第14話 悪役、情報を得る

「ここだ」

「うわっなんもねえ」

「父さんは妹の家に帰るぞ」

「あれ? 母さんはどうした?」

「家にいる。愁もやる事が終わったら家に来い、母さんが待ってるぞ」


「わかった。キア、一応魔法で探してみてくれ」

「うん……いないね」

「そうか、とりあえず俺はここら辺を探すか」

「僕も少し探すよ」

「遠くにはいくなよ」

「わかってるって」


さて、探さないと。見た感じ何もないな。


「もっと探すか」




「やっぱり何もないかな……」


そう呟いた瞬間、ある物が目に入った。地面に埋まっているが、先っちょが見えていた。


「ノート……? いや、日記って書いてあるな」


俺は日記を読んでみる。



2XXX年 6月14日


この日から日記を書くことにした。我の名前はシェリ。輪廻家の当主に召喚された悪魔。正直言って生活は楽ではなく、辛かった。我と同じ悪魔と天使もいた。その中で仲が良くなったのはキアちゃんもシルフちゃんだった。日記は慣れていないから今日はここまでにしておこう。



綺麗な字で日記は書かれていた。情報は手に入れれたが、位置の情報ではない。続きを見てみよう。



6月28日


我達は番号で呼ばれていた。No.24が我だ。キアちゃんがNo.30、シルフちゃんはNo.21だった。我達は実験に参加させられる様だった。怖い、ただそれだけだった。呼ばれたから今日はここまでにしておく。



実験……?



7月19日


1人の悪魔が死んでしまった。実験のせいだ、我達は輪廻が許せない。だが契約主に逆らう事は出来なかった。もう1人の悪魔が今は実験をしている。実験中の意識はない、だけど目が覚めると痛みが襲ってくる。体には傷が沢山あった。今日の気分はあまり良くない、ここまでにしておく。



「死んだ……だと……?」


そこまでしていたのか? だとしらたなんの実験だ。痛みが襲う、傷が残る……まだわからない。


「あれ……ここら辺のページがない。……あ、ここから見える」



2XXX年 8月28日


実験が始まりもう16年。私達の身体はボロボロだった。残ったのは我とキアちゃんとシルフちゃん、エリューちゃんだけだった。我達は人間が嫌いになった。キアちゃんだけは元気だった、でもその元気は、我達を元気にさせるために無理している様に見えた。天使や悪魔を召喚する魔法、誰が作ったのだろうか? いや、召喚じゃない。生物を『作る』魔法なんて、誰が……。



そこで途切れていた。

作る、とはどう言う事だ? 続きを読むのが段々と怖くなってきた、だがこれも皆んなを救うため。俺は続きを読む。



2XXX年 7月1日


災害が……た。もう…は…だろう。最後の最後に日…を残しておく。……がいる場所は勇…の…。この日記を見た……いるのなら…を救ってくれ。これは我の最初で最後の願い事だ。



「ッ……」


文字が見えなくなっていた。


「愁君ー、なんか見つけた?」

「あっ、な、何もなかったぞ」


隠す必要なんてないのに、反射的に鞄に入れてしまった。

考えろ、見えない所を繋げるんだ。


災害が起きた。もう我は死ぬだろう。最後の最後に日記を残しておく。我達がいる場所は勇…の…。どこだ、勇から始まる場所は……どこだ!


「地図、クソ! キア、家に戻るぞ!」

「えっ?」


地図が必要だ。勇から始まる場所……。


「もしかしてっ! キア! 家に戻って地図を取ってきてくれ!」

「え? わ、わかった」


勇者の像だ! 昔の英雄、勇者の像がそこにある。


「狂ってんなぁ、輪廻ってのはよぉ!」


本当に、頭がおかしい。同じ人間として疑ってしまう。


「退いてくれ!」


こういう時に限って人が混んでいる。

魔法を使って一気に行くしかない。俺は道路に出る。


「跳ね返す事が出来るのなら!

 魔力よ、魔法を跳ね返せ!〈魔力鏡リフレクター〉! 

魔力よ、敵を射抜け! 〈魔力弾マナバレット〉!」


跳ね返った弾丸は自分に返ってくる。魔力弾に当たった俺は空高くぶっ飛ばされる。

股間に当たり痛かったのは内緒だ。


「ふぉぉぉ!? 危ねええ!?」


身体が痛いが時間短縮になる。人混みを抜けた俺はただただ走る。契約主の位置はわかるはずだからキアは俺に追いつくはずだ。

勇者の像。今はもう欠けているだろう。元々は人が栄えていた人気スポットだった。


「後は山を登れ!」


普通に山登りはキツいぞ……?


「あー、足が痛えな」


だかどうでもいい。また同じ方法で自分を吹っ飛ばし山を登る。


「もう少し、もう少しでっ!」


そうして見えた。


「いた……!」


意識がなく眠っている天使。だけど、1人だけだった。


「よく来たね」

「……おいおい、そりゃねえよ」


最悪な結末だ。


「さあ、争奪戦。殺し合いを始めようか」






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