第10話 悪役の戦い方の誕生

「寮が始まるな」

「だねっ、どう決まるんだろう?」

「実力だな」

「実力?」

「ああ、寮のクラスが分けられる前に魔力測定、魔法の威力の測定、実力でクラスが分けられる……ってあああ!?」

「どど、どうしたのっ!?」


魔法の……威力測定……最悪だ、低ランクが決まった様なものじゃないか。


「すまねえ俺は低ランクに行く様だ」

「は、本当にどうしたの?」

「はあ〜、なんでもねえや。あ、そうだ、俺って何の武器使った方がいいかな?」

「愁君なら拳でも良いと思うけどね」

「蹴りや拳か……」

「愁君は体鍛えてる様だし、良いと思うよ」


残念、俺自身は鍛えてないんだ。


「蓮君!……とアンタもいたのね」


少しだけ対応の差が気になるがどうでもいいだろう。


「どうしたの?」

「蓮君見かけたから来たの」


嘘言ってるな〜。さっきから教室の外にいたの知ってるけどな。まあ蓮は気付いてないだろう。


「蓮君と……貴方達は?」


お、次に来たのは2番目に蓮に恋した人間だった。名前は花咲沙織はなさきしおりだ。まあ櫂よりは真面目な奴だろう。


「こっちは櫂ちゃんでこっちは愁君だよ」

「愁さんと櫂さんですか」

「愁君達、この人は沙織ちゃん、僕の友達だよ」


今櫂と沙織が睨み合っている。俺は皆んなを応援するぞっ。


「な、なんで二人とも睨み合ってるの……?」

「蓮、邪魔をするな、あれは女の戦いだ」

「お、女の戦い?」

「ああ、お前は感情に気づくだけでいいんだ。とりあえず俺は邪魔者だから去るぞ、頑張れよっ!」


俺は遠くから観察するとしよう。それが悪役の出来る最善の一手だ。


「頑張れよ〜」




「全然死なねええ!?」

「グボァォォ!!」

「許して〜!?」


ダンジョンに行ったが魔法が弱すぎて何も倒せない。しかも顔を真っ赤に怒らせたゴブリンに追われていた。


「ああクソッ! もうやるしかねえ!」


俺には鍛えられた体があるんだ。


「魔力よ、敵を射抜け! 《魔力弾マナバレット》」


ああ、やっぱりそうなんだ。俺の戦い方は決定していた。


「壁にぶつけるしかねえよなぁ!?」


そこからは相手が動かなくなるまで壁にぶつけ続けた。……やがてゴブリンがピクリとも動かなくなる。


「ぜえ、はあ、ひぃ、疲れた。もう帰ろ、俺にダンジョンは早いや」


キアのオリジナル魔法調べとくか。無属性魔法に通常魔法は存在しない、だから派生魔法かオリジナル魔法しかだめだ。


「……勘弁して下さいよ、ゴブリンさん」


追加で3体ほどのゴブリン。


「ったく、魔力よ、周りの敵を吹き飛ばせ! 《衝撃波ショックウェーブ》!……にーげよっ」

「ゴグゥゥゥ!!!」


待てええ!! という顔をしているが死にたくないので家まで走る。




「キアー、なんか無属性魔法で使える魔法ない?」

「自分で調べればいいじゃん」

「そうなるよな」


本を開く。無属性魔法……を調べて……。


「対人戦は強めだな。これは……使えなくはない」


5つほど使えそうなものを発見した。


『我が敵の魔力を乱せ! 《魔力妨害マナジャミング》!』


敵の魔力の流れを一時的に乱す、魔法が使えなくなったりする。


『魔力よ、出よ! 《魔力放出マナブリーズ》』


この簡単で短い魔法は自分の魔力を体の外に出す。使い道は魔法の魔力感知を妨害するぐらいだ。


他もあるが……まあいいか。


「キア、お前風呂入ってる?」

「……入ってないや」

「俺の布団から離れろ。そして風呂行け」

「はーい」


なんなんだこいつ……。とりあえずキアが風呂上がったら俺が入って寝るか。


「お兄ちゃん、ご飯出来たよ」

「ん、今行く。キアは今風呂だ」

「わかった」


腹が空いてたんだ、タイミングはバッチリだな。流石我が妹だ。


「美味いな……」

「料理には自信があるからね!」


無い胸を張る妹。悲しいなぁ……。


「なんか今失礼な事考えなかった?」

「いやいや、な訳ねえだろ。妹だぞ? 失礼な事考える訳ねえって」

「ほんとに……?」


疑いの目をこちらに向けるな。


「ってかさ、キアの替えの服なくない?」

「あ……お兄ちゃん……」

「こっち向くな!? その目はやめろ!?」

「お願いね」


「クソォ……帰ったらお金下さい……」

「別に良いよ」

「なら行ってくるわ」

「うん、気をつけてね〜」




「ええ、これと同じ服はなかったの?」

「我儘言うな。欲しいなら作れ」

「僕に作れと?」

「無理なら誰かに頼め」


「頼もぉー、誰かいい人はいない?」

「俺、友達少ない」

「あー、確かに。なら自分で探すよ」


確かには少し腹立つな。

櫂服作るの得意だったよな……。交渉してみるか。


『明日の学園、昼に屋上来てくれ、少し話したい事がある』


とだけ送っておく。

さてと、どうなる事やら……。









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