第5話 悪役と妹と主人公組

「お前……ハンバーガーとか食うのかよ」

「なに? 悪い?」

「いや、別に悪くはないが予想外って感じだ」

「ええ、前から食べてたでしょ」

「最近記憶力がなくてな」


中身が変わったからな……そりゃ普段の食生活なんて知らねえよ。


「お兄ちゃんは少食だね」

「そうか? 普通だろ、妹が食い過ぎなんだよ」

「妹呼びに戻ってるし……」

「それについてはもう諦めろ、お前か、妹か、マイシスターしか言えねえんだよ」

「最後のは別にいらないでしょ」


食い終わり、お会計を済ませ店を出る。


「次はど……え?」

「どうしたの?」

「い、いや、悪い、なんでもねえや」


主人公がいた、しかもヒロインを連れて。


「あの店行こうよ」

「えっ、あっ、そっちは……わかった」


アイツらにバレない様にフードを深く被る。


「お洋服屋さんか、なんか目当ての服でもあるのか?」

「うん、少なくなってきたから丁度いい奴をね」

「なるほどなぁ」


そう会話をしていると……案の定……。


「うん? あれ、愁君?」

「人違いです」

「人違いじゃないよね! やっぱり愁君だ!」

「蓮君、コイツは誰?」

「僕の友達だよ!」

「この女の子は?」

「知らないけど……愁君の友達?」

「妹だ、結構完璧」

「お兄ちゃんの友達?」

「まぁそうだな」

「へえ、こんな顔が怖いのに友達になってくれたんだね」

「うっさいわい、顔が怖いは余計だ」

「でも事実でしょ?」

「ゔっ、それは……」

「愁君、紹介するね、僕の友達のかいちゃんだよ」

「よろしく」

「うん、よろしくね」


多分俺が主人公に何かしない限り何もされないだろう。


「コイツは俺の妹の砺波奈央となみなおだ」

「よろしくね」

「よろしく」

「よろしくお願いします」

「愁君も服を見にきたの?」

「妹にナンパ防止で連れてこられた」

「ああ……愁君顔怖いもんね」

「結構気にしてるんだ、やめてくれ」

「ごめんね」

「いいさ」

「お兄ちゃん、とりあえず入ろうよ、ここに居ても人の邪魔になるよ?」

「おっ、それもそうだな」


俺達が入り、その後を追う様に主人公組が入ってくる。


「ねぇ、愁でいいかしら?」

「ああ、それでいいぞ」

「ちょっとその子と話してもいい?」

「奈央も偶には女子同士で話してこい」

「うーん、わかった」

「じゃあ愁君は僕と話そうよ」

「ああ、言われなくてもそうするつもりだ」

「好きな食べ物はなに?」

「普通な質問だな」


好きな食べ物か……。


「揚げ物かなぁ……」

「揚げ物ね……メモメモ」

「メモする必要あるか?」

「友達の事はよく知る必要があるからねっ」

「別に好きな物ぐらいメモする必要はねえだろ」

「そう? 僕は必要だと思うけどなぁ」

「まあそこは人それぞれだな」

「だねっ」


ってから服屋だったな、ここ。


「俺は別にまだまだ服あるしいいか」

「僕は少ないから買わないと……」

「一緒に見てやろうか?」

「お願いっ!」

「任せろ」




「何話されたんだ?」

「えっとね〜……言っていいのかなぁ」

「どうせ恋愛系だろ」

「なんでわかったの?」

「なんとなくだ」

「当たりだよ。恋愛のアドバイスが欲しい! って事と、一つの警告されたよ」

「警告……やれる事は全てやってくるなぁ」


出来るだけ恋のライバルを減らそうとしてやがる。うちの妹は誰に恋するんだろうな。予想は主人公だが……どうだろ?


「それとあの……蓮って人の良い所を40個ほど言われた」

「アイツからすればまだまだ少ないんだろうけどな」


多分100箇所くらい言えるんじゃないか?


「とりあえずお買い物を続けよう」

「そうだな」

「次はあそこ行こうよ」

「食材少なかったもんなぁ」

「とりあえず今日は揚げ物を作ってみるよ」

「おっ! マジか、ってかお前そんなのばっか食ってばかりだな。太ってそう」

「………」

「ごめんって、無言で足を振る素振りするのやめてくれ、股間が警報を鳴らしている」

「デリカシーってのがないよ」

「すまんよ、ただ普通に心配なんだよ」

「私は太らない体質だからいいのっ!……多分……」

「多分って聞こえたけどな」

「うっさい!」


色々と問題がありつつも買い物が終了する。


「楽しかったわ、ありがとな」

「別にいいよ。お兄ちゃんのお陰でナンパも来なかったし」

「店員の手がぶるぶる震えてたのは面白かったな」

「一度商品落としそうになってたもんね」

「そんな俺って圧出てるか?」

「うん、バリバリ出てるよ。虎みたい」

「虎……まあこの顔は仕方ない」

「小さい頃からだもんね〜」

「まあな、ってかもうこんな時間か、風呂入って寝ないと」

「それもそうだね、それじゃあまた明日ね」




「お兄ちゃん! 早く起きて!」

「おお、マイシスター、お兄ちゃんまだ眠いからな、後5分で」

「早く起きなさい!」

「へぶっ!?」


俺の防御布団が剥がされる、勿論それに引っ付いていた俺も剥がされ地面に顔面を打った。


「痛え、どんな力してんだよ……ゴリラかよ」

「なに? また蹴って欲しいの?」

「違う違う違う! 起きたから! 起きたから!」

「あっそ、それなら早くご飯食べて学園行ってね」

「酷い妹だぜ……」


朝飯を食い学園へ向かう。さて、俺の学園生活はどうなることやら……。


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