとこ全然変わらねぇな。変わったといえば胸が付き合って一年で急成長してGカップまで大きくなったことだな・・・揉むと大きくなるって本当なんだろうか?確かに俺がいっぱい揉んだわけだが・・・っと、悪い下ネタみてぇなこと言っちまったな。
「体の調子は良いのか?」
「へい、まだ妊娠3ヶ月ですから余裕っす♪俺は次も元気な子生むっすよ♪」
右手でポーンとお腹を叩く希望。正一が2歳だから二人目はまだ先でも良かったんだが.、まぁ俺ら相変わらず仲が良くてよ・・・野暮だから、あんまり詮索はしねぇでくれよ。
と、ここで目を擦りながら我が子である正一が現れた。小さいながらも目付きが鋭いのは俺に似ている。
「ママァ・・・お腹すいた。あっ、アニキが返って来てる。」
「そうだよお前。アニキに挨拶しな。」
「アニキ~♪お帰りなさい〜♪」
眠気が一気に冷めたのか、トコトコと歩いて来て俺の右足にしがみつく正一。
実の息子に『アニキ』呼ばれるのは困りものだが、希望とコイツの前では俺も頬が緩むってもんだ。
「ほら正一、ご飯の前にアニキと一緒にお風呂入りなさい。」
「えぇ、ママとも入りたい。3人で入ろうよ。」
「コラ、ワガママ言うんじゃない・・・ま、まぁ、アニキの許しが出たら入ってやらないこともねぇけどよ。」
チラチラとコチラを見てくる希望。いつものパターンだが嫌いじゃねぇよ俺は。
だから言ってやったんだ。
「分かった3人で入ろう。」
「わーい♪」
ピョンピョン飛び跳ねながら喜ぶ正一。そして希望に至っては、服に手をかけて、次の瞬間には纏っている衣服を下着まですでに脱いで素っ裸になっていた。
「バ、バカヤロウ!!玄関先で真っ裸になる奴が居るか!!正一の教育にも悪・・・」
と言いかけたんだが、希望はそんなの無視して俺に抱きついてきて、自慢のGカップを押し当ててきやがった。全くしょうがねぇなぁ。
可愛い舎弟を持ったのが縁で、こんなに幸せな家庭を手に入れることが出来たんだから、人生って本当に分からねぇもんだよなぁ。
「アニキ~♪大好きっす♪」
俺もだよ。
愛すべき舎弟 タヌキング @kibamusi
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