第5話 事務所が荒れている原因①
そうして、士郎と神風は中身が飛び出しているボロボロのソファーに向かい合うように座り、ソファーに座ると同時に士郎と神風は事務所の惨状に絶望して、ため息をついた。
ソファーに座った二人はしばらくの間、何も語らずにその場に考え込むような姿勢で固まっていたのだが、途中で神風が立ち上がった。
「このまま仕事の話に持っていくのは流石に悪いし、お茶でも淹れてくるよ。士郎くんはそこで待っててくれ」
神風は士郎にそう言うと、荒れ果てた事務所の中で唯一無事であった茶菓子やコップなどが入っている収納から二人分のコップを取り出した。
二人分のコップを取り出した神風はめちゃくちゃにされている事務作業をする机や椅子の近くにある棚に近づき、棚の中から二人分のティーパックを取り出し、コップの中へ入れた。
ティーパックをコップの中へ入れた後はその棚の上に乗っているポットでコップの中へお湯を注ぎ、士郎の元へ戻ってきた。
「はい、これは士郎くんの分。士郎くんがどんなお茶が好きか分からなかったから、嫌いな人が少ない緑茶にしておいたよ」
士郎の元へ戻ってきた神風は士郎が好きなお茶の種類がわからなかったので、嫌いな人が少ない緑茶を淹れてきたらしく、その緑茶を士郎に渡したのだった。
「わざわざ、ありがとうございます」
緑茶を渡された士郎は素直に緑茶を持ってきてくれた神風に感謝の言葉を述べ、二人はまったりとした雰囲気で緑茶を飲み始めた。
そうして、二人は緑茶を楽しんでいたのだが、士郎はふと気になることを質問してみた。
「この事務所をめちゃくちゃにしたのは神風さんじゃないですよね?それなら、誰がこの事務所をめちゃくちゃにしたんですか?」
士郎は神風に事務所の中をめちゃくちゃにした犯人は誰なのかと質問したのだった。
どうやら、士郎は事務所の中をめちゃくちゃにした犯人がずっと気になっていたようだ。
事務所の中をめちゃくちゃにした犯人は誰なのかと質問された神風は緑茶を飲んだ後、大きなため息を吐きながら話し始めた。
「この事務所には私以外に二人の者が働いているのだがね、そのうちの一人を少々私が怒らせてしまったのだよ。そしたら事務所がこんなことになっていた。いつもはとても大人しくて良い子でね、怒っても暴れたりしないのだよ。だけど、今回は彼女の逆鱗に触れてしまったようで、事務所をめちゃくちゃ壊されてしまったみたいだ」
ため息をついた神風は士郎にこの事務所には自分以外に二人の従業員がおり、そのうちの一人を怒らせてしまったことで、事務所の中をめちゃくちゃにされてしまったと伝えた。
その事務所の中をめちゃくちゃにした人物は普段から今回のように怒るたびに暴れるような子ではなく、普段はとても大人しくて良い子であり、怒っても暴れたりするようなタイプではないらしい。
しかし、今回は穏やかな彼女の逆鱗に触れてしまったらしく、事務所の中で大暴れし、事務所の中がめちゃくちゃになってしまったとのことである。
神風から事務所がめちゃくちゃになった一連の流れを教えてもらった士郎はまず、
「事務所がめちゃくちゃにされたのは、普通に神風さんのせいじゃないですか。何被害者ぶってるんですか。僕、勘違いしてましたよ」
神風に事務所がめちゃくちゃにされたのは自業自得であり、神風がいかにも自分は被害者ですと言う雰囲気を出しているせいで勘違いしてしまったのではないかと追求した。
士郎から追及を受けた神風はバツが悪そうに士郎から視線を外したのだった。
自分から視線を外した神風に、士郎は再び質問を投げかける。
「それで?神風さんはその従業員の方をどんな理由で怒らせたんですか?給料の未払いとかですか?それとも有給の申請を全て許可しなかったりしたんですか?本当に最低な人ですね」
「いや、何勝手に私がブラック企業みたいなことをしている前提で話しているのかい?私の事務所はこう見えてホワイトだよ?後勝手な解釈で私のことを最低な人間扱いするのやめてくれないかな?」
士郎は神風に事務所の中で暴れた従業員を怒らせた理由はなんだと質問を投げかけた後、怒らせた原因として、給料の未払いと有給申請の拒否を話題に上げた。
そして、このどちらも経験したことがある士郎は過去のことを思い出し、神風は別にこのどちらもやったかは分かっていないのに、己の過去の怒りを神風にぶつけるように彼のことを最低と非難した。
どうやら、士郎にとってこの思い出は相当嫌なものだったらしい。
その行き場のない怒りをぶつけられた神風はすぐさま自分はそんなブラック企業のようなことはしていないと否定し、自分の事務所はホワイトだと伝えた。
神風からこの事務所はホワイトだと聞いた士郎は一気に表情が明るいものへと変わり、ニコニコ笑顔を浮かべ始めた。
そんな笑顔を浮かべている士郎に神風は言葉を続けるように自分のことを勝手に最低な人間扱いするのはやめてくれと付け足したが、士郎はホワイトという文字に取り憑かれているため、全く聞いていなかった。
そんなホワイト企業であるだけで、この世に生まれてきて良かったと思えるほど喜んでいる士郎を見た神風は本当にこの子は苦労してきたのだなと士郎のことを憐れんだのだった。
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