第5話 言ってしまった……
「ごめん。ちょっと考え事しちゃって」
「何かあったんですか?」
「たいしたことじゃないの。大丈夫よ」
完全にあの頃の感情が
「そうですか。悩み事なら聞きますよ」
本当に?
私の今までの出来ごと全部話してもいいの?
そして全てを受け止めてくれるの?
どうして男は愛してもいない女性と、愛しているかのように寄り添えるのか、あなたに聞いてもいいの?
ちゃんと答えられるの?
どうして男達は、私に近づいてきたの……?
私、軽く見えるの……?
あなたに、答えられるの? 藤崎君……。
どうせ、仕事の事で悩んでいるんだろう、ぐらいにしか思っていないでしょ。
きっと私は何の罪も無い藤崎君を
何故ならあなたも、男だからよ。
何を考えているのか全く分からないわ。
この食事の間に、あなたの目的を見極めるなんて無理。
藤崎君に嫌われてもいいから、なんでもズバズバと聞いてしまえばいい。
でも
だから今にも浮かれてしまいそうな自分が怖い……。ここのお店に入ってから、ずーっと浮かれそうな自分を抑えている。
もう
私だって頭ではわかっている。幸せになるには、怖くても、傷つきたくなくても、歯を食いしばって一歩前に進むしかないことを。
でもまた傷つきそうで、怖い……。
「高塚さん、大丈夫ですか? 涙でてますよ」
えっ、うそっ。私、泣いている。
「無理しないほうが良い。もう帰りましょうか?」
ごめん、ちょっとパニックになっただけ。そんなに心配しないで。帰り
「もう大丈夫だから。ごめんね、気持ちが不安定になって」
一つずつ順番に話そう。もうそれしか私に出来ることは無い。
「本当に大丈夫ですか? でも無理はしないで下さいね」
藤崎君は突然涙を流した私を見て、どう思っているのだろう……。
とりあえずゆっくりと息を吸って、心を落ち着かせよう。
よし。
「私は過去に、恋愛でとても辛い思いをしたの」
「そ、そうなんですか。どんなことがあったんですか?」
「聞きたいの?」
「そういうわけじゃ……。でも辛い思いを抱えたままでいるより、話してしまった方がいいんじゃないかと思って」
「そうかもね。でも、もう心の奥に押し込んだの」
「そうですか……」
「辛い思いをしたせいで、私は男の人が何を考えているのか、分からなくなってしまった」
「……」
藤崎君、黙っちゃった。そりゃそうよね。急にこんな話しをされたら、戸惑うわよね。でも本題はここからなの。
「藤崎君がいま何を考えているのかも分からない」
「ぼ、僕、ですか……」
あっ、ちょっとキツイ言い方だったかな。でも、もう戻れない。
「どうして今日、私を食事に誘ったの?」
ハトが豆鉄砲を喰らったような顔って、きっと今の藤崎君なんだろう。お願い答えて。耳を真っ赤にしたままモジモジしていないで、何か言って。
でも……、嘘はつかないで……。
「い、以前から、高塚さんの事が気になっていて……、それで仕事以外でも話がしたいと思って……」
私の事が気になっていたの? 何よそれ。今までの男達も同じようなこと言っていたわ。どうしてそこで言葉が止まっちゃうのよ。
あなたもきっと今までの男達と同じような、男の習性を持っているんでしょうね。
だって男だから。
でも重要なのはあなたが私に恋をしているかどうか。私が知りたいのはそれだけ。今までの男達は私に恋なんかしていなかった。
どうして黙ったままなの……藤崎君……。何か言ってよ……。私から話し出しちゃうじゃない……。
「ねえ……」
「はい」
えっ、ちょっと、ヤダっ……、私は何を言おうとしているの……。
「私に……」
まともに藤崎君を見れない。
「……私に……恋をしてくれますか……」
「……」
言ってしまった……。
自分からせがむなんて。やっぱり私は
きっと藤崎君も呆れて
えっ?
どうしたの?
さっきまでモジモジしていたワンちゃんは何処に行ったの?
どうしてそんなに真剣な顔で私を見ているの?
怒っているの?
「僕はもう、
高塚さんに恋をしています」
「……」
藤崎君なに言っているの。
「えっ……。その……。えっ?」
ずーっと待っていた言葉なのに、藤崎君がハッキリと言ってくれた言葉なのに。どうしてためらっているの、私は……。
私がいつまでも動揺しているから、藤崎君がまたオドオドしたワンちゃんみたいになっちゃってるよ。
何か言わなきゃ。
そうそう、焦る必要はないよね。タイムリミットがあるわけではない。私も藤崎君も少し落ち着いて様子を見た方がいい。
「あの……、返事は今日じゃなくてもいいよね?」
「はい。高塚さんの気持ちに合わせます」
私はきっと、藤崎君のこんなところに惹かれているのかもしれない。
彼もホッとしたみたい、急に口数が多くなったよ。そういう私も、ホッとしたかも。
「何かスイーツでも頼みましょうか。高塚さんは何がいいですか?」
「私は
「さすがにイタリアンのお店に
だからここはイタリアンというよりファミレスだってば。
へ~、藤崎君も
つづく……
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