第15話 神風探偵事務所での面接④

 士郎は神風からもう一つの超能力について質問されたので、この何とも言えない空気を変えるためにもすぐに答えることにした。


「僕が持っているもう一つの超能力は金属操作ですね。まあ、金属操作と言っても世間一般的に知られている金属操作とはちょっと違うと言うか、進化系の能力になっているんです。神風さんには金属生成について話しちゃってますし、金属生成よりかはバレてもそこまで問題ない能力なので、全部話しちゃいますね」


 神風からもう一つの超能力について質問された士郎は自分の持っているもう一つの超能力が金属操作であることを伝えた。


 そして、士郎が持つ金属操作は世間一般的に知られている覚者の中でもメジャーな超能力である金属操作とは少し異なっているらしく、その進化系に位置する超能力であるようだ。


 士郎の持つ金属操作は世間一般的に知られているものとは違うのだが、金属製製について洗いざらい神風に教えてしまったのに加え、この能力自体あまり知られたところで問題ないため、士郎は神風に全て話すことにした。


 士郎の説明を纏めるとこうである。


 彼が持っている金属操作は世間一般的に知られている金属をそのままの形で自由自在に操ることが出来る能力とは違い、士郎の持つ金属操作は形だけでなく、状態変化まで自由自在に変化させることが出来ると言うものだ。


 もちろん、世間一般的に知られている金属操作と同じように金属を普通に操作することも可能である。


 金属操作は金属を操作する際に脳に負荷がかかり、より大きなもの、より質量のあるもの、より速い速度による操作、より精密な操作になるにつれ、脳にかかる負荷が大きくなる。


 士郎の場合もこれは同じなのだが、彼の脳は他の者たちよりも圧倒的に金属操作を行う際にかかる脳の負荷に耐性があるらしく、他の者たちが行ったら脳が焼き切れてしまうような操作なども全く脳に負荷がかからずに手足を動かすように出来るそうだ。


 これほどまでに士郎の脳が金属操作による負荷に耐性がある理由は彼の母方の祖父母から代々受け継がれてきた能力ゆえに脳もこの能力を使用することを前提にした作りへと進化してきたためであり、彼の母親も士郎ほどではないにしろ、金属操作による脳の負荷には大きな耐性がある。


 ちなみに、士郎は脳に銃弾ほどの大きさの金属であれば、音速を超えるほどの勢いで射出することができ、自分の支配下の元で自由自在に操る際の最大速度は時速300kmほどである。


 これはあくまでも脳に負荷がかからない場合の最大速度であり、脳に大きな負荷をかける場合であれば、更に速度を上げることが出来るのだが、あまりにも危険であるため、士郎は試したことがなく、詳しい数字は分からない。


 士郎が操れる最大の重力に関してだが、士郎の実家が貧困層であったため、実験で使用する質量が1kgを超える金属類を用意することが出来なかったので、詳しい数値は分からないが、最低でも1kg以上の金属を脳にあまり負荷がかからずに自由自在に動かすことが出来る。


 世間一般的な金属操作を持つ覚者の大半が1kgの金属を自由自在に動かすことも難しいため、士郎の圧倒的な才能に驚かされる。


  話は戻るが、普通の金属操作に関しては大きな耐性を持つ士郎であるのだが、彼が持つ特有の能力である金属の変形や状態変化などには大きな負荷がかかってしまう。


 そして、その脳にかかる負荷は操作する金属によって変わり、こちらは原子量に比例して大きくなっていき、現在の金属操作が実用的に使用することが出来る最大の金属は鉄となっている。


 金属操作の中でも金属の変形よりも金属の状態変化の方が脳にかかる負荷が大きく、状態変化させる金属の種類や量にもよるが、金属を固体から液体に変えるだけでも目眩や吐き気が催すほどの負荷がかかり、固体から気体まで昇華させた場合、激しい頭痛と鼻の血管が切れ、出血を起こしてしまう。


 ちなみに、脳のキャパシティーを超える金属操作を行った場合、脳が情報を処理しきれずに焼き切れてしまい、一瞬で絶命してしまう。


 そのため、金属操作を使用する際は絶対に脳のキャパシティーを超える操作は行わないように気をつけなければならない。


 現在の士郎の場合、鉄100gを固体から気体に昇華させることが限界であり、鉄の固体から液体の場合は彼の体調に左右されるが、大体500gから800gほど融解させることが出来る。


 以上が士郎から行われた金属操作についての説明である。


 士郎から金属操作についての一連の説明を受けた神風は先ほどの金属生成と同じかそれ以上の興味を示しており、神風はまるで子供のように目を輝かせて士郎のことを見ていた。


 士郎は神風が自分のことを子供のように目を輝かせながら見つめていることに少し恥ずかしさを感じたので、照れるように頭をかいたのだった。


 そして、士郎は神風の態度から先ほどまでの何とも言えない空気が嘘のように感じられるほど穏やかなものになったことに加え、神風が喜んでくれていることに安心した。


 そうして、士郎が金属操作について説明し終えた後、しばらくの間、神風の興奮は収まることなく、士郎は彼からの質問に答えていたのだった。







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