第2話 最弱 VS 最弱
現在の日付を確認してみると、学園に入学するまであと3ヶ月あった。3ヶ月は短いようで長い。その時間を有意義に使って、ゲームのシナリオなんてぶっ壊してやろうじゃないか。
「……と、意気込んだのはいいんだけどなぁ」
やはり現実は甘くなかった。
そんな俺がすぐに強くなれるはずがなかった。レベルを上げれば確実に強くはなっていくだろうが、3ヶ月と時間が限られている。この短期間で主人公の力を凌駕することができればいいのだが……。
「普通に考えて、絶対に無理なんだよな」
その理由は、ゲームで見たキャラクターブックではキャラの攻撃力や防御力、使える魔法などを見ることができた。しかし、そこにルイの情報はほぼすべて『―』と明確に記されていなかったのである。
すぐにストーリーから脱落するからか、ルイは名前と容姿以外の情報が掲載されていなかった。実はもう一人悪役モブとして名前が出ている者がいたが、そいつも名前と容姿以外の情報は掲載されていなかった。
「まあ、雑魚キャラとして定着していただけで、本当に雑魚キャラかどうかは試してみないと分からないよな」
そう、俺はこれから自分の力を試しに行く予定だ。どこに行くかだって既に決まっている。
【狂乱の森】。
時間なんて関係なく薄暗く、そこら中に魔物がいる魔物だらけの森。それが俺がこれから行く予定の場所だ。
【狂乱の森】はゲームで何度も攻略しているため、攻略の仕方やどこにどの魔物がいるかすらもすべて把握している。
名前は物騒だが、中心部に進まなければ大して強い魔物は現れない。手前の方にいる魔物と交戦すれば、さすがの
「学園に入学が決まった時、父上に買ってもらった長剣がある。よし、早速使わせてもらうか」
部屋に戻り、俺は買ってもらっても触れず大切にしていた長剣を手に取った。あまり高価な物ではないが、父上が買ってくれた物はすべて大切な物として扱っている。
手に取った剣を左腰に差し、早速【狂乱の森】へ向かうべく屋敷を出た。屋敷からはあまり離れていない場所にあるため、すぐに目的地に到着した。
【狂乱の森】は真上から見ると円状になっている。外側ではあまり強い魔物は出現せず、俺がゲームとして攻略した時は剣一振で倒すことができた。
しかし中心部に近づいていくごとに、魔物の強さは上がっていく。中心部の地面にはお宝が眠っており、その番人として超強いモンスターが立ちはだかっている。
「まあ、さすがに最弱のルイでも外側だったら負けないだろ」
俺が強くなるために、まずしなければならないのはレベル上げだ。ゲームとは違って現実なためレベル上げという概念があるかは知らないが、魔物を倒すことで強くなるのは確かだ。
というわけでまずは、魔物の中でも最弱とされるスライムでも倒しましょうかね。スライムぐらいだったら遅れを取ることはないだろうし、間違いなく負けないはずだし。
「……ふっ、最弱が最強を目指す初陣か。燃えるな」
顎に手を当て、人生で一度は言ってみたかったことを口にする。これはいわゆる『成り上がり』というやつだ。やべぇ、今の俺あまりにもかっこよすぎて我ながら惚れちゃう。
一人で自尊心を満たしながら笑みを浮かべていると、ガサリと近くの草むらが揺れた。それに見事に反応して注意を向けると、草むらから1匹のスライムが飛び出してくる。
「……っぶね!」
突然の攻撃を咄嗟に避け、俺は抜剣してスライムと対峙する。スライムは中心にある核を砕くか切ることができれば倒すことができる。簡単な話だ。
「とりゃぁぁ!」
俺は両手で持っていた剣を振りかざし、スライムを一刀両断するように剣を振り下ろした。しかしスライムは今から殺られることすらも分からないのか、逃げる素振りすら見せずその場を動かない。たちまちスライムの核に剣が当たりそうになり、俺は勝ちを確信する。
(ふっ……最弱のスライムくらいなら
そう思った、瞬間だった。
――グニョリ。
そんな効果音とともに、俺が振り下ろした剣は地面に突き刺さった。
「…………は?」
意味が分からなかった。俺の剣は確かにスライムの核を一刀両断したはずだ。位置も完璧だったはずだし、外すわけがないと自負していた。
なのになぜ、
目の前にいるスライムは俺の疑問など知る由もなく、やり返しだ! と言わんばかりにこちらに向かって突進してくる。咄嗟に剣でガードし、スライムを押し返して再び対峙した。
(……ちょっと待て。スライム、思ったより強いんだが!?)
「くそが! 次こそは……!」
再び剣を振りかざし、スライムの核に目掛けて振り下ろす。しかしまたしても、グニョリという効果音が鳴り倒すことはできなかった。
だが今の攻撃で確信する。俺は間違いなく、ピンポイントでスライムの核を切ったはずだった。それでも核に当たらず、倒すことができなかったのには明確な理由がある。
「こいつ、核を自由自在に動かしてやがる……!」
その結論に至って戦慄した。すると反撃するよー! と言わんばかりにスライムは突進してくる。俺は避けられず見事に腹に突進を食らい、意識を失った。
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