一文字も合っていないではないか。

 ラジオはいたく感動していた。

 というか先から感動続きである。


 美しき星空、峠越えを果たしたときの安心感、朝ロッテリアのうまさ、全てを癒す温泉、その後のコーヒー牛乳、そして今!


 ラジオは温もりに舌鼓を打っていた。

 それは机と毛布と暖器具が融合した見た目──


 ──炬燵である。


 ラジオは26年生きてきて初めて、炬燵に入ったのだ。



 さて、昼食である。

 折角なので大分の郷土料理を食べたいというわけで。


 目の前には大分の郷土料理が置かれていた。

 小鉢に入れられた桜えび入りご飯。その右に汁物が置かれている。奥にはデザートと漬物二種類、ひじき。

 この内汁物を「だんご汁」、デザートを「やせうま」という。

 共通するのはだんご、と呼ばれるもので小麦粉を塩水で練り耳たぶほどの固さにしたものを一晩寝かせ平麺状の形にしたものだ。更にこれ本体にきな粉と砂糖をまぶしたものがとなる。


 ……ちょっと待て欲しい。「だんご汁」と「やせうま」。同じモノを使用した料理なのにどうしてこうも名前が違うのか。一文字も合っていないではないか。普通に考えればそこは「やせうま汁」とかになるッ筈ではないのか⁉ 


 鼠程の大脳を持つラジオは激しく混乱した。

 そこでこの疑問を解決すべく、全ラジオは目の前に微笑を浮かべる同行人に突撃取材を敢行するのだった。


 次回に続く!





 

 ということはなく。

 そういえばその通りである、が地元の民は特に気にしてない。そんな回答が同行人の口より発せられた。


 なるほど。確かに己はなぜラジオというのか。もっとこう、イカした本名というのがあったはずだが特に疑問に思うことなくラジオは一人称を「ラジオ」としているではないか。ラジオはラジオ。だんご汁はだんご汁。やせうまはやせうま。それでよいのである。太陽が東から昇り西に沈むと同じ事。

 ラジオはこの時、そう納得した。


 因みにその後、つまりこれを歌っている最中であるが、「グゥグーゥル」と呼ばれる異教の神に教えを乞うてみた所「やせうま」の由来は三つあるというお告げが出た。

 その中でも特に「馬の餌とする小麦を、この料理にして人間が食べてしまい、馬がやせてしまったから」というものをラジオは気に入る。

 物事の由来などどうせそんな適当なモノに違いない。とラジオは一人頷いた。


 さて肝心の味であるが、優しい味である。食材の風味を生かした、と歌えば人によっては悪口に聞こえるかもしれない。

 しかしこのご時世、外で食すものは皆脂ぎった味濃いものばかり。なのでこういった味わいが大変新鮮なものに写ったのである。


 腹は膨れた。身も清めた。では次に何をするのだ?

 そう、観光である!

 見せてもらおうか、別府に伝わりし「地獄」とやらを‼


 フリではなく本当に次回に続く!

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