第14話 神風探偵事務所での面接③
士郎から彼の一つ目の超能力を教えてもらった神風は彼の便利な能力にワクワクしていたのだが、途中から何かに気付いたのか、真剣な顔で悩み始めた。
神風が急に真剣な顔で何かを考え始めたことを士郎は不思議に思い、彼のことを見つめていると、
「金属生成って、金属であればなんでも生み出すことが出来るんだよね?それなら、わざわざ就職して働かなくても金とかレアメタルとかを生み出して売った方が早いし儲からない?いや、士郎くんには是非ウチで働いてもらいたいんだけどね、少し気になったんだ」
神風は不思議そうな表情を浮かべながら、士郎に尋ねたのだった。
確かに、よく考えてみると、神風の言った通り、金属生成を用いれば、金やレアメタルなどを容易く生み出すことができ、それを売って平均的な生活を送ることが出来る。
いや、この金属生成を使えば、平均的な生活どころか、世界トップクラスの資産家の仲間入りすることも夢ではないだろう。
それなのに、士郎は金属生成で金やレアメタルなどを生み出して売っている様子もなく、ホームレスをしながら就活をしていることを不思議に思うのは当然のことだ。
まあ、神風は士郎がホームレスであることはまだ知らないので、彼は純粋に多額の富を築ける力があるのに、それを使わず、地道に就活している理由が気になっているため、質問したようであるが。
神風から質問された士郎は、
「神風さん、よく考えてみてくださいよ。僕はあいぎり地区周辺のスラム街に住む貧困層だったんですよ?そんな僕がいきなり大量の金を持って売りに来たら怪しまれますよ。この金の出所はどこだってね」
真剣な表情を浮かべながら、神風に今まで金属生成を用いてレアメタルなどを生み出し、売りに出さなかった理由を述べた。
士郎から今までレアメダルなどを売りに出さなかった理由を教えられた神風は納得しているような態度を見せており、顎に手を押さえて何か考え事を始め出した。
またしても何か考え事を始め出した神風を士郎は何も言わずに見つめていると、
「確かに、貧困層の者が大量のレアメタルを売りに来たら怪しまれるだろうね。それに、士郎くんがレアメダルを生み出すことを裏の人間たちに知られてしまったら何されるか分からないしね。身の安全のためにもその力はこれからも隠しておく方が良いと思うよ」
神風は自分のことを見つめている士郎に優しい笑みを浮かべながら、今までのようにこれからも金属生成に関しては秘密にしておくべきだと忠告した。
神風から忠告を受けた士郎は彼の忠告を素直に受け止め、真剣な表情を浮かべたまま首を縦に振ったのだった。
そうして、士郎が神風の忠告を受け、これからも金属生成に関しては秘密にしておこうと考えていると、
「そう思えば、士郎くんは普通に金属生成のことを私に教えちゃってるけど大丈夫なのかな?私は自分で言うのもなんだけど、あまり良い人ではないからね。もしかしたら、今の士郎くんの話を聞いたことで気が変わって、君のことを利用しようとするかも知れないよ?そんな私にこの話をしようと思ったのかい?」
神風は士郎に今まで秘密にしていた金属生成をわざわざ自分に話したのかと質問したのだった。
そんな質問をした神風はいつもと変わらない笑みを浮かべているように感じたが、どこか不気味に感じる笑みを浮かべており、士郎はその何とも言えない雰囲気に気圧され、冷や汗が溢れ出した。
神風の何とも言えない不気味な雰囲気に飲まれそうになった士郎であったが、神風にバレないように自分の右手を力強くつねることで発生する痛みで何とか耐え、正気を保つことが出来た。
何とか正気を保つことが出来た士郎は一度気持ちを落ち着かせるために大きくため息をついた後、不気味な雰囲気を纏っている神風からの質問の内容を振り返った。
そして、神風からの質問の内容を振り返った士郎は驚きを隠せなかった。
それは金属生成について、神風に対して洗いざらい全ての情報を話していたことだ。
士郎はどんなに信用した相手でも血の繋がった家族以外には一度も金属生成について詳しく話したことはなかった。
それは小さな頃から独り立ちする日まで、金属生成の遺伝元である父親や父方の祖父母たちからこの超能力は自分たち以外には絶対に話すなと忠告を受け続けていたからだ。
幼い頃の士郎も父親たちの指導もあり、金属生成を他人にバラすことはどれほど危険なのか理解していたため、彼は常日頃から口を滑らせないように注意し続けていた。
そんな常に口を滑らせないように注意し続けてきた士郎であったのだが、神風と話している中でいつの間にか彼に金属生成についての情報を全て話していた。
それも意識せずにだ。
常日頃から警戒していた士郎はいつの間にか意識せずに金属生成について話していたため、どうして彼に金属生成についての情報を素直に話したのか自分ですら分からなかった。
そんな自分から今まで隠していた情報を神風にどうして話したのか分からない士郎は、
「その......おかしいと思われるかも知れませんが、どうして神風さんにこのことを話したのか自分でもよく分からないんです......気づいたら勝手に口が動いていたと言うか、貴方にこのことを話すのは当たり前のことだと感じたような気がします......上手く言語化出来なくてすみません......」
今自分が分かっている情報を何とか言語化し、神風に話した。
神風に自分の知り得る情報を何とか言語化して話してみると、彼の表情が一瞬歪んだように見えたが、瞬きをした次の瞬間には先ほどと変わらない優しい笑みを浮かべていたため、士郎は先ほどの顔は自分の見間違いだと思った。
そうして、自分がどうして金属生成について話したかを神風に伝えてみると、
「血の繋がった家族と同じくらい私のことを信用してくれたとこちら側は解釈しておくよ。これ以上このことを話し合ったところで進展しないだろうしね。それじゃあ、もう一つの超能力ついて教えてくれるかな?」
神風は先ほどまでのやりとりを終わらせ、士郎が持つもう一つの超能力についての質問を投げかけたのだった。
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