第3話
「散々な目にあった…。」
昼休み…ではなく、それさえも超えた5時間目。
私はようやくお昼ごはんにありつける。
授業合間の休憩時間ごとにクラスメイトに囲まれて尋問は始まるわ、昼休みなんて人気のない旧校舎に逃げ込む羽目になった。それもここに逃げ込むまで鬼ごっこの如く追いかけられる始末。
「お互い楽しい1日になっているみたいですね?」
「なんで当然のように黒崎さんがいる。」
やっと一息つけると思いきや、まさかの元凶本人までエンカウントしたわけで。
用事がない限り人が来ないような旧校舎に。
私、ここに来るなんて一言も教えてないのに。
「だって私は相馬先輩の恋人なんですから、人気のないところで逢引は当然でしょう?」
「今授業中。」
「5時間目は自習です♡」
嘘くさい。というか絶対嘘だ。
でも追求したとしても、はぐらかすだろう。
「相馬先輩こそ、ここで何をするつもりだったのですか?人気のない旧校舎の空き教室…それも授業中に…いくら欲求不満だからといって私がいるのに別の女を食べるなんて最低ですよ?」
「そんなことするか!!!」
「ま、まさか…いくら恋人だからといっても早すぎです。まずは手順を踏んでから…。」
「それもありえないから!!」
さすがに昨日の今日でそんなことできるわけないし、相手はあの黒崎雪那。
そりゃあ高嶺の花を一人占めできる優越感はなくはないけど。
好きでもないのにそんなことしたくないし、何より黒崎さん本人に失礼だと思うからありえない。
「ありえないですか。そうですね、そんなことができるほど先輩に度胸なんてありませんしね。」
「はい?」
「私と付き合いたいって思う人は数えきれないほどなのに。どれだけ幸せなことか分かってないし。まぁいいや…意気地なしでもせいぜい告白避けにはなって下さいよ。」
「えっとなんで怒ってるわけ?」
「怒ってませんが?」
なんか嫌われてない?
それかどう見ても怒っているようにしか見えない。
「えっとそれにしても噂広まるの早過ぎないかな?」
「何言っているのですか。この黒崎雪那に恋人ですよ?広まらない方がおかしいですけど。」
「自分で言うか。」
「当然。私が美少女なのは事実ですので。」
「自分で言うか。」
クラスメイトが言っているのと同じことを自分で言ったよ、この子。
美少女まで言っちゃったよ…。
「はぁ、相馬先輩。」
「何。」
「見せかけでもちゃんとしないと、綾乃ちゃんが悲しみますよ?」
「う…努力はする。」
それを言われると何も言い返せない。
なにせこの見せかけの恋人関係は、私の妹である相馬綾乃の存在で成り立っているのだから。
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