第6話 事務所が荒れている原因②
「この事務所の労働環境がホワイトなことに気が取られて忘れてたけど、神風さんがその事務所で暴れた従業員を怒らせてしまった内容を聞いてなかったですよね?それで、神風さんは何をしたんですか?」
士郎は神風探偵事務所の労働環境がホワイトであることに気が取られて忘れていたが、本題である事務所の中で暴れた従業員に一体に何をしたのかと神風に改めて質問した。
士郎から改めて質問された神風は少し気まずそうな表情を浮かべて、士郎から視線を外した。
その仕草を見た士郎は神風が思ったよりも相当酷いことをしでかしたのではないかとすぐさま分かった。
士郎は地獄そのもののようなあいぎり地区やその付近の危険なスラム街で人生のほとんどを生活してきたため、数えられないほど命の危機に瀕したことがある。
それは時に通っていた学校が偏った思想の宗教大体の過激派に占拠されたこと、時に就活中に危険なマフィアに騙され、海外に飛ばされそうになったりなど様々である。
そんな物理的な危険と人の悪意により発生する危険に晒され続けた士郎は、危険察知能力と相手の心を読み解く能力が異常に発達した。
そのため、士郎は神風の表情から彼の気持ちを読み取り、神風が何か相当ヤバいことをやらかしたのは分かった。
だが、あくまでもヤバいことをやらかしたと言うことだけが分かったのみで、彼がどんなことをやらかしたのかまでは分からない。
なので、士郎は神風が何をやらかしたのかがとても気になった。
そうして、士郎が神風をジト目で見つめていると、気まずそうにしていた神風の表情が一瞬で真顔へと変わり、先ほどまでの優しい口調とは違い、感情が読み取れない一定トーンの声で淡々と話し始めた。
「まず、怒らせた理由を話す前に教えておかねばならないことがあるのだが、その怒らせた従業員は私の妻だ」
一定のトーンで淡々と話し始めた神風はその従業員を怒らせてしまった理由を話す前に教えることがあると言い、その怒らせてしまった従業員は自分の妻であると士郎に伝えた。
怒らせてしまった従業員は神風の妻であると聞いた士郎は一瞬で悟ってしまった。
神風が何をやらかしたのかを。
「端的に言うと私が浮気した」
神風が妻である従業員を怒らせた理由は士郎の予想通りであった。
神風から妻を怒らせた理由を聞いた士郎は、
「大体何を言うか分かってましたけど、やっぱり浮気か......探偵は浮気調査をメインに取り扱っているのに、そんな探偵が浮気をするのか......僕は一度も交際したことはないですけど、浮気は本当に良くないですよ」
彼が浮気していたことは何となく予想できていたが、浮気調査を主な依頼とする探偵は浮気がどう言うものかよく分かっているはずなのに、平然と浮気したことに少し驚いてしまった。
そして、士郎は神風に自分は一度も交際はしたことないが、それでも浮気という行為は最低な行為であると分かっているので、神風のことを非難した。
士郎から非難された神風はバツが悪そうな顔をすると思いきや、先ほどと変わらず無表情であり、何を考えているのか全く分からなかった。
彼の表情が全く変わらないことから、士郎は神風が何を考えているのか分からず、彼の言葉を待っていると、
「まあ、浮気したと言っても私から手を出したんじゃなくて、強姦されただけなんだけどね」
まさかの真実を口走った。
どうやら、神風は自分から手を出したのではなく、相手に無理矢理やられたようであった。
まさかの真実に驚きを隠せない士郎は思考が追いつかずにショートしてしまっていると、神風が自分が強姦されるまでの一連の流れを話し始めた。
その日の神風はたまにはお酒でも飲みたいなと思い、あいぎり地区を歩いていた。
そうして、自分の思いのままぶらぶらとあいぎり地区の中を散策していると、とてもお洒落な雰囲気のバーを見つけた。
そのバーを見た神風は今日はここで酒でも飲もうかと思い、このお洒落なバーに入ったようだ。
バーの中は神風の予想通りとても雰囲気が良く、このバーに入って良かったなと思った。
バーの中へ入った神風はバーの中を見渡してみると、中にはとても美人な女性が一人いるだけで他の人は誰もいなかった。
神風はこんなに雰囲気が良いバーなのに一人しか客がいないのかと不思議に思いながら、カウンター席に座り、このバーのマスターにカシスオレンジを頼んだ。
神風はアルコールが弱く、度数が高い酒を飲むとすぐに寝てしまうため、アルコール度数の低いカシスオレンジを頼んだのだ。
そうして、カシスオレンジを飲んでいた神風であったのだが、カシスオレンジを半分ほど飲んだところで強い眠気に襲われ、その眠気に逆らえずに神風はそのまま深い眠りに落ちてしまった。
そのまま深い眠りに落ちてしまった神風が次に目が覚めた時、全く見覚えのない天井が視界に広がっていた。
その状況におかしいと思った神風は視線を落としてみると、服を着ていたはずなのに裸にされており、明らかに服を脱いだ記憶もないし、こんな場所に来た記憶もなかった。
記憶にない状況に焦りを覚えた神風は恐る恐る横へ視線を向けてみると、そこには昨日お洒落なバーで一人で酒を飲んでいた美女が裸の状態で寝ていたのだった。
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