宇宙人と平和

@Rui570

宇宙人と平和

 ここは様々な宇宙人たちとの共存が当たり前のようになっている地球。しかし、宇宙人たちによる常識を超えた犯罪も増えていた。その常識を超えた犯罪などに立ち向かい、平和を守ることを目的で「RUSH」という組織が結成されたのだった。




 RUSHのメンバーである21歳の女性・星田美月は銀行に来ていた。その目的は銀行強盗である二人のエイリアンたちを確保すること。

「そこの強盗たち、一緒に来なさい!」

「くっそぉ…RUSHかぁ…」

強盗たちは裏口から逃げ出した。

「待ちなさい!逃がさないわよ!」

美月も後を追おうと、裏口に向かう。その時、裏口から逃げたはずの強盗の一人が吹き飛ばされてきた。美月はしゃがんで避ける。

「うわっ!危ないなぁ…」

すると、もう一人の強盗も銀行の中に戻ってきた。それを追うかのように一人の青年が銀行に入ってきた。

「逃げようとしても無駄だ…」

彼の名は守バン。RUSHのメンバーで美月の幼馴染だ。

「おのれぇ…この野郎!」

強盗の一人がバンに殴りかかるが、バンはひらりとかわして反撃する。

「美月、こいつは俺に任せろ。他の人を急いで非難して逃げ場を全て封鎖するんだ。」

「うん。わかった。」

美月は銀行にいる人々を誘導した。

「そうはさせるかよぉ!」

強盗のエイリアンの一人が光線銃を一番後ろにいる美月に向けた。その時、どこからか光弾が飛んできて強盗の武器が弾き飛ばされた。バンが光線銃を発砲したのだ。

「悪いが…そのセリフは俺のセリフだ。」

「おのれぇ!」

強盗は激昂し、バンに向かって駆け出すが、バンは強盗の一人を投げ飛ばした。

「「うわぁぁぁ!」」

投げ飛ばされた強盗は仲間にぶつかって床に倒れこむ。それによって二人の強盗は気を失った。

「悪事はここまでだ…」

バンは持っていた手錠を強盗二人組の一人にはめた。そこへ、美月も駆け寄ってきて手錠をはめた。バンと美月の活躍で二人の銀行強盗は確保された。




 ここはRUSHの本部。本部では二人が話し合っていた。

「怪我人なども一人もいない。やったね、バン!」

「あぁ。というか俺たちの結果なんてこれが当たり前なんだ。そうはしゃぐな。」

「ちょっと、その言い方はないでしょ?」

その時、一人の男性が歩いてきた。

「やあ、二人共、ご苦労だったな。」

彼の名は黒井心。RUSHのメンバーでバンや美月の先輩にあたる30歳の男性。

「あっ、先輩、お疲れ様です。」

「君たちは相変わらず確保で済ませるんだな。」

「そう言うアンタのやり方が過激すぎるだけなのでは?」

「ちょっと…」

バンの態度に、美月が注意をする。

「そうかもな。だが、君たちには何もわからないに決まっている…!」

そう言うと心はその場から立ち去った。その時の表情はまるで怒っているかのようだった。

昔何かがあったに違いないだろう…。バンと美月はそう感じながら心の後ろ姿を見届けることしかできなかった。




 それから数日たったある日のことだった。平和な町に突然円盤が出現し、町の上空に浮かび上がったという通報があった。通報を受けたバンと美月、心は町に急行した。

「あれが円盤か…」

心はRUSHのメンバーが共通で持っている光線銃を向けた。美月が止めに入る。

「先輩、落ち着いて。まだ悪いやつだと決まったわけじゃないですよ。」

「うるさい!俺はな…」

心が何かを言いかけたその時、宇宙船から青い光が伸びてきた。それと同時に一人の宇宙人がバンたちの前に現れた。

「君たちがRUSHという組織なのか?」

「その通りだ。君は何者だ?」

バンは目の前にいる青白い肌の宇宙人をじっと見つめながら問い返す。

「私は惑星ミクルラ出身のラピス人・ベリオだ。」

「惑星ミクルラ…」

「そうだ。今から二十年ほど前…それが全ての始まり…」




 惑星ミクルラ。それは何百万年もの間、争いを起こさなかった奇跡の星と呼ばれていた私の故郷だ。しかし、今から二十年ほど前に巨大隕石が落下してきたことが原因で大勢のラピス人と共に滅び去ってしまった。生き残ったラピス人たちは宇宙船で他の惑星へと移り住んだのだった。その数少ない生き残りの内三人が地球へとやってきた。それがまだ子供だった私とその両親だ。

「ベリオ、普段は地球人の姿で活動するんだぞ。」

「わかった、父さん。」

宇宙船を地中に隠し、山の中に家を建てた私と両親は故郷と全く異なる地球の環境に苦しみながら幸せな時間を過ごせてはいた。

 そんなある日のこと。私の父が工場で働いていた際に怪我をしてしまった。その時、血の色が緑色だと知られ、私たちの正体が異星人であることがばれてしまった。父は工場の同僚たちから敵視され、家に逃げ帰った。

「このままでは私たちは確実に殺される。ベリオ、お前だけでも逃げるんだ。」

「えっ?どうして…」

「あなただけでも逃げなさい!家の中にいてはだめ!宇宙船なら安全だから早く!」

両親に言われ、私は人気のない場所へと身を隠し、宇宙船を呼び出そうとした。宇宙船を呼び出すことに成功し、宇宙船に乗り込んだ私は両親の姿をモニターに映し出した。

「皆さん、お気持ちはわかりますが、我々は地球侵略などといったことが目的で地球に来たわけではないんです!」

「そうです。私たちは平和な暮らしを求めているだけなんです!」

私の両親は必死に地球人を説得していた。なのに、地球人たちはそんな両親を撃ち殺した。「父さん…母さん……嘘だろ……地球人ども…なんてことを…!」

その後、私は宇宙へと旅立ち、強くなってから地球人に復讐することを決意した。




 ベリオの過去を知ったバンたちは返す言葉が見つからなかった。

「おわかりいただけたかな?」

「君の過去は分かった。確かにこれは…地球人が悪い。」

「ちょっとバン!」

美月が口を挟むが、バンは何も言わない。

「今からこの星から全人類を滅ぼし、ラピス人の第二の故郷とする…!」

「待て!君の両親がそんなことを望んでいたのか?」

「なんだと!」

バンの言葉にベリオは動揺する。

「お前の両親は平和を望んでいたのではないのか?」

「そうよ!確かに地球人にも責任はあるけど、こんな事したらお父さんもお母さんも悲しんじゃうよ!」

「…黙れ…!お前たちに…私の悲しみなどわかってたまるか!」

「この星には平和を求めている人々がたくさんいるから、よせ!」

バンと美月は説得を続けるが、ベリオの怒りは収まる気配はない。その時、ベリオの腹から音がなった。

「…しまった…私としたことが…食料が…」

その音を聞いた美月が持っていたバッグから弁当箱を取り出した。

「あの…これ…食べていいから…」

「そんなもの必要ない!宇宙船に食糧があるからな!」

「遠慮しないで!地球の食べ物だっておいしいんだから!」

それを聞いたベリオは黙り始めた。そういえば地球に移り住んでから惑星ミクルラから持ってきた食べ物ばかり食べてきたから地球の食べ物などを食べたことが一度もない。

「…地球の食べ物…か…」

ベリオは美月の弁当箱に手を伸ばして弁当を食べ始めた。

「これは…なんて美味しいんだ…!」

ベリオは涙を流した。こんなにおいしいものが地球には存在し、それを料理するのが地球人だとは…!

「どうやら…私は…」

その時、どこからか光弾が飛んできてベリオの右手に直撃した。ベリオは右手を抑えて苦しむ。バンと美月が振り向くと、数人の警察官を連れてきた心の姿があった。

「こいつだ!こいつは地球人を滅ぼそうとしている!気をつけろ!」

「待って!違うの!」

美月が警察たちを説得するが、ベリオはカンカンだ。

「やはり地球人は…復讐するべきだ…!」

ベリオはその場から逃げ去った。バンは心をにらみつけた。

「アンタ、自分が何をしたのかわかっているのか!」

「お前たちに何がわかる?」

美月も怒りを隠せない。

「先輩、何かあったのか気になるんです!話してください!」




 あれは今から一年前。俺は連続殺人で指名手配されていたエイリアンを追っていた。

「待てェ!降伏しろ!」

エイリアンは俺の自宅に逃げ込んだ。そこには俺の両親と妹がいた。

「武器を今すぐに捨てれば家族は助けてやる!」

俺はそいつの言われた通り、武器を捨てて家族を自由にするように言ったが、奴は約束を守らずに俺の家族を殺した。その後、俺はそのエイリアンを捕まえて殺害した。




 先輩の過去を知ったバンと美月は驚きを隠せなかった。

「先輩の家族が…エイリアンに殺されていたなんて…」

「あぁ…その時から俺はエイリアンを敵としか認識できなくなった…それだけだ…!奴も殺す。邪魔はするなよ。」

バンが心の肩を掴む。

「そんなことしたら、アンタの家族は悲しむぞ。」

バンの言葉に心は動揺する。

「俺はやるべきことをやろうとしているだけだ!」

「でも、私たちRUSHの目的は地球人と宇宙人が共存する世界を守ることなんですよ!」

美月も割って入った。

「先輩のお気持ちはわかります。けれど、復讐のことを考えていたらますます平和が遠ざかってしまうと私は思います!」

それを聞いた瞬間、心は黙り始めた。そして、無言で膝をつく。

「俺は…俺は…俺はどうしたらいいんだよぉ…!」

心は下を向いて涙を流した。そんな先輩にバンがしゃがみこんで声をかける。

「アンタの家族は平和を愛していたんだろ?もういないけど、先輩の心の中では生きていると俺は思う…」

「俺の…心の中…」

その時だった。

「心…」

誰かが自分を呼んでいる。

「誰だ…?俺を呼んでいるのは…」

「先輩、どうしたんですか?」

「俺にも分からない。先輩だけにしか聞こえていないみたいだ。」

バンの言う通り、これは心にしか聞こえない幻聴のようだ。

「心…聞こえるか…?父さんだ…」

「父さん…どうして…?」

「お前の心の中で生きているんだよ…母さんたちと一緒にな…」

「俺の…心の中で…」

「心…」

今度は女性の声だ。この声は…母さんだ!これはすぐにわかった。

「心…過去にとらわれないで…」

「…母さん……」

「お兄ちゃん…」

妹の声も聞こえた。

「沙代里…お前なのか…」

「お兄ちゃん…私たちのことはいいから…平和を…守って…」

「父さん…母さん…沙代里…俺は……平和を守る…!」




 その頃、バンたちから山の中へ逃げてきたベリオは宇宙船を見上げた。

「こうなったら…町もろとも人間どもを焼き尽くしてやる…!地球は我々ラピス人の物だ!」

その言葉を合図に宇宙船から青い光が伸びてきた。その光を浴びた瞬間、ベリオは宇宙船の中へと消えた。




 宇宙船に乗り込んだベリオは操縦席に座り込むと、ハンドルをレバーのように前に倒した。すると、宇宙船が町の方へと飛んでいき、レーザービームを発射して攻撃を始めた。車や建物などが次から次へと壊されていき、町中に火の手が上がる。

「フハハハハハ!我が家族を殺害した暴力的な地球人よ、地獄に落ち、罪を償うがいい!」

ベリオは宇宙船のハンドルに着いた青いボタンを押した。すると、収納されていた手足が伸びて円盤からヒューマノイドタイプのロボットに変形した。

「フフフ…ここからが本番だ…!」




 バンと美月、心が気づいたころには町は廃墟のようになっていた。ビルや家などの建物や車や電車などの乗り物が壊され、火の手が上がっている。

「こんなことになるとは……俺のせいだ…」

心は自分を責めるように膝をついた。だが、今はそれどころではない。今すぐにベリオを止めなくてはこの星に住む多くの命が危ない!

「先輩、落ち込んでいる場合でじゃありませんよ。」

「そうだ。奴を止めるという目的はアンタだけじゃない。俺たちも一緒だ!」

「あぁ。みんな、すまない…!」




 早速作戦会議が始まった。

「奴は宇宙船が変形したロボットに乗っている。まずはそれを止めないとだな。」

バンの言葉に二人が頷いた。

「俺がロボットの注意をひく。その間にバンはロボットに乗り込んでベリオを説得を頼む。」

「わかった。」 

「美月、君はまだ町にいる人々の避難を頼む。非難が終了次第、援護してくれ。」

「はい!」




 町ではベリオのロボットが破壊活動を行っていた。

「誰か助けてくれぇ!」

「わあぁぁ!」

「キャアァァ!」

ロボットによる攻撃に人々は逃げ惑うことしかできない。

「フフフ…家族を殺した人間どもがクズみたいだな…!」

腕からミサイルを発射しようとした瞬間、どこからかレーザーが飛んできてロボットの左腕に命中した。

「な、なんだ!」

突然来た謎の攻撃に対し、ベリオの表情が驚きに変わる。

「そこまでだ!これ以上罪を重ねるのはやめろ!」

「関係ない人たちを巻き込むな!俺たちが相手だ!」

「誰だ!」

振り向くと、光線銃を持ったバンと心が走ってくるのが見える。

「おのれぇ、RUSHどもめ…!」

ベリオの操作により、ロボットの鉄拳が振り下ろされる。バンと心は攻撃から走って逃げる。




 バンと心がベリオのロボットと戦っている間に、美月は逃げ遅れた人々を避難させていた。

「皆さん、急いで地下に逃げてください!あちらに地下へつながる階段がありますので早く!」

美月の指示に従い、人々が地下へとつながる階段へと向かっていく。その時、一人の女の子が美月の目に入った。女の子は一人でしゃがみこんで泣いている。

「うえーん!パパぁ!ママぁ!怖いよぉぉ!」

美月が急いで駆け寄って声を掛ける。

「大丈夫だから一緒に逃げよう!」

「でも、怖いよぉ!」

その時、ベリオのロボットの鉄拳が直撃し、ビルの破片が降ってくる。

「危ない!」

美月は女の子を抱きしめ、覆いかぶさろうとした時、バンが光線銃からレーザーを発射して破片を弾き飛ばした。

「ここは危険だ!急いで逃げろ!」

「うん。ありがとう!」

美月は女の子を抱き上げて地下へとつながる階段を目指して走り出した。




 ベリオが操縦するロボットの攻撃でバンはなかなか乗り込めない。

「くっそぉ…ロボットに乗り込んでベリオを説得したいのに…このままでは説得できない…。それどころか乗り込むことすらできない…!どうしたらいいんだ…?」

その時、心が攻撃を避けながらささやいた。

「奴の注意は俺が引く。その間にお前は乗り込むんだ。」

「わかった。先輩、気をつけてくれ!」

「ああ。お前の方こそ気づかれないように気をつけてくれよ!」




 女の子を抱いた状態で美月は地下へとたどり着いた。そこへ、男性と女性が涙を浮かべて駆け寄ってきた。どうやら女の子の両親のようだ。

「パパ!ママ!」

「見つかったみたいね。よかったよかった!」

「さゆり、よかった!」

「僕たちの娘を助けてくださり、ありがとうございました!」

「いえいえ。とんでもないです。」

美月がバンたちのもとへ戻ろうとした時、母からさゆりと呼ばれた女の子が大声で言った。

「お姉さん、ありがとう!頑張って!」

「うん。頑張るからお利口にしててね!」

美月は笑顔で答えると、階段を駆け上がっていった。あの子のためにも、平和のためにも、ベリオを改心させなくては…!




 ベリオのロボットに向けて心は手を叩く。

「こっちだこっちだこっち!お前の相手は俺だ!」

「こいつぅ…!ちょこまかと…!」

ベリオは後ろからこそこそと近づいているバンの存在に気づかなかった。

(よし…今だ…!)

バンがロボットの右足に飛び移り、登り始めた。そして、後頭部にハッチがあることに気づいた。

(ここが…出入口なのか…?)

次の瞬間、ロボット全体が揺れてバンは落ちそうになった。

「こんな…こんなところで…やられるかよぉ…!」

バンはハッチからコックピットに入っていった。その瞬間、ベリオが乗ったロボットの動きが止まった。どうやらバンが侵入することに成功し、話し合いが始まったに違いない。そこへ、美月が駆け寄ってきて心と合流した。

「先輩、人々の避難が完了しました。ロボットの中への潜入の方はどうなのですか?」

「潜入は成功したみたいだ。あとはバンに託そう。」

「わかりました。」

心は後輩とベリオが乗っているロボットを見つめた。

(バン…頼むぞ…!)




 ロボットのコックピットではバンがベリオと話し合っていた。

「ベリオ、お前の目的は復讐だということは分かっている。でも、そんなことをお前の両親が望んでいるわけじゃないだろ?」

「うるさい!地球人は所詮、自分と異なるものだとわかった瞬間から敵だと判断して牙をむく愚かな生き物だ!私も…私の父も母も…平和を望んでいるのに…!」

バンは返す言葉が見つからなかった。その時、誰かがロボットに乗ってきた。心と美月だ。

「バン、勝手なことをしてすまない。俺もベリオに伝えなくてはならないことがあってきた。」

心はベリオに向き直った。

「ベリオ、先程は攻撃なんかしてすまなかった。俺も宇宙人に家族を殺されたことがあった。その時から宇宙人を憎むようになったけど、家族は平和を望んでいたことに気づいた。だから、俺が言える義理じゃないのは分かっているけど…復讐は平和から遠ざかってしまうからやめてほしい…」

「………それが……どうしたぁぁ!」

ベリオがバンを殴り倒して光線銃を奪った次の瞬間だった。

「ベリオ…!」

誰かの声が聞こえる。バンたちもその声に耳を傾けた。どうやらこの声はバンたちにも聞こえているようだ。

「………誰だ……………私を呼んでいるのは………誰だ…!」

「ベリオ…!」

また声が聞こえた。一体誰なんだろう?バンたちと周辺を見回すが、声の主はどこにも見つからない。

「まさか……私の両親なのか……?」

ベリオが何者かの気配を感じ、振り向いた。そこには、地球人に拳銃で撃たれて殺害されたはずのベリオの両親の姿があった。だが、様子がおかしい。なぜか全身が青白い光で覆われているからだ。

「父さん…母さん…なのか…?どうして…?」

ベリオの両親の亡霊はバンや美月、心にも見えている。

「父さんと母さんは確かに地球人に殺された。だが、今は亡霊となってお前を見守っている。」

「亡霊…?」

「そうよ。あなたが私たちを殺害した地球人に復讐をしようと町を破壊しているのも見ていたわよ。」

そこから、両親の口調が厳しくなった。

「なぜ地球人を殺そうとするんだ?」

「決まっているじゃないか!父さんと母さんを殺害したんだぞ!誰よりも平和を望んでいたのに…自分たちと違うからという理由で…!」

「ベリオ、復讐したいのはわかるけど、父さんや母さんが望んでいるのは平和なのよ!」

「でも…私は…」

「復讐なんかして父さんや母さんが喜ぶと思うか?過去にとらわれて復讐を誓っているようならいつまで経っても平和なんて訪れないぞ!」

そこへ、心が割って入った。

「俺も同じだった。けれど、平和を望んでいる多くの命だって存在する。平和を求める罪のない命を奪ったって平和な時代が来るわけがない。だから、地球人への憎しみを捨ててくれないか…?」




 ベリオはその場で膝をつき、過去を思い出していた。原因不明の巨大隕石が落下してきたことで故郷の惑星ミクルラが崩壊した。そして、平和に暮らせる居場所を求めて地球にやってきたが、地球での新しい生活を始めてしばらくしてから、一部の地球人に自分たちの正体が宇宙人であることを知られ、その地球人に殺害されてしまった。それから復讐のことばかり考えて生きてきたが、両親が望んでいたのは復讐なんかではなく、平和だった。

「私は…なんてことを…死んだ家族は……平和を望んでいたのに………」

涙を流すベリオに対し、ベリオの両親は慰めるようにしゃがみこんだ。バンたちはそんな家族を見つめることしかできなかった。




 ベリオは立ち上がると、両親の亡霊やバンたちRUSHのメンバーを申し訳なさそうに見つめた。

「みんな、本当に申し訳なかった!平和を望んでいる多くの命が存在するというのに…私は…」

「もういいよ。そんなことより、良かったら私たちと同じRUSHのメンバーにならない?」

美月は笑顔で誘った。バンも賛同する。

「確かに。地球人と宇宙人が共存する平和な地球を守ることが目的だからちょうどいいと俺も思う。」

心もうなずく。

「そうか…ありがとう…。けれど、少し考える時間が欲しい…」

「もちろんだ。決まり次第俺たちに報告しに来てくれよ!」

心が優しく声をかける。

「みんな…ありがとう…」

ベリオの両親も優しい笑顔を向ける。

「ベリオ、父さんたちは天国に戻る。」

「母さんたちはこれからも永遠にあなたを見守っているからね。」

「ああ…。ありがとう…」

ベリオの両親が青白い光に包まれ、徐々に体が浮かび上がっていき、やがて消滅した。




 それから数日が経った。バンたちは本部にいた。

「ねえバン、あれからベリオから連絡とか報告とかがないね?」

「言われてみれば…というかアイツと会ってすらいないな。」

近くを歩いていた心が後輩たちの話に割って入る。

「しかもどこにいるのかわからないもんな。アイツ、今どうしているんだろう…」

その時、美月が一人の男性とぶつかってしまった。その拍子に二人共倒れこむ。

「美月、大丈夫か?」

「うん。平気平気。」

美月はすぐに立ち上がると、ぶつかった相手に近寄った。

「すみません、大丈夫ですか?…って…あっ…!」

ぶつかった相手を見た美月は驚きのあまり凍りついた。

「どうした…?……!き、君は……!」

バンも心も驚いた。なんと、美月とぶつかった相手は数日前に地球人に復讐をしようとした惑星ミクルラ出身のラピス人・ベリオだった。

「ベリオ、どうしてここに…?」

「今日から私も…このRUSHのメンバーとして活動することが決定した。」

「そうだったのか…!」

新メンバーとしてRUSHに加入したベリオはバンたちに笑みを向けた。そんなベリオに対し、バンたちも見つめながら微笑み返す。

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