第23話 驚きの真実
赤髪の女性から一連の話を聞いた士郎は、
「まあ、家を出てからの出来事は流石の俺でも同情するよ。それにしてもよくそんな状況から怪我一つせずに逃げられたね。俺なら今頃バラバラにさられて売られているところだったよ」
あんな地獄のような状況に陥ってしまったことに同情し、あの状況から怪我一つせずに切り抜けられたことを素直に誉めたのだった。
士郎から素直に褒められた赤髪の女性は褒められたことが嬉しかったのか、満更でもない笑みを浮かべていた。
ちなみに、士郎が赤髪の女性が起こした乱闘騒ぎに参加していた場合、直ぐに半グレたちに取り囲まれてボコボコにされてしまい、彼が言ったようにバラバラに解体されて内臓などを売られている。
中には士郎は覚者で強力な超能力を持っているため、そんなことはないだろうと思われがちだが、彼はただの一般的な青年であり、戦い方を知らないので、戦闘で上手く能力を生かすことが出来ない。
そのため、強力な超能力を持っていたとしても普段から喧嘩や抗争に明け暮れているような半グレや下っ端マフィアたちには戦い慣れしていない士郎では構うはずもないので、赤髪の女性のように上手く切り抜けることは不可能だろう。
そうして、赤髪の女性のことを褒めた士郎であったのだが、
「でも、このあいぎり地区で名を馳せることはあんまりお勧めできないよ?いろんな組織からオファーが来たり、腕試しついでに襲われたりするようになるし、色々と面倒なことに巻き込まれるからね。これからは喧嘩なんかせず、穏便にことを済ませた方がいいよ」
赤髪の女性に、士郎は真面目な表情であいぎり地区で喧嘩などで名を馳せることは危険に巻き込まれる可能性を上げるため、これからは穏便にことを済ませるようにと注意したのだった。
士郎の言う通り、あいぎり地区で名を挙げると言うことはいわば、自分の存在をこの地域に住まう反社会的組織の人間たちにアピールしていることになる。
このあいぎり地区で名を馳せる者たちにはいくつか種類があり、名を馳せることで自分の存在価値を上げ、あいぎり地区の中でも有数のマフィアなどの反社会的組織にスカウトされることを希望する者や単純に戦闘狂で強い者を引き寄せるためなど様々である。
名を馳せることへの理由は様々であるが、全て共通して言えることは大体名を馳せている者たちはあいぎり地区で巻き起こる厄介事に巻き込まれてしまうことだ。
士郎は情報屋の知り合いもいなければ、あまりあいぎり地区の裏事情などには興味がないため、そこまであいぎり地区について詳しいわけではないが、それでも様々な理由で名を馳せてきた者たちの情報は入ってきていた。
そして、士郎の耳にも入ってくるような者たちのほとんどが何かしらのトラブルに巻き込まれており、彼が聞いた者たちの大半がその巻き込まれたトラブルで命を落としており、いかにこの町で名を馳せることが危険なのかが窺える。
赤髪の女性はつい先ほど会ったばかりの仲ではあるのだが、それでも彼女は士郎にとっての知り合いであるので、そんな知り合いがトラブルに巻き込まれて命を落としたなど普通に嫌であるため、士郎は彼女に真剣に警告を行ったのだ。
士郎から真面目な表情で注意を受けた赤髪の女性は、
「ああ、分かっている。この場所で名を馳せるということは危険を意味しているとな。これからはなるべく穏便に済ませるよう気をつけて行くよ」
彼女も自分が行った行動はあまり良くなかったと分かっているらしく、彼女も真剣な表情を浮かべながら、士郎からの忠告を素直に聞き入れた。
赤髪の女性が素直に忠告を受け入れてくれたことに士郎は安心し、彼女が再び何かトラブルに巻き込まれないことを願った。
特に自分と一緒にいる時はと。
赤髪の女性の喧嘩の強さに驚きを隠せず、そのことについて話していた士郎であったのだが、もうそろそろ彼女が乱闘騒ぎに巻き込まれることになった大元の原因について触れることにした。
「それで、お姉さんは父親と喧嘩したことで何も持たずに家を飛び出してきたんだよね?まあ、親と意見の違いでぶつかり合うことは普通にあるし、それで大喧嘩になることも珍しくもない。けど、流石に喧嘩で家を飛び出すのは子供すぎるかなと思うよ」
士郎は赤髪の女性のことをフォローしながらも喧嘩で家を飛び出すのは流石に行動が子供すぎると率直な感想を述べた。
士郎から率直な感想を述べられた赤髪の女性は少し気まずそうに下を向いており、いくら喧嘩したとしても途中で家から飛び出すのは流石に良くないと、自分の取った行動がいかに幼稚だったのかを思い知ったようである。
そうして、自分の行動がいかに幼稚だったのかを思い知った赤髪の女性は、
「確かに、お前の言う通りだな。高校生にもなって、たかが喧嘩で家を飛び出すのは流石に幼稚すぎる行動だった。ありがとうな、こうして気づかせてくれて」
笑顔を浮かべながら、士郎に自分の行動が幼稚であったかを気づかせてくれたことに感謝の言葉を述べた。
しかし、士郎はそれどころではなかった。
「は?高校生?嘘だろ......」
赤髪の女性が高校生であったことに士郎は驚きを隠せなかった。
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