第11話 悪役の学園生活は殺伐としている

「それで、話って何?」

「櫂って服作る事は出来るか?」

「服? まあ得意かな」

「一人の服作って欲しいんだが……」

「アタシのメリットは?」

「そう言うと思ったぜ。願い事を聞くぞ」


「本当!? ならさっ、蓮君の家を特定してよっ!」

「は? え? それくらい聞けばいいだろ」

「いや、蓮君がさ、ごめん、恥ずかしくて教えられないとか言ってたんだよ。ストーカーしようとしたけど、蓮君結構道を複雑に通るからさ、わからなくって」

「そうか、まあ俺がストーカーしてみるよ。はい、これが作って欲しい服」


写真を見せる。


「後で送っておいてよ。凄い服だね、趣味?」

「俺の服じゃないわい! 天使の服だよ」

「天使……? ああ、あの子ね、最近学園に来た子でしょ?」

「ああ、そうだ」

「わかった、作ってみるよ」

「そんじゃーな」




「やってる事確実にやべえな」


怖い顔した人間が隠れながら一人の生徒の後ろを追っています。おっ、急に路地裏行ったぞ! 追え追え!


「確かにくねくねしているが、この耳から逃れる事は出来ない」


足音を聞きつつ迷路の様な道を進む。


ゲームでもそうだったな、家だけはわからなかったんだよ。主人公の家への帰り道だけは映されなかった。


「出たっ!……え?……まさか、まさな?」


目の前には館があった。


「主人公おるうううぅぅ!?」


入り口に主人公がいた。写真を5枚ほど撮る。


『蓮の家わかったぞ』

『ほんとっ!? どこどこどこ!?』


【館の写真】を送る。


『……何の冗談?』

『よく見てみろ、入口にいる人物を』

『蓮君!?』

『朗報か悲報、どちらかわからんがわかった事は蓮は超お金持ちだ』

『こ、これは意外だ……』

『とりあえず位置だけ教えるぞ』

『お願いね』




「ヤバすぎだろ」

「これは少しおかしいよね」

「何故コイツらは平然とした顔が出来るんだ?」

「慣れてるのかな……?」

「一応同級生なんだがな」


バリィィン! カンカン! ボォォォン !


ほら、また鳴った、さっきから下の階で戦闘が起きてんだよ、それなのに皆んな楽しそうに会話をしている。


「殺伐としてるね」

「それが普通な世界なんだろうよ。そろそろ宿泊学習だな」

「え? ああ、確かにそうだね」

「確か海に行くんだっけな?」


学園側のイベントだ。宿泊学習だな。


「楽しみだねっ!」

「タノシミダナー」

「な、なんでそんな棒読みなの?」


そりゃあだってな、そこで襲撃イベントがあるんだもん、楽しく思える訳がねえよ。


「あ、そうだ。すまん、少し席を外すな」

「うん」


俺は学園長室まで行く。


コンコンッと扉を鳴らす。名前を伝えると「どうぞ」と返ってきたので入る。


「何の用だい?」

「学園長、そろそろ宿泊学習があるでしょう?」

「うむ、そうだね」

「宿泊学習に……」




学園長からOKも出たし、安心して楽しめるな。


「明らかにヤバイ魔法があるぞっ!?」


魔法書を見てて気がついた。エグい魔法だ。


「詠唱は……まあ4秒くらいか、属性は闇。むむっ? 無属性にもエグいのがあるじゃあないか」


消費魔力は5万か……俺の魔力ってどれくらいだ?


「ほぉ……これは使えるな」


最強の壁だな。俺のやり方次第では主人公の必殺技も防ぐ事が出来るのか。


「いや、無属性普通に強くないか? この無属性魔法はクソ強えぞ」


そう一人で魔法書を見ていると、足音が近づいてくる。


「だれ……って、え?」


沙織だった……。


「何か用?」

「そうです」

「……なに?」

「ちょっと手伝って欲しいんです」

「……なんか、そんな気はしてたな。蓮関係だろ?」

「はい、そうですね」

「ちなみに断ったら……?」

「わかりますよね?」

「わかりたくないですね」


やめてくれ、その顔。悪役に拒否権は存在しないのか?


「とりあえず、何すればいいんだ?」

「簡単ですよ、数分でいいのであの櫂さんを蓮君から離してください」

「なるほどね……やりたくねえな」

「何か言いました?」

「何も無いですよ」


だってよ、櫂を蓮から引き離す。そしてその間にコイツが蓮をどこに誘う、で最終的には櫂が俺に不満を抱く……。


あれ、俺の逃げ道は……? 断るのは怖く、櫂から何言われるかもわからねえ……。


「やってみるよ。だけど無理な時は無理だからな?」

「その場合は小一時間叱るだけです」

「理不尽だろ!? その小一時間を蓮に使えよ!」

「貴方ぐらいしか愚痴れないんです」

「俺の使い方間違ってるぞ。俺というか人の使い方間違ってるな」


なんかゲームと性格変わってねえか? なに? 俺のせいか?


「櫂を引き離すのは何時だ?」

「放課後にお願いね」

「はいよ。今日蓮を誘うんだろ? それは家にか?」

「私の家に誘おうとしてます」

「ならいいか」


まだ蓮の家のルート教えてないし、今日教えるか。


『櫂、放課後、蓮の家の道教えるけど、時間あるか?』


と送る。10秒くらいで返事は返ってきた。


『やっと教えてくれるんだね、放課後なら大丈夫』

『なら門で集合な』

『わかった』


よし、引き離し完了。


「ほら、これでいいだろ?」


やりとりを見せる。


「ありがとうございます。それでは私は蓮君のところに行きますね」

「ああ、頑張れよー」


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