第63話 アタッシュケースの中身③

 神風たちはアタッシュケースの中に入っている大口径のハンドガンについて話していたと言うのに、いつの間にかロマン武器についての話で盛り上がっていた。


 そうして、ロマン武器で盛り上がっていた神風たちであったが、途中で話が脱線していることに気づき、このアタッシュケースについての話題に戻ることにした。


 ちなみに、神風の発言で驚愕して話についていけてなかった士郎は途中から彼らのロマン武器討論会に参加し、神風に負けないロマン武器愛を発揮し、ロマン武器について熱く語っていた。


 どうやら、士郎も神風と同様に厨二病が治っていないタイプの人間だったらしく、扱える物なら自分もアタッシュケースの中に収められているハンドガンのような大口径のハンドガンを使いたいようだ。


 結衣は神風たちと違い、厨二病を一度も発症したことこないタイプの人間であるため、彼らのようなロマン武器へのこだわりなどはないが、神風や父親の影響もあり、ロマン武器への理解があった。


 そのため、結衣はロマン武器について熱く語り合っている神風と士郎のことを優しい眼差しで見守っており、その姿はまるで厨二病を発症してしまった息子の話を否定するのではなく、黙って聞いてくれる母親のようであった。


 そんな風にロマン武器討論会を楽しんでいた二人であったが、流石に本題のアタッシュケースについて全く話し合っていないことはまずいと思い、一度ロマン武器討論会はお開きとすることにしたのである。


 そうして、ロマン武器討論会をお開きにした神風たちは本題であるアタッシュケースについての話題へと戻ってきたのだった。


「とりあえず、話をアタッシュケースの方へ戻そうか。無駄話をしすぎてしまったから単刀直入に言うけど、このアタッシュケースはこの辺り一帯を実質的に支配しているイタリアンマフィアの『サクラダ・アストリア』の物だ。それも極秘裏に回収した物らしい」


 本題に戻ってきた神風は時間を浪費してしまったと言うことから、まずはアタッシュケースの持ち主を彼らに伝えたのだった。


 どうやら、このアタッシュケースは神風探偵事務所がある区域を治めているイタリアンマフィアの『サクラダ・アストリア』の物らしく、それも彼らが極秘裏に回収した重要な物らしい。


 ここで、サクラダ・アストリアの解説をしておくと、彼らは世界的に超有名で巨大なマフィアであり、その規模は世界のほとんどの地域に根を張っているのだと言う。


 その構成員の数はあまりの組織の大きさから不明であり、小規模の支部ですらそこら辺の田舎マフィアよりも構成員の数は多い。


 あまりの規模の大きさからサクラダ・アストリアは世界四大マフィアの一角に数えられており、その危険性から世界中で最高位の危険組織に認定されている。


 だが、彼らは国に匹敵するほどの力を持ち合わせているため、小国では彼らの軍事力には敵うことができず、彼らに喧嘩を売ると、逆に返り討ちにされてしまうだろう。


 そして、先進国の国々でも彼らと全面戦争に踏み切れば、国に大きな損害が出てしまうため、彼らに手出しすることができず、現在は監視するまでにとどまっているそうだ。


 だが、サクラダ・アストリアは四大マフィアの中でも比較的攻撃性が低いため、あまり国と衝突を起こすことはなく、四大マフィアの中でも警戒度は低い方である。


 まあ、彼らがあまり国と揉め事を起こさないのは目をつけられてしまうとその国の警察やら軍隊などから色々と妨害を受けてしまうため、国からの妨害を極力減らす目的であると、彼らは元から裏社会の中でも息を潜めているタイプであったからなのだが。


 そんな彼らはイタリアンマフィアということから、元はイタリアを中心とした地域で活動していたのだが、イタリアの発展に加え、イタリアに理想教の本拠地を置かれたことで活動の継続が難しくなった。


 そのため、サクラダ・アストリアは他のイタリアンマフィアたちよりも早くイタリアを含むヨーロッパでの活動を諦め、治安が悪化した日本を隠れ蓑とすることを決定した。


 この決断は結果的に成功であり、そのままイタリアに残り続けた大規模なイタリアンマフィアは全て駆逐されるか、組織を維持できなくなって崩壊してしまった。


 そして、先に日本に来ていたサクラダ・アストリアが根を張り巡られていたことで、遅れてやってきたイタリアンマフィアたちは利益を上げることができず、その規模を縮小せざるおえなくなった。


 ちなみに、日本には他にもサクラダ・アストリアと並ぶ規模と力を持つチャイニーズマフィアやロシアンマフィアなどが存在している。


 なので、サクラダ・アストリアが根を張らずとも遅れてやってきたイタリアンマフィアたちは彼らに食い潰されてしまい、発展を遂げることはなかっただろう。


 逆に、サクラダ・アストリアが根を張り、彼らに牽制をしてくれているおかげで遅れてやってきたイタリアンマフィアたちは規模を縮小せざるおえなくても活動はできている。


 サクラダ・アストリアはイタリアンマフィアであることから残虐非道の犯罪者軍団であることは間違い無いが、彼らは義理には厚い組織であり、そこら辺のマフィアたちと違い、話はだいぶ通じやすい方だ。


 まあ、彼らはあくまでもマフィアの中では通じやすい方であるだけであり、メンツに関わることになると自分たちから抗争を仕掛けるくらいには血の気の多い連中であるため、関わるべきではない組織なのだが。






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