第26話 配信世界での出会い5
VTuberやってるなら、やっぱりリアルは置いておかないとね。キャラクターはキャラクターであって欲しいものだから。ついつい喋ってしまってキャラクター性が崩れるのは勿体ないよね。
「す、すいません……」
「別に謝らなくて良いんだよ……悩みがあって聞いて欲しいって話ならいつでも聞くけど、話の流れでサラッとリアルの話を出してしまうのは良くないよ。素は出してもいいけど、リアルを語っちゃダメ。今のあなたはカッコイイ男装女子なんだから、自分の思うように自分の思った者になれば良いんだよ。実は自分はダメな人間で、みたいなことは忘れて、全力で表現したら良いんだよ。あなたはここでどうなりたいの? 夢は何?」
ロメちゃんがポカンとした表情で、目を
ふぅ……言ってしまった。わたし自身がそうだったから、ついつい言ってしまった。望む自分になれない現実があるなら、望む自分になれる世界で望まない自分のままでいる必要はないからね。
嘘ではある。この世界は嘘だと思うよ。嘘で塗り固められた世界かもしれないけど、自分も見てる人もそれで幸せならその方が良いと思うんだよね。嘘をついて騙すなら自分ごと騙してしまって、この世界ではそれが本当にしてしまえばいいんだよ。
死ぬまでこの世界で真実を明かさないなら、この世界においては嘘が真実になるんだから。
「自分は……憧れて……諦められなくて……」
「無理に言わなくても良いよ。わたしは聞き出したいわけじゃないから。さっきも言ったように、あなたが言いたいなら別だけど」
「はい……自分はVTuberを始めるにあたって不安でいっぱいになってたんで……聞いてもらいたいんだと思います。不安を誰かに話してしまいたいんだと思います」
そう言ってロメちゃんは語り始めた。
ロメちゃんの憧れとはリアルのことでもあり、最終的にバーチャル世界のことでもあった。
彼女は子供の頃、世界的に有名な女性ばかりの劇団の演劇を見に行って、その舞台の中央で輝くスターに憧れた。家庭は裕福ではなかったけど、子供の夢のためにと親御さんはバレエのレッスンをさせてくれた。努力を続けて劇団付属の音楽学校の入試に三回トライしたものの、現実は厳しく不合格に。
その後意気消沈したまま短大へ入学。目標もやる気もなくふらふらしていたところ、ふと目にした動画に目を奪われたとか。その動画はメタライブ所属のVSingerの『
同じメタライブ所属でも、うみちゃんがカワイイ系ならしんらんさんはカッコイイ系で、メタライブの歌の2大柱と言っていいぐらい。
ロメちゃんは、そんなクールでカッコイイしんらんさんに一目惚れ(って言うのかな?)して、新たな憧れを得てVTuberを目指したらしい。
だから、憧れた劇団のスターとしんらんさんのカッコ良さを合わせて男装系で行こうと考えてたんだって。
夢に向かって頑張ってる姿は既にカッコイイよ!
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