第5話「頭上注意」
俺の妹は熱中しやすい性格だ。幼少期から好奇心
三ヶ月前は引っ越しの荷造りの延長で
そんな妹が現在ハマっているのはタロット占いだが、もうそろそろ占いにも飽きてくる頃ではなかろうかと俺は踏んでいる。
ある日の昼下がり。俺はダイニングの
「そうか、じゃあそっちはまだまだ忙しそうだな」
『うん。でも
「楽しそうだな」
俺は少し笑った。
『楽しいよ。海外での生活は夢の一つだったし。文化の違いに、毎日驚いてる』
彼女は出張先でカルチャーショックを受けた出来事を
アパートの屋根に、雨粒が当たった。その音は勢いを増し、すぐさま本降りに変わった。彼女が言葉を続ける。
『
俺はリサが
『うん。それにね、どうせなら
「リサ……。俺も――」
その時、玄関の方から叫び声が飛んできた。
「ただいまぁああ!! も〜最悪ぅうう!!」
この声をスマホのマイクが中途半端に拾ってしまったらしく、彼女は不思議そうに『え、今
「いや、妹が帰ってきたみたいだ」
妹は「ホントいい加減にしてよ! 雨ってなんなの!? なんでアパートが見えてきた瞬間に降ってくんの!?」と文句を言いながら廊下を進み、勢い良く居間の扉を開けた。ずぶ濡れで帰ってきたのかと思いきや、見たところ髪に水滴が少し付いている程度だ。俺は特に
「ああそうさ
「五番手はもう
妹は持っていたタオルで髪を丁寧に拭きながら「あとちょっとでノーダメ帰宅できたのに、ったく」とブツブツ言っていた。すると俺達のやり取りを聞いていた彼女がくすくす笑い始めた。俺は再びスマホに顔を向けた。
「あまり笑わないでくれ。ウケると調子乗るからコイツ」
『ふふふふ、でもおかしくって』
「? お兄ちゃん誰と
状況を
「あ、こんにちわー。……ん? あれ、この人ってまさか、お兄ちゃんの彼女さん!?」
妹は驚いた様子で俺の顔を見た。
「そうだけど」
「えぇっ実在したの!?
「どういう意味だ、それ」
妹は一礼しながら「ぃやー、いつも兄がすいません。
『あっ、これはご丁寧にどうも』
「いや、丁寧ではなかっただろ。二度
彼女は『じゃあ、
「うぉ、ノってくれた!
「
彼女はまたくすくす笑った。妹が展開の読める質問する。
「あのー、リサさんは占いとか好きですか?」
俺は「おまっ、リサを巻き込むな」と制止を
『結構好きだよ』
「私、タロット占いできるんですけどぉ――」
「できてねぇよ」
妹は「
『へ〜、楽しそうだね』
「じゃあ悩み事とか言ってください、
「よく
妹は自分の席に移動して、
「そんなちゃんとした相談コイツにしちゃダメだよ。適当な事しか言わないんだから」
『いいのいいの。それより
「……まぁリサがいいなら、いいけど」
妹は黙々とカードをシャッフル&カットしていた。俺はスマホを手に持ち、その様子を彼女に見せる。妹はカードの山から二枚引いてテーブルに裏向きで並べた。
「じゃあ今回は現状と対策のツーオラクルでやっていきますね。まずは、現状から」
妹はそう言いながら向かって右側のカードを
「これはワンドの8、逆位置です」
妹は丁寧口調でそう説明した。どうやら
『これで私の現状が分かるの?』
彼女が質問した。
「はい。このカードの場合、複数の丸太がリサさん
「どんな状況だよ、それ」
妹がまた恐ろしいことを言い始めた。
「恐らく自然の怒り、主に丸太の怒りを買っている状態だと思います」
「丸太の怒りって
「質問なんですけど、リサさんは森を
「あるかァ! お前、なに
激しくツッコむ俺とは対照的に彼女は『うーん、記憶してる限りそんな経験は無いかなー』と冷静に言った。
「そうですか。でも丸太が襲ってくる可能性があるので、今後木材の集積所には近づかないでくださいね」
『はーい』
「行く機会ねぇだろ、そんなとこ」
妹は「次は対策を見ていきまーす」と言って残っていたカードを
「ペンタクルのエース、正位置です。このカードはですね、空から大きな金属の
「おいっ」
妹は
「……あっホントだ。
「ホントだよ、お前ずっと
彼女はくすくす笑っている。妹は俺の忠告を素直に聞き入れてリーディングをやり直した。
「えーと、じゃあ、
「夢の
彼女は声を出して笑った。
「リサさんの心の穴をですね、
「ビッグマネーじゃねぇよ。
「それはテレビに
『あははは、じゃあ今度
「えぇ、リサそれ
『カジノ行ってこようかなー』
「うわぁあ! これでリサが
妹は俺の言葉に一切反応せず「じゃあ今回の結果をまとめます!」と進行した。
「おい、聞けよ人の話」
妹は大きく息を吸った後「お金で解決できないことを、私は知らない」と言った。
『妹ちゃん、面白い子ね』
彼女はニコニコしている。
「まあ、そう言ってくれるなら良かったよ」
こうして、彼女と妹の顔合わせは無事に終わった。
つづく
『
どうもこんにちは。今回のテーマは「ペンタクルのエース」と「ワンドの8」の二つです。
次に、ワンドの8は、思わぬ急展開を表しています。正位置では「好転、変化、チャンス到来」などを意味します。このカードはライフイベントなどの大きな変化ではなく身近な物事の好転を示している傾向が強いです。急にラッキーなことが単発的に訪れるとイメージしましょう。また、逆位置では「停滞、暗転、変化に取り残される」などを意味します。
よって今回のツーオラクルで出た逆位置のワンドの8は「現状として、海外出張による大きな環境の変化に心がついていけていない」と読むのが理解しやすいリーディングの一つだと思います。
では今回はここまで。さようなら、次回をお楽しみに。
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