第16話 悪役は眠る、そして起きる

「何処だここって、体が痛えええ!?」

「愁!」

「おお、父さん。腹減った」

「最初に言う言葉がそれか」

「あーそっか、俺気絶してたんか」

「ああ。話は全て聞いたぞ。本当に別人の様になったな」

「あはは、そうだろう?」


だって別人なんだもん。


「お兄ちゃん!」

「あ、妹」


妹が来たって事は〜?


「愁ちゃん!」

「よお、母さん。俺って何日間気絶してたんだ?」

「三週間だな」

「エグッ!? って事は〜?」

「宿泊学習は過ぎただろうな」

「クソおおぉ!?」


楽しみにしてたのに……。


「ほら、宿泊学習の写真」

「やめろ見せるな、悲しくなる」


自慢しやがって……にしても体凄え痛いな。


「少し今の愁の体は壊れかけって感じだ」

「怖ッ!? どう言う事!?」

「安心しろ、ちゃんと治る」

「ならいいか……」


壊れかけってなんだ壊れかけって。まあ死ななければ安いもんだ。


「愁!」

「なんだ、キアか」

「愁君!」

「おお!! 蓮!」

「なんか僕との対応の差酷くない……?」


いやぁ、主人公が来てくれるのは嬉しいな。


「あ、父さん、なんで体がこんな痛いんだ?」

「魔力を管理する器が上限を突破したせいで体は壊れかけていたんだ」

「やっぱりかよ」


にしても、なんであの魔法使えたんだろうな? 急にパッと頭に浮かんだ魔法陣だった。だけどもう使えそうにはないや。


「とりあえず腹が減った」

「ほい、リンゴだ」

「ありがとう父さん。あ、そうだ、キア、あの子はどうなった?」

「無事だよ、今は家にいる」

「了解。会いに行かないとな。全治どれくらいかわかるか? 父さん」


「魔法と言うものは素晴らしい。なんとな、一週間だ」

「魔力器限界突破したのにそんな早く治るのか……」

「なんで魔力の器が壊れていたんだ?」

「簡単にいうと、魔力を吸う魔法を使い、魔力吸い過ぎて倒れた」

「魔力を吸う?」


「輪廻家の息子さんと死闘を繰り広げた」

「輪廻家の息子……?」

「簡単に言うと、人を1人殺してしまった」

「ゔえっ…?」


いやだがあれは仕方ないだろ。


「愁のお父さん、あれは仕方ないよ。だって殺さないと殺される状況だったんだよ?」

「確か天使族を助けるために戦ったんだよな?」

「ああ、そして世界魔法とかいうやつ使ってきてな……」

「世界魔法か。聞いた事があるぞ」

「そうなの?」


何故知ってるのだろうか?


「それじゃ、父さん達はもう帰るぞ」

「うん、またな」


妹、母、父は帰って行った。


「愁君、輪廻って悪い人だったの?」

「まあな、だが蓮のお陰で人を助けれたぜ」

「でも僕のせいで愁君怪我してるでしょ?」

「いや、蓮のせいじゃないぞ。あれは避けようのない未来だ。どちらかと言うとキアが悪い」


「また僕だ!? なんでここまで差が出来てるの!?」

「実際お前が俺に頼み事とかするから助ける事になったんだろうが」

「仕方ないじゃーん」


何が仕方ねえんだよ……。


「愁はどうやって輪廻を倒したの?」

「あー、何て言うんだろうな、頭の中に魔法陣と魔法名が出てきて、それを使って、相手の魔法を消して、俺の魔法にして、放ったって感じだ」

「ごめん、よくわからない」

「僕もわからなかったよ……」

「あははっ、そうか。まあ仕方ない、俺もよくわかってねえんだよな。まあ奇跡に奇跡が重なって出来た魔法って事だ」


「なるほど」

「なるほどっ」

「お前らわかってねえだろ」

「「うん」」


だろうな。

退院出来るまで安静に眠っとくか〜。




「懐かしい〜!!」


無事退院し学園に来ていた。だが皆んな俺を避ける。『喧嘩で病院送りにされたらしいよ』と声が聞こえた。……なんでだぁ!? ただの喧嘩で魔力器が壊れかける訳がねえだろ、話聞いてんのか?


「愁、頼まれた服出来たわよ」

「おお、サンキュー。ってかこの時間に持ってきたのかよ」

「なに? 悪い?」

「間に合うかな……走れえぇい!!」


家までダッシュ………家に服を置き…………学園に着く。時間は……8時31…だと……!?


「気持ちよく学園に行くつもりがっ……!?」


やはり悪役顔は遅刻が多い様だ……。






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