第19話 士郎、謎の美少女に出くわす

 廃ビルの爆発に巻き込まれたり、暗殺者とばったり目が合ってしまったり、色々とハプニングにあった士郎は遠回りした末に何とか西公園の近くまで来ることができた。


 西公園の付近に来るまでの間に士郎はマフィアと半グレとの抗争やその地域を収めるマフィアに弾圧され続けたホームレスたちの反乱などに巻き込まれたが、あいぎり地区ではよく目にする厄介事だったので、無事に逃げることが出来た。


 マフィアに弾圧され続けたホームレスたちの演説を聞いた士郎は現在ホームレスということもあり、彼らの主張に大きく胸を打たれ、彼らに力を貸したいと思ったのだが、相手にするマフィアがあいぎり地区でも有数の組織であったため、見て見ぬふりをした。


 そのように、厄介事に巻き込まれた士郎は何とか傷を負うことなくそれらを掻い潜り、現在生活をしている西公園の付近までやってきたのだが、いつも以上に厄介事に巻き込まれたため、士郎の顔には疲れが見えていた。


 そうして、厄介事にいつも以上に巻き込まれて疲れてしまった士郎は大きなため息をつきながら歩いていると、道のど真ん中に誰かが倒れていた。


 その道のど真ん中に倒れている人物へ視線を向けてみると、その人物は綺麗な赤色の髪をしており、うつ伏せの状態で倒れているため顔は見えないが、髪の長さや体格から女性であることが分かった。


 士郎はその女性に近づいていくと、そのまま倒れている女性を助けるのかと思いきやガン無視し、最初から女性などいなかったという態度で西公園の方へ向けて歩き続けた。


 そして、士郎が倒れている女性を最初からいなかった存在と思わせる足取りで彼女の横を通り抜けようとした時、不意に倒れている女性の手が士郎の足へ伸び、彼のことを無理矢理止めたのだった。


 足をいきなり掴まれた士郎はこのまま赤髪の女性に構ったりすると厄介事に巻き込まれそうな気がしたので、必死に足を振り回して女性の手を振り払おうと頑張ったのだが、その女性の力があまりにも強く、彼女の手を振り解くことが出来ない。


 士郎が自分の足を掴なんで離さない赤髪の女性の手を必死に振り解こうと頑張っていると、先ほどまでうつ伏せになっていた女性が顔を上げ、士郎の方を睨みつけた。


 赤髪の女性に睨みつけられた士郎は一瞬、その圧にビビってしまったのだが、自分のことを睨みつけてくる女性の顔をよくよく見てみると、とても整った顔立ちをしており、モデルと言われてもおかしくないほど美しかった。


 美しい顔立ちの女性に睨みつけられた士郎はこれは一種のご褒美ではないかという考えが脳によぎったのだが、すぐにその考えを捨て、面倒事に巻き込まれないよう士郎は女性の手を振り解こうと再び足を動かし始めた。


 そうして、士郎が必死に赤髪の女性から逃れようと四苦八苦していると、


「おい、こんな美少女が道端に倒れているのに無視するとは人間の風上にも置けない奴だな。普通なら無視せずに助けるところだろ?何で私のことを無視した?」


 赤髪の女性が士郎のことを睨みつけながら、道端に倒れている自分のことを気に留めずに横を通り抜けようとしたのかと怒気がこもった声で質問したのだった。


 赤髪の女性から怒気のこもった声で高圧的に質問された士郎は美少女の高圧的な態度に新たな門が開きそうになったのだが、自分は高圧的な美少女よりも清楚で優しい美少女の方が好きだと自分に言い聞かせることで何とか正気を保つことが出来た。


 何とか正気を保つことが出来た士郎は自分のことを睨みつけてくる赤髪の女性の方へ視線を向けてみると、彼女は最初の時よりも上体を起こしており、上体を起こしたことで彼女の豊満な胸が目に入ってきた。


 そのサイズは恐ろしいほど大きく、そのサイズはメロンと同程度と言っても過言ではないだろう。


 その豊満な胸に気を取られた士郎は少しずつ赤髪の女性の顔から胸の方へ視線を落としていき、彼女の胸をガン見していると、殺意のこもった鋭い視線を感じた。


 殺意のこもった鋭い視線を感じた士郎は恐る恐る顔を上げてみると、そこにはまるで、ドブを見るかのような侮蔑の表情を浮かべている赤髪の女性がいた。


 侮蔑の表情で自分のことを睨みつけてくる赤髪の女性の態度で士郎は精神的ダメージを受けると思いきや逆に興奮しそうになっており、士郎の心の奥底で眠るドM本能が目覚めそうになっていた。


 だが、流石の士郎もこの状態で興奮してられるほどの変態ではないので、直ぐに興奮する気持ちを抑え込み、平静を取り繕って彼女からの質問に答えた。


「どうして助けなかったって、それは詐欺の可能性があったからだよ。お姉さん知らないの?あいぎり地区では倒れている女性を助けようとしたら、いきなり女性が触られたとか大声で叫び出したと思ったら束の間、反社会的組織の人間にいつの間にか囲まれ、金を全部巻き上げられるっていう事件がよくあるんだよ。だから、俺はお姉さんのこと無視したんだよ」


 士郎は先ほどの胸をガン見していたことはまるでなかったかのように平然とした態度で赤髪の女性を無視した理由について語り、自分が彼女のことを無視したことへの正当性を示した。


 ちなみに、士郎が無視した理由として説明した詐欺はこのあいぎり地区だけでなく、さまざまな地域でも見られるメジャーなものであり、毎年何万人もの心優しき男性がこの詐欺の被害を受けている。


 他にもこの倒れている人物が男性であり、女性をターゲットとした同系統の詐欺も存在しており、こちらの場合は身包みを全て剥がされた後に風俗店などで強制労働させられるケースが多い。


 そうして、士郎が自分の正当性を説明すると、


「確かに、その系統の詐欺の可能性があると考えたら、私のことを無視するのは仕方ないな。まあ、お前の場合は私の胸をガン見するというセクハラを犯したのだから叫ばれても仕方ないと思うけどな?今からでもお前に襲われそうになったと叫ぼうか?」


「本当に申し訳ございません。お願いですから許してください」


 士郎は赤髪の女性に脅され、その場で土下座をして心の底から出てきた反省の言葉で許しをこうたのだった。






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