愛すべき舎弟
タヌキング
うちの舎弟
俺の名前は品川 徹(しながわ とおる)。高校生で一応不良をやらせてもらってたんだが、高校を卒業して仕事をしなきゃならねぇからな。もう不良も卒業だ。
というわけで、公園に一つ下の舎弟を呼び出して、そのことを報告することにした。
「アニキ~♪お呼びですか〜♪」
へん、相変わらず子犬みたいに人懐っこい奴である。舎弟の名前は大徳寺 希望(だいとくじ のぞむ)。痩せっぽちで小柄な、金髪でマッシュルームヘアーの似合う中性的な容姿の見た目で、喧嘩も弱いどうしようもない奴なんだが、これでも俺の可愛い舎弟である。たくっ、今日も俺のやった赤いスカジャン着てんのかよ。
「おう、希望来たか。実はお前に言わなきゃならねぇことがあってな。」
「えぇー♪なんでしょう♪ご褒美に頭撫でてくれるんですかい♪」
満面の笑みでこんなこと言いやがる。きっとコイツに尻尾があったら、今はパタパタと振りまくってるんだろうな。これじゃあ話しづらいな。
・・・えぇい!!男が女々しく悩んでどうする!!言っちまえ!!
「希望、今日から俺は不良をやめて真っ当に生きる。だからお前も俺のことは忘れて不良から足を洗いな。」
「へっ?・・・あはは、な、なんの冗談ですかい。」
「冗談じゃねぇ。俺はマジだ。もう喧嘩もしねぇし、人様に迷惑はかけねぇ。」
「そ、そんな〜!!俺はアニキに憧れて不良になったのに!!」
叫び声を上げて今にも泣き出しそうな希望。本当にコイツは泣き虫だ。
「あのな、よく聞け。不良なんてずーっと続けてられねぇよ。いつかはやめて、世話になった人、迷惑をかけた人に色々返さねぇといけねぇんだ。だから良い機会だからお前も不良やめて、俺と別れて真っ当に生きな。」
「ひゃ、百歩譲って、不良をやめるのは良いですぜ。でもどうしてアニキと別れないといけなんいんですか?もうアニキ無しの生活なんて俺は耐えきれないです・・・びえーん!!」
びえーんって泣く奴を初めて見たわ。全くそんなに涙を流したら喉が渇くだろうに。本当に可愛い舎弟だぜ、たくっ。
「泣いてるんじゃねぇ!!しっかりしねぇか!!」
「だ、だってよぉ・・・ひっく、アニキー!!」
そう叫びながら抱き着いてくる希望。コイツにくっつかれると、顔が女みてぇなだけにドキッとしちまうんだよな。はぁ、男にこんな感じになるなんて俺もヤキが回ったぜ。
「アニキー!!結婚して下さい!!」
「なんでだよ!!気持ち悪いことを言うじゃねぇ!!」
このタイミングで変なこと言うもんだから、更にドキドキするじゃねぇかよ。
「いや!!割りとマジです!!」
「余計に悪いわ!!男同士で結婚するとか、外国でも行く気か!!」
「ひっく・・・その辺は大丈夫です。」
このあと、俺の舎弟から爆弾発言。心して聞いてくれ。
「実は俺、女なんで。」
「・・・あっ?」
一瞬頭がフリーズしたが、すぐに再起動。やれやれアホな冗談言いやがって。
「何が女だ。テメーに胸がねぇのは知ってるんだよ。触ったこともあるしな。」
「ひっく、自分は貧乳なんすよ。でも揉まれたときはビックリしたし、感じちゃいました♪」
「はっ?・・・いやでも男子トイレとか銭湯で男湯とか一緒に入ったことあるよな?」
「男子トイレは大きい方しか入ってないですし、男湯はなんか入ってみたらバレませんでした。タオル巻いてたんですけどね。」
そういえば言われてみれば巻いてた様な気がする・・・いやでも、えっ?何言ってんのコイツ?
「待て待て、冗談はもういいから。」
「じょ、冗談じゃねぇっす・・・女なんです。」
しつこい、本当にしつこいなコイツ。もういいっての。
「仮に、仮にだ。お前が女だとして。そんなことして何のメリットがあるんだよ。」
「先輩の舎弟になりたかったんっすよ。女だったらアニキは俺を側に置いてくれなかったでしょ?」
なんだろうな?どんどん真実味を帯びてきた様な。えっ、でも、それは困るぜ・・・コイツのこと女として扱って来てねぇもん。
「ここまで言っても、まだ信じてくれねぇんっすか!?もういいっす!!こうなったらズボン下ろしてアレが無いことを見せるっす!!」
"ガチャガチャ、ズルズル"
「待て待て!!秒の勢いでズボン下ろすなや!!分かった!!分かったから!!そんな猫ちゃん柄のパンティ履いてるやつは女だな!!分かった!!お前は女だよ!」
舎弟だと思ったら舎妹だった。こんな漫画みたいな展開になるなんて思ってなかったし、自分の鈍さに呆れちまった。
なんか流れで関係も続けることになったが、次会うときに希望がミニスカート履いて来たのには卒倒しそうになった。
「アニキー♪可愛いっすか♪」
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