第12話 神風探偵事務所での面接①
「まあ、面接と言ってもただ募集要項に記載したことを確認するだけなんだけどね。だから、そこまで気を張ることはないよ」
面接を始めると言った神風は付け加えるように、緊張している雰囲気の士郎に言葉をかけた。
士郎は先ほどの威圧もあり、彼との面接に緊張していたのだが、神風が自分に気を遣って優しい笑みを浮かべていてくれたため、少し気を抜くことが出来た。
少し気を抜くことが出来て落ち着きを取り戻した士郎は一度大きな深呼吸をした後、今度は緊張し過ぎていない真剣な表情を浮かべたのだった。
士郎の緊張が解けたことを確認した神風は言葉を続ける。
「それじゃあ、募集要項にも記載していたと思うけど、これは一番大事なことだからね。早速質問させてもらうけど、士郎くんは覚者で間違いないかな?」
神風は優しい笑みを浮かべながら士郎に確認するように質問した。
そう、今回の神風探偵事務所の新人募集の条件は覚者であることだ。
この募集要項に最低条件として、覚者であることを記載している求人は少ないように思うかもしれないが、現在の日本の求人ではかなり多い。
その理由としては、覚者が持つ超能力がとても便利で仕事の効率が上がることもあるのだが、一番の理由としては現在の日本には覚者が多いことにある。
現在の日本の人口のうち四割から五割近くが覚者であり、覚者の数は年々増加している。
日本政府の調査によると、覚者の数は留まることなく、このまま増加していく可能性が高いようで、最終的には日本の人口のほとんどが覚者になるようだ。
何故、放射能汚染による突然変異体である覚者が増加傾向にあるのかと言うと、覚者の超能力はその子供にも遺伝するためである。
とある大学が覚者にまつわる実験を行ったのだが、その実験の内容が覚者の超能力は遺伝するのかと言うものであった。
その大学の実験には99組の夫婦とその子供が集められ、それぞれ父親と母親両方が覚者、父親のみが覚者、母親のみが覚者という組み合わせの家族が33組ずつ集められた。
そうして、99組の家族が集められたのだが、先に実験結果を発表すると、この99組全ての子供が覚者であった。
父親母親の両方が学者である子供の場合、どちらかの超能力か、その両方を混ぜたようなハイブリッドの超能力を持つ場合が多く、中には父親と母親の両方にも当てはまらない全く別の超能力に目覚めることもごく少数見られた。
そして、子供たちに遺伝する超能力は父親のものよりも母親のものの方が多いことも同時に分かった。
父親のみが覚者の場合、父親の超能力に類似する超能力を持つ子供が多かったが、中には父親とは別の能力を持つ子供が何人も見られた。
これは母親の場合も同じ結果であるのだが、父親のみが覚者である場合よりも母親のみの場合の方が子供に発現する超能力が別のものになる確率が低かった。
以上のことから、特に子供たちは父親の超能力を受け継ぐよりも母親の超能力を受け継ぐ場合が多く、2世覚者は母親の超能力が遺伝する可能性が高いということと最低でも両親のどちらかが覚者であると、子供も覚者であることがこの研究で分かった。
このことから分かるように、ただでさえ第三次世界大戦の影響で他の国よりも多かった覚者が子供を産むことでさらにその数を増やしていき、現在の日本には大量の覚者が存在しているため、求人で覚者を求める企業は少なくない。
中には覚者に否定的に思っている企業や団体もあるようで、逆に覚者お断りのような求人もあったりするのだが、覚者という存在が側にいることが当たり前になった日本ではそのような求人の数は圧倒的に少ない。
そうして、覚者であるかを確認するために質問した神風に対して、
「はい、僕はバッチリ覚者ですよ。一応、僕は第三世代の覚者ですね。うちの家は祖父も祖母も父も母も全員が覚者の純潔覚者ファミリーですよ」
士郎は親指を立て、ウィンクをしながら神風に自分は覚者であることを伝えたのだった。
どうやら、士郎は第三世代の覚者のようで、父親と母親はもちろん、父方の祖父母、母方の祖父母の全てが覚者らしく、純潔覚者ファミリーの子供のようだ。
覚者が現れ始めてから100年の時が経つため、最近では士郎のような第三世代の覚者や第四世代の覚者なども多くいる。
覚者全体の割合的には第一世代の覚者のほとんどが高齢により、命を落としている場合の方が多いため、第一世代の覚者の人口が最も少なく、一世覚者の子供にあたる第二世代の覚者の人口が最も多い。
第三世代の覚者や第四世代の覚者も最近では増加傾向にあるのだが、第二世代の覚者に比べれば、その数は少なく、第三世代の覚者と第四世代の覚者を合わせたとしても第二世代の覚者の総人口に勝つことはできない。
そして、第三世代の覚者の中でも士郎のような血の繋がりの深い者が全て覚者である純潔覚者の場合、より強力な超能力に目覚める可能性が高く、神風は純潔第三世代覚者である士郎は当たりではないかとニヤついた。
神風は士郎が当たりの人材ではないかと一人ニヤついていたのだが、まだ彼がどんな超能力を持っているのか聞く前に判断するのは早いと興奮する自分を落ち着かせ、いつもの人の良さそうな笑みを浮かべ直す。
そして、神風は人の良さそうな笑みを浮かべながら士郎にこう質問した。
「それで、士郎くんはどんな超能力を持っているだい?」
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