第4話
昨日、告白現場での出来事については続きがある。
告白していた男子生徒は黒崎さんの嘘によって完膚なきまでに玉砕し、絶望のオーラを纏いながらその場から去っていった。
「あのさ…どういうつもりなわけ?」
さすがの私も問いたださないわけにはいかなかった。
「覗きがご趣味の先輩ですし、ちょうどよくて。」
「それはごめん!!悪気はなかった!たまたま通りかかって、動くタイミングが分からなかった!」
趣味が覗きとか覚えられたくないし、全くの誤解。
どんだけ変態の先輩なんだよ。
「冗談です。ここにいたのは驚きでしたけど、それ以上に好都合でした。」
「告白を断るのに?今回ここにいたのが私だったからまだ良かったものの、知らない奴だったら危なかった。君は目立つから勘違いしかねないぞ。」
「あら、心配して下さるのですか?」
「いや別に。ただ何かあれば妹が悲しむ。君、黒崎さんでしょ?妹のクラスメイトで友達の。」
私はこの黒崎雪那とほとんど面識がないけれども、実のところ、繋がりはないわけではなかった。
目立つ他に妹である相馬綾乃の友達らしい。
でもまぁ、妹といるところを見たことがあるだけで話したこともないけれど。
「はい。細かいところを訂正すると綾乃ちゃんは友達どころか中学生の時からの親友ですね。」
だったら尚更である。
綾乃が悲しむことは避けたい。絶対阻止しないといけない。
なぜかって?
そんな綾乃を見たくないから。
「というか先輩?こんな美少女が困っていることよりも綾乃ちゃんが悲しむからですか。」
「自分で美少女言うなよ。そもそも私にとっては、綾乃以上に優先すべきことはない。」
「事実を言ったまでです。それにしても気持ち悪いほどシスコンなのは本当なんですね。」
「なんとでも。綾乃は天使なのは事実だから。」
黒崎雪那が綺麗と表すなら、綾乃は可愛いの塊。
無垢な笑顔に性格も純粋。
穢れなき天使以外他ならない!!
「それよりも最初の質問に戻るけど、どういうつもりでああしたのさ?私も盗み見てしまったのが悪いけど…。」
「そうですね、答えはシンプル。元々カモフラ相手は相馬先輩と決めていたからです。」
「はい?」
「今日は普通に断るつもりで、頃合いを見てから相馬先輩にお願いしようと思ってました。」
「待て待て待て。いきなりすぎて分からん!なんで私!?」
「相馬先輩が条件として完璧ですし。」
「いやいや私の気持ちは?メリットとかないし、そもそも受け入れたくないんだけど。」
「うるさいですね。バカですか?先輩にメリットなくこんなこと言うわけないでしょう?」
さっきから思ってたけど……。
なんか私対してキツくない?え、嫌われてる?
話したことないだけなのに?
というより、今まで学校で見かけた時の姿どこいった?性格もよくて、優しくて、おしとやかという評判しか聞いたことないけど?
その評判はこの道の先にある焼却炉にでも放り込んできたのかな。
「そもそも一番最初は、結構前から綾乃ちゃんから先輩を勧められているんですよ。」
「綾乃が?」
「恋人も好きな人すらもいない姉が心配らしくて。でも適当には作って欲しくないし、私と先輩なら合うんじゃないかって。」
………どこを見て合うって思ったんだろう。
「正直私もこの迷惑で無駄な告白ラッシュにうんざりしてた。だからといって適当な相手を恋人役だったら調子乗られると鬱陶しいし。その点、先輩は綾乃ちゃんの姉だし。密かに男女問わず人気も高いから私と釣り合うし。条件いいんですよ。」
「とりあえず理由は分かった。でも私が引き受けるとは限らない。」
「いいえ、先輩は引き受けますよ。」
「……なぜ。」
その絶対的な自信。
どうしよう、嫌な予感しかしない。
「さっきも言いましたけど、綾乃ちゃんはすごく姉を心配してます。」
「優しい娘だからね。」
「姉にいい人ができないことだけじゃなくて、告白も多いから悪い人に引っ掛からないかと私に相談がきてます。」
「……。」
「自分のことで心配をかけてるのではないか?自分がいるから、姉は恋人を作らないのでは?姉を安心させたいけどどうしたらいいか分「ストップ!!」」
「まだまだありますけど?」
「もういいから……分かったから。引き受けたら…綾乃の不安も少しはなくなるんだよな…?」
「さぁ?それはこれから次第ですけど、想像はつくのでは?」
「……それで?どうしたらいい。」
「難しいことではないですよ。ただ傍にいて下さい。恋人として。」
これが私と黒崎雪那の馴れ初めである。
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