第8話 悪役と主人公の評価
「やっぱり運がいいかもっ」
「急にどうした」
「僕は良い友達を持ったな〜って思ったの」
「櫂の事か?」
「確かに櫂ちゃんもいいけど。愁君も素晴らしいんだよっ!」
「そうか?」
「うん! 面白いし、カッコいいしで……沢山あるんだよ!」
「面白いもカッコいいも自分には当てはまらないと思うけどな」
「いやいや、そんな事ないよ」
「そうか?」
「うん、僕からの評価は五つ星、マックスだよ!」
「上げ過ぎだな」
「逆に、僕の評価ってどれくらいなの?」
「お前さんの評価か……」
★5でもいいんだけど……。
「星4つと半分だな」
「だ、ダメな点ってなに……?」
「そうだな……周りの気持ちに気づいてやれ、出来れば櫂の気持ちにだ」
「もしかして不快にさせてたっ!?」
「いや、そんな事はないぞ、もっと甘酸っぱい気持ちに気づいてやれ」
「甘酸っぱい?」
「そう、甘々な気持ちだ、気づいてやるんだぞ!!」
「少し努力してみるよっ!」
「それでいいんだ」
明日、新たに主人公に恋する人物が現れる。これ阻止してみたらどうなるんだろう……?
「まあ流石にそんな酷い事はしないけどな」
その場合ヒロイン達と主人公が可哀想だ。
「おっ、もうチャイム、そんじゃーな」
「うん、またねっ!」
「ん? ラインが……何々……?」
妹からのメールだった。
『少し友達の家泊まるね。ご飯は冷蔵庫の中に入ってるから温めて食べてね〜』
「はっ!? 友達いたのかよ!?」
『友達いたのかよ。どんな名前の子なんだ?』
とだけ返す。
『えーとね、
「ぶっ!?」
飲んでいたお茶を出しそうになった。いや、出した。
「おっ、おま!? おままままっ!?」
とんでもねえ奴と友達になってやがる。桜木梨花、簡単に言うと実力バケモンだ。流石にキアより強いって事はないだろうけど、キアを除き学園最強の称号は彼女にあるだろう。
『エグい人と友達なったな』
と送る。
『え? どういう事?』
と返ってきた。何も知らねえのかよ……。
『学園のランキング調べろ、その人のヤバさがわかる』
『直接聞いてみるよ』
『まあそっちの方が手っ取り早いな』
そこでラインを終わり俺は家に向かう。
「暇だな……後で主人公とライン交換しておこう」
ってかキアどこ行った?
「キアー?」
適当に家中を探す。そして俺の部屋に入る。
「何してんだお前」
「寝てた」
「人の部屋で寝んな、妹の部屋で寝ろ」
「奈央ちゃんの部屋はいいんだね」
「別にいいと思うがな」
「ならそっちで寝る事にする。少しだけお話しようよ」
「あ? 別にいいが……」
「何か聞きたい事はある?」
「聞きたい事か……輪廻家? だっけ、そことの関係性かな」
「それを聞いちゃうの? まあいいけどさ。元々は僕も普通の天使だったの」
「まあそうだろうな」
「でも、輪廻家に無理矢理召喚されちゃってね、扱いも酷くで呆れてたよ」
「俺も無理矢理召喚したが、その点は怒らないのか?」
「じゃあ聞くけどさ、僕は輪廻家当主と契約してた、じゃあその契約が解かれなかったら?」
「知らん」
「ええ、少しは考えてよ……契約者、僕の主が死ぬまで僕は自由じゃなかったの、そこで君が召喚してくれたから契約と言う呪縛から解き放たれたってわけ」
「へー、色々あったんだな」
「うん、だから君には感謝してるよ」
「あれは偶々詠唱の部分が見えてたからな」
「ベットの下で見つけたんでしょ? なんでなんだろう?」
今考えれば結構おかしいな、ベットの下に知らん魔法書ってのは。
「まあいいだろ、結果はいい方向に進んだんだし」
「それもそうだね〜」
あー、俺もそろそろダンジョン攻略しねえとな……だりぃ……。
「お前がいれば簡単かもな……」
「どうしたの?」
「ダンジョンだよ、攻略面倒だなって」
「それくらい自分でしなよ……」
はぁ、とため息をつき呆れる様な目でこちらを見てくる。
「そんな目で俺を見るな。わかってるよ、自力で頑張るよ」
「それでいいんだよ」
ここはあれだな、主人公使うか。俺だけ後ろにいるだけでほとんど主人公に任せよう。
「とりあえず僕はもう寝るね、おやすみ」
手をひらひらと振り部屋を出ていく。
「俺も寝よう」
「え、え、俺が……?」
「うん、出来るよね?」
今現在、ヒロインから二つの事頼まれていた。
① 主人公の好きな性格、見た目
② 主人公の可愛い顔、カッコいい顔
をラインで送る様にと言われライン交換をした。主人公とは交換済みだ。
「まあ出来ると思うよ」
「ありがとう!」
「アイツは鈍感だからなあ」
「あ、やっぱわかってるね。そう、蓮は鈍感すぎるんだよ、アタシはこんなにもアピールしてるってのに……」
「そろそろ蓮に恋する人間が増えるかもな」
「……」
「ごめんって、そんな怖い顔で睨むな。でもお前さんも可能性を感じてるだろ?」
「うん、最近蓮に絡む女の子が一人いてね」
「ま、頑張れよ、とりあえず俺は今から聞いてみるよ」
「うん、お願いね」
さて、恋愛ストーリーを崩す訳にはいかん。だとしたら……。
「少し時間を置いて、櫂みたいな性格の人って言っとくか、見た目はわからないと言っていた、でいいかな」
よし、じゃあ十分後メール送るか。
『本当!?』
『うん、ほんとほんと、だからお前はこのままで大丈夫だ。両思いかどうかってまではわからん。どんな姿が好きか聞いたけど、そこまではわからないらしい』
『本当に……本当にアタシの様な人がいいって言ってるんだよね……?』
『うん、言ってたぞ』
そこから返答が帰らなくなる。嬉しさで気絶したか?
「うん? あ、愁君ー」
「おっ、主じ……蓮か」
「うん、誰とメールしてたの?」
「お前さんの友達だよ」
「櫂ちゃんの事?」
「ああ、あまり喋らんが、用があるときはって事でな」
「へぇ、仲良くしてるのなら良かったよ!」
眩しい笑顔だ。俺はその顔をパシャッと一枚撮る。
「え、えっと……写真撮ったの?」
「おう、良い顔してんなって思って」
「そ、そうかな……?」
鏡見てこいよ主人公。お前一応主人公だぞ。
「なあ、ぶいってポーズ、そして笑顔を作ってくれ」
「え、ええ!?」
「ほらほら早く」
「わ、わかったよ……」
連続で20枚撮る。
「何がしたかったの?」
「いや、最近写真撮るのにハマっててな」
「僕じゃなくて綺麗な景色でもいいんじゃない?」
「いや、綺麗な景色なら撮ってるぞ」
「そうなの?」
今目の前に輝く笑顔をしていた人間がいるからな。
『おーい』と櫂に送る。『なに?』と返ってきた。
「すまん、少し離れるぞ」
「うん、またね」
屋上を出る。
「よいしょ、写真送ってやるか」
撮った奴は全て送る。
「あ、死んだな」
今頃写真見ながら気絶しているのだろう。
「よーし、戻るか……」
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