第21話 士郎、謎の美少女の脅迫に屈する
『グ〜〜』
士郎は一生懸命赤髪の女性にあいぎり地区の危険性を途切れることなくベラベラと教えていると、お腹がなったような音が聞こえてきた。
お腹がなったような音が聞こえてきたので、士郎は赤髪の女性の方へ視線を向けてみると、彼女は気だるげな表情を浮かべながら手でお腹を押さえていた。
赤髪の女性の表情や様子からお腹の音の犯人が彼女であることが分かった士郎は別に何かしら行動をするわけではなく、先ほど聞こえてきたお腹の音や赤髪の女性の素振りを無かったことにした。
お腹の音を聞かなかったことにした士郎は再び赤髪の女性に対して、あいぎり地区の危険性について得意げになりながらベラベラと話していると、赤髪の女性が真剣そうな表情で士郎の肩を掴んだ。
士郎は赤髪の女性に肩を掴まれたことで彼女の顔が先ほどよりも近くの位置に来たため、胸に気を取られることなく彼女の顔をまじまじと眺めたのだが、先ほどまで左目が前髪で隠れていたので、顔の全体を見てみるとより彼女の美しさが際立つ。
その美しい蒼眼はサファイアと引けを取らないほど美しく、彼女の瞳を見つめていると吸い込まれていくような感覚に襲われるほどである。
先ほどまで遠くから見ていたことで気が付かなかったが、赤髪の女性の右目の横にはほくろがあり、そのほくろが赤髪の女性の色気を加速させているようであった。
そんな赤髪の女性の美しい顔をまじまじと見つめていた士郎は、
「凄く綺麗だな......」
気づかないうちに赤髪の女性の美しさを褒めるようなことを呟いていた。
赤髪の女性の美しさに感嘆していた士郎であったが、ふと我に返って赤髪の女性の方へ視線を向けてみると、彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめながら士郎から視線を外していた。
士郎は先ほど自分が赤髪の女性のことを綺麗だと口に出していたことに気づいていないので、彼女が恥ずかしそうに視線を逸らしている理由が分からなかった。
そうして、士郎が赤髪の女性が恥ずかしそうにしている理由が分からずに頭を悩ましていると、
「流石の私でも顔を真剣な顔でまじまじと見られながら褒められるのは恥ずかしい......」
赤髪の女性は恥ずかしそうにしながら、自分の顔を真剣な表情でまじまじと見られながら褒められたことが恥ずかしかったのだと士郎に伝えた。
赤髪の女性から恥ずかしがっている理由を説明された士郎はこの時初めて自分が先ほど口に出して彼女を褒めてたことに気づき、士郎も少し気恥ずかしくなった。
二人とも恥ずかしくなったことで空気が一気に気まずくなり、なんとも言えない空気が漂い始めた。
二人の間に気まずい空気が漂い始めてから幾分かが経った時、あまりの空気の悪さに赤髪の女性が耐えられずに口を開いた。
「ごほんっ!!それで、私はお前に頼みがあるんだ。今の私は少々都合により手持ちの金がない。そして、道で倒れてしまうほどお腹が空いているんだ。だから、何か食べ物を奢ってくれないか?」
赤髪の女性は一度大きな咳払いをすることで空気の流れを変えた後、士郎に何か食べ物を奢ってくれないかと頼んだのだった。
どうやら、この赤髪の女性は何かしらの理由により、現在手持ちのお金がないらしく、道のど真ん中で倒れてしまうほどお腹が空いていてもその腹を満たすことが出来ていないらしい。
赤髪の女性から真剣な顔で食べ物をせがまれた士郎であったのだが、彼女が道のど真ん中で倒れていた理由がお腹が空いていたからという思ったよりもしょうもない理由だったことに少し安心した。
そうして、赤髪の女性に何か食べ物を奢ってくれないかとせがまれた士郎であったのだが、
「いや、俺さっきも言ったと思うけど、現在進行形のホームレスだよ?そんな真剣な顔で頼まれても無理に決まってんじゃん。お世話になった人とか仲がめちゃくちゃ良い人なら考えなくもないけど、お姉さんはさっき知り合ったばっかりだよね?そんな人に奢るわけないじゃないか」
真面目な表情で奢ることは出来ないと即座に拒否したのだった。
士郎は彼の供述通り、ホームレス生活を送らなければならないほど追い詰められているので、手持ちの金はとても少ない。
手持ちの金がとても少ないと言ってもつい最近ホームレス生活を始め出したことに加え、彼が住む地域のホームレスたちをまとめる長である村長の知り合いたちの温情により、他のホームレスと比べて手持ちの金はだいぶある方である。
だが、手持ちの金が少ないことには変わりはなく、少しでも使う金は節約したいと士郎は考えているため、お世話になった人や知り合いならいざ知らず、つい先ほど知り合ったばかりの赤髪の女性には絶対に奢りたくないと考えている。
士郎に一瞬で拒否されてしまった赤髪の女性は不機嫌そうな表情を浮かべており、士郎のことを掴む手を更に力を込め、鋭い視線で彼のことを睨みつけた。
赤髪の女性に肩をより強い力で掴まれた士郎は彼女が自分を想像を超えるほどの力をしていることに驚くと同時に痛みで悶絶しそうになったが、ここで負けてしまえば、彼女に何か奢らなければならなくなるため、必死に耐えた。
そうして、赤髪の女性からの圧力にも屈しなかった士郎であったのだが、
「分かった。お前が何か奢ってくれないというのなら、警察に痴漢されたとお前のこと突き出してやるよ」
「本当にごめんなさい。何か奢るので、それだけは許してください」
赤髪の女性の奥の手には逆らうことが出来ず、屈してしてしまったのだった。
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