1日目

あわてんぼうのラジオ。

 ラジオは慌てていた。

 冬節ふゆせつだというのに、身体は熱く汗が流れ出で服を濡らし、息はあがる。

 

 急がねば、急がねば、早く──


「現在成田発・大分空港行きピーチ航空○○便は搭乗手続き中です、ご利用の方はB搭乗口までお急ぎ下さい……繰り返します、現在成田発──」


 国内線乗り場はどこ? ここは国際線ロビーです。



 事の発端は手荷物を預けた所から始まる。

 搭乗手続きまであと1時間、さて昼でも食べよう。

 ラジオは余裕たっぷりの顔で(このときは)そう選択した。


 空港のレストランは、調べたところによると国際線の方にあるらしい。5分ほど歩き、見ると10店舗ほど見えてきた。


 間に合うには即席ハンバーガーが最もよい選択。しかしそれではあんまりだ。ここは少しお高めのものにしよう。


 ラジオはそう嘯き、洋麺屋パスタの店に入った。

 注文は、「炙りたらこバター」。1150円。

 まぁ直ぐに来るだろう。ラジオはそう侮る。


 ラジオは焦る。まだ来ない。

 ラジオは更に焦る。まだか、まだか⁉

 ラジオはパニックを押さえる。自身は紳士である。紳士たる者常に冷静であれ。そうカッコつけながら。


 そうして出た料理は100秒ほどで胃に収まり、会計を終えて、ラジオはダッシュした。

 そうして話は冒頭に戻る。



 そんなわけでラジオは迷子になった。

 おかしい、来るときは5分であったのに、もう10分も彷徨っている。


 ラジオは賭けに出た。最下層まで潜り、最初から順路を探そうと。


 賭けは当たった。

 国内線乗り場だ! あとはその扉を潜れば──


「手荷物検査をお願いしまーす」


 ラジオ、急いで荷物を手放し、係員に渡し、早歩きで金属探知機を潜る。


BEET! BEET! BEET!


「お客様、何かベルトをされていますか? 外した上でもう一回ゲートを……」


 ウカツ!

 ラジオは叫びそうになりながらも指示通りに動く。


 そうして検査を終え、ラジオは階段を駆け下り、どうにか搭乗口へ急行。飛行機に乗ることに成功する。

 ラジオは思った。

 危うくここでサガが終わるところであった、と。






 文明の発達は素晴らしく、2時間後にラジオは大分空港に到着する。

 大分空港は成田空港と違い、鉄道は通っておらぬ。従ってバスで市内へと向かわなければならない。

 

 ラジオはスマホの言うとおりに乗車券を買い、乗り場はどこか、と偵察に出た。


 バスは発車寸前であった。


 ラジオ、またも疾走しどうにか滑り込む。


 そしてスマホの言うとおりに「亀川駅前」という場所で降り立つ。

 人生初の大分! 興奮に身を任せ辺りを見渡すと。


 何もない。

 亀川駅、というのは実際停留所から直線距離700メートルの場所にある。

 早速田舎の洗礼を浴びるラジオであった。


 どこかで聞いた話によると、「○○まで3分」という案内があると仮定して、実際の距離は240メートルなのだという。

 つまり1分イコール80メートル。

 この理屈に従い、ラジオは光の国からきた戦士らの曲を聴きながら、13分で亀川駅にたどり着いた。

 ……慣れない荷物のせいである。


 駅に着き、見慣れない形のホームをぬける。待合室に入り、ノートを開く。それによると「JR日豊本線・佐伯行き」に乗ればよいらしい。

 なるほど。視線を上げる。

 目の前には件の列車がおり、今まさに扉を閉めた所であった。


DASH!


 ラジオ、三度疾走。滑り込むことに成功する。


 後に合流した同行人曰く、あの駅は比較的長く止まるので運がよかったのだという。ラジオはここが都会でなくて良かった、と感じた。



 こうしてラジオは無事に予約のホテルへと到着した。


 部屋に入る。

 ラジオはとある限界を迎えつつあった。

 急いでに入る。


 所作を終え、洗い流そうとする。

 出ない。

 ボタンを押す。

 出ない。

 繰り返す。

 ……水が出ない!


 そういえば電気もついていない。

 まさか、何かしないと電源が入らないのか?


 ラジオ、再びパニックになりかける。

 入口を確認しなくては。ああでも今の状態では、満足に動けない。というかもし……垂れたら。ヤバい。かなりヤバいよ。


 ラジオ、どうする⁉


 次回に続く!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る