第10話 配信の壺4
腕が発する熱が更に増し、呼吸が乱れてきた。心拍数も150台をキープ。有酸素運動域だね。わたしがダイエットをしてるなら喜んでいるところ。
「はぁはぁ……ふぅ……」
拾われたい落穂「もうちょっとだよ!」
撒かれたい種「最後まで気を抜かないで〜」
響き渡る鐘「休憩しても大丈夫だよ」
そろそろ開始してから二時間。多少雑談を挟みながらだけど、疲れてきているのは確かで、みんなもそれを分かってるんだろう。
普段はVRだから、立ちっぱなしだし左右独立コントローラーを振り回してるからその認識は正しい。
耳を塞ぎたくなる橋「壺用専用コントローラー?」
希望の向日葵「まさかの自作!?」
普段から見てない人の方が気づいちゃったね。でも、真実には辿り着けないから問題なし。普通は本当にゲームの世界にいるとは思わないもんね。ここはわたしらしい答えをあげよう。
「山を普通に歩いてここまで登ってくるだけでも息切れすると思うよ? それを腕の力だけで引っ張り上げ続けるなんて、ボルダリングより大変なんだよ? ボルダリングやったことないけど」
響き渡る鐘「せやな」
希望の向日葵「ないんかい」
拾われたい落穂「ちょっとボルダリングしてくる」
撒かれたい種「うんうん腕にクルね!オレの時もそうだった」
そうそう、そんなもんなんだよ。一緒に虚構を楽しんで貰えたら嬉しいんだよ、わたしは。
さて、息も落ち着いてきたし心拍数も120台に落ちたから、雪に気をつけながらもう少し登りましょう。
「ふっ! この浮かんでる岩場を飛んで行くのって難しいよね。はっ! 雪で滑りそうなところを飛ぶとか危なすぎるでしょっ!」
気合いを呼気と共に吐き出しながら、ぴょんぴょんと飛ぶように浮遊岩を渡る。
腕を振り回しながら話せてるってことは、ハンマー山登りにも慣れて余裕が出てきたんだなって思う。
滑り落ちかけつつも浮遊岩を渡切った。
そして、ロープで吊られているバケツを登るという、このゲーム中最も不安定な場所まで来た。
拾われたい落穂「これを登ればゴールはすぐだよ!」
撒かれたい種「最難関キタ!」
響き渡る鐘「そこから上だよ」
掲げられた三色旗「左を見た方が良いんじゃない?」
耳を塞ぎたくなる橋「あーあれは見とくべき」
希望の向日葵「やめておくべき」
もうすぐゴールだからコメントも盛り上がってきたけど……なんか意見割れてる? 左と言うと、今見てるバケツより奥……あー、あの
コメントの誘導に従って少し先に進み見上げてみると、細長いものが見えてくる。その上には「触るな!」という注意書きが。
どうなるかは配信で見たことはあるけど……さて、触るべきか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます