第12話 悪役の魔法は最底辺

「余裕のS!」


ぶいっというポーズをしてくるキア。そう、寮のクラス決めだった。


「余裕のG!」


だが俺は最底辺。何が余裕なのだろうか? Gを取るのは余裕だが、気持ちの余裕は全然ない。


「まあ無属性なら仕方ないよね」

「俺だけ皆んなと反対なんだけど? 何故お前らは俺を置いてSに行ったんだ」

「君が弱いんだよ」

「ごふっ」


キアからの言葉のダメージだ。


「君は早く条件をクリアしないとね」

「条件ってなんなんだよぉ!?」

「火に関係する条件じゃない?」

「体を燃やしながら魔法を撃つとか?」

「多分というか、絶対違うよ」

「だよな」


じゃあなんだろうな……。熱中症……? これもねえか。わからないな。


「愁君〜、ランクどうだった?」

「一番下でございますよ」

「え、そうなの?」

「蓮はどうなんだ?」

「Sっ!」

「おお、キアなら腹立つが蓮なら全然大丈夫だな」

「対応の差がっ!?」


「キアちゃんもSなんだ、流石だね」

「愁、後で来てよ」

「お前のぶいっポーズは無性に腹立つんだ仕方ないだろ」

「これはわからせるしかないね」

「人に魔法を撃つ事は禁止されてるぞ」


実際コイツのピースは腹立つ、何故だろうな。主人公はいいんだよ、可愛いから。

だがキア、お前はダメだ。キアも顔はありえんほど可愛いんだが……なんか腹立つ。


「櫂ちゃんも来た。ランクはどうだった?」

「Sよ」

「僕と同じだねっ」


まあ全員Sになることは知ってるので。これ以上皆んなのSという言葉を聞いて心のダメージを受ける前に去ろう。




「コーヒーだよなぁ」


やはりコーヒーが正義。インスタントだがな。


「それとなぜお前はここにいる」

「僕? そりゃ契約主と近くにいるのは当たり前でしょ」

「いや、離れててもいいんだから部屋に戻っとけよ」


「暇だから」

「妹の所行けよ」

「妹ちゃんは今友達と遊んでるから」

「クソがよ」

「その言葉は違くない!?」


なんでコイツいるんだよ。まあいいか。


「コーヒーいるか?」

「飲めるかな?」

「飲んでみろ」


作って……キアに渡す。


「意外と良いかも」

「やはりな」


コーヒーが最強だ。


「少し輪廻家の話をしようか。私と他に、天使族が輪廻家に囚われているんだよね」

「急にヤバいな、どう言うことだ?」

「天使が私含め4人、悪魔が4人、皆んな囚われて、その中で5人死んじゃったの」


「辛いな。悪魔もいるのか」

「悪魔は別に悪い子じゃないよ? 私の目的は生きてる皆んなと会う事かな〜」

「俺と話す暇があるのなら探しに行けよ」


「あのね、そんな簡単に探せたら苦労しないんだよ」

「どう言う事だ?」

「輪廻の家自体は崩壊したんだろうけど、そこにいた人間は生きてるの」


「なるほどな」

「人に魔法を放つのはダメだからね、見つかったら君に迷惑が掛かるでしょ?」

「言ってる事は嬉しいんだけどさ……お前が探せって顔してるよな」

「……ダメ?」

「なぁんで俺は頼まれる事が多いんだ? そんな役割じゃねえのにな」


そう、悪役だ、なんでも屋ではない。妹に2回お願い事され、櫂からは確か1回、キアからも1回、んで沙織からも1回……5回も頼まれてんの!?


「まあ探してやるよ」

「流石だね。なんだかんだ言って受けてくれる。顔とは反対に優しいんだね」

「顔は仕方ないだろ? 俺もなりたくてこんな顔になった訳じゃないんだし」


「あはは、可哀想」

「可哀想じゃねえよ。あ、忘れてたが、お前の元々着てた服を今友達に作ってもらってるから。多分魔法使ってるから早く終わるんじゃないかな?」

「おお、ありがとう!」

「櫂にお礼を言え」


んー、さっきの話に戻るけど……悪魔と天使か。まずは情報を集めないとな。


「輪廻家……実力は世界でも上位……今んとこ、何もわかんねえな。とりあえず輪廻さんたちの家があった場所に行ってみるか」


確か災害で壊されていたはずだ。あの災害はヤバかったらしいからな。


ブーとスマホが振動する。確認すると主人公からのメールだった。


『愁君と会いたいって言ってるクラスメイトがいるけど……名前は『輪廻りんね』、と言ってたよ』

「……はぁ!?」

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