第2話 悪役と主人公
「そうなるよね、知ってた」
やはり俺は周りから避けられる。だが少し不満があった。
『人に暴力を振るうらしいから近づかないほうがいいよ』
『アイツ、金とか奪うらしいぜ?』
などなど、根も葉もない噂を立てられていた。
いや、実際合ってる……? 悪役の設定を思い出してみよう。金奪う……暴力振る……。
「あれぇ? 合ってた」
だがそれはこの悪役であって俺ではないからな……陰口を言われるのはごめんだ。
「お兄ちゃんは相変わらず嫌われてるね」
「……妹!?」
「だから、なんでそんな呼び方なの?」
「いやまあいいだろ。で、なんで俺に話しかけに来た?」
「私も友達いないからさ、別に失う物はなんもないんだよね」
「おお……これが無敵ってやつか」
「本当におかしくなってるよ?」
「気にすんな」
失う物がないほど強い人間はいない。
「てかお前美人なんだし友達くらい作れるだろ」
「美人!?」
「美人だろ、鏡見てこい」
「いや、お兄ちゃんからそんな言葉が出るのは意外で……いつも我儘ばっかりだったのに」
「そんなに酷いか?」
「うん、人を物として見てるもん」
「すまんよ……」
その時の俺は俺じゃないんだ。ぼっち生活は抜けれたな……ぼっちの妹とぼっちの俺、抜けれたけど、この悲しさはまだ残る様だ。
「あ、少し気になったんだけどさ」
「おう、なんでも聞いてみろ」
「闇属性魔法って何が出来るの?」
「そうだなぁ〜……人を弱くしたり、悪夢を見させたり、友達が減る様な事は得意だぞ。後は魂を削ったりとか、ブラックホール作ったりだとかだ」
「最初2つの効果はどうでもいいけど。そんな事も出来るの?」
「あ、今は出来ねえぞ?」
「知ってるよ」
ブラックホールと言っても魔法しか吸収しないがな。
妹には感謝だな〜、学園生活を少しだけは暇なく過ごせそうだ。
「ああ、俺の休み時間がもうなくなる……またな妹よ」
「妹はやめて
「なるほど、
「フルネームじゃなくて奈央!」
「あっ、はい、奈央ね」
「うん、それでいいの」
俺の想像してた性格と違うな……もっと残酷な奴かと思ってた。
そして休み時間は終わる。俺は教室の隅で一人ぼっち怖い顔で空を見つめていた。
「段々と眠くなってきた……」
うとうとし、机に突っ伏せる。そのまま俺は意識を手放した。
「誰か起こせやぁ」
先生、生徒が寝てるんですよ?
「奈央がもし起こしに来てたのならやる事が出来たのに」
まあそんなタラレバの話を言ったって意味がないのでカバンを持ち教室を出る。
やる事は大きく分けて三つだ。
魔法の練習。 テストに向けての勉強。
バッドエンド回避のためにどうするか。この三つだけだ。
「主人公と会うのを避ける……これだな」
一番簡単だろう。
さて、もう帰るか。
「えっ?」
「あっ……」
「こ、こんにちは……?」
「蓮……」
「え? なんで僕の名前知って……」
「ああいや、なんでもないよ」
「そうですか……その、なんでここに?」
「いやぁ、寝てしまってね。そっちは何故ここに?」
「忘れ物をしてしまって」
「なるほどね」
そして続かない会話。
何故主人公がここにいるんだよ……ってああ! 確かに忘れ物して帰り道魔族に襲われるイベントあったな、相手が弱くてギリギリ勝てたけど……。
「そ、それじゃあ俺はこれで」
「あ、まっ、待って!」
「え、何?」
「その、出来ればなんだけど……」
「どうしたんだ?」
「友達になってくれないかな? 僕、人と話すのが苦手で、だからこのタイミング! ってなったんだ」
「そ、そうなんだ……」
「で、どう……かな?」
「えーとな……」
やべえ、これどうしよ? 考えろ考えろ……。
「友達になるよ」
「ッ!!!! ありがとうっ!!!」
いやぁ、そんな顔で頼まれたら断る事は出来んよ。
「あ、僕の友達を紹介しようか?」
「いや、それはいい、すまんな、最近は忙しくてな」
「うーん、それなら仕方ないね」
「それと、一つだけ伝えるぞ」
「え? どうしたの?」
「周りの気持ちには早く気づけよ?」
「えっ、誰か僕に殺意を抱いてるの!?」
「違うよ……」
「な、ならよかった……」
「それじゃあな」
頑張れヒロイン、苦労するぞ。
俺の行動次第で結ばれるキャラって変わるのかな……?
「美味え!」
「そう?」
「おお、奈央の料理は美味いぞ」
「いつも食べてるでしょ?」
「いつも美味いんだよ」
「そ、そう」
まあ中の人が変わったから美味く感じてるだけだ。
「このままのお兄ちゃんだといいけどなぁ……」
「ん? どうかしたか?」
「なんでもないよ」
食事も食べ終わったし、ステータス確認してオリジナル魔法作成のための魔法陣を考えるか。ゲームクリア者の実力が火を吹くぜ!
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