第7話 配信の壺1


 わたしは個人勢のVTuberなんよ?

 VTuberを大きく分けると、事務所に所属しているか、個人でやっているかの二種類がいるの。事務所所属は、VTuber活動をサポートしてくれる事務所がいて、仕事を取ってきてくれたり歌やゲームの配信許諾交渉をしてくれたりライブの運営をしてくれたりグッズの販売をしてくれたりと、多方面で活動を支えてもらえる。一方個人勢は、それらを全て自分で行う必要がある。その代わり、事務所所属は事務所の方針で配信内容や配信時間など好き勝手配信できない部分も出てくる。個人勢にはその制限がなく好きなように配信できる。

 ということで、個人勢のわたしは、版権元に許諾を得るとか面倒な作業もあるけど、自分のアイデアで自分の思うように自由に配信できるんよね。配信サービスの規約は守らないといけないし、公序良俗にも準じるつもりだけど、時間に関する制限は一切ないので、思い付いたことを思い付いた時に配信出来てしまう。

 つまり何が言いたいかっていうと、とりあえず思い付いたことを配信をしようと思うってこと。

 昨日色々調べた中で、重要なことが分かったんだけど、わたしはこの身体になったからゲームの中に入れるらしい。完全なわたしの主観視点で、わたしが実際に身体を動かすようにゲームをプレイできるみたい。

 わたしの配信のメインコンテンツである昔の絵画の世界に入るのも良いけど、現代の芸術とも言えるゲームに入るのも出来ればやってみたかったんだよね。自分のアバターを使ってゲームするような世界改変MODもあるでしょ? それを更に進化させたようなもんだよね。

 でも、ゲームプレイをOBSで録画して見てみたら、リアルで見た事のある配信と変わらなかったんだよね。この言い方だと分かりにくいか。わたしはゲームの中で自由に動いてるつもりだけど、外から見るとゲームの動きに合わせて動いてることになってる、ってことね。アバターだけがわたしに置き変わってる感じで。だから配信しても、MODの範囲で説明出来そうなんよ。

 でもそれだけじゃつまらないから、そこに世界体験の臨場感を与えるために、配信画面に心拍数計を表示してみようと思うの! わたしに鼓動が残っていることを利用しようってこと。ゲームに入って本当に身体を動かせば心拍数は上がるし、驚くようなことがあったら、画面越しにゲームをプレイしている時より更に心拍数が上がると思って。


 ということで、はい、やって来ましたゲームの世界。わたしの視線の先には首が痛くなるほど見上げないといけない山。頂上が雪に覆われているほどの標高だけど、木がほとんど無い岩とゴミだらけの山。なぜか多くの配信者はこのゲームをするんだよね。

 題して『【クリア耐久】絵中えのなかハイルが壺の中に入ってみた【心拍数表示】』の配信スタートです。

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