主人公に殺られる悪役にハッピーエンドを〜バッドエンドを避けるためにストーリーを崩壊させたら皆から好かれていた件〜
紅葉司
第1話 悪役と妹
「マジ……?」
1ヶ月前に購入したゲーム。魔法のある世界で学園に通う事になった主人公が一人の女の子を救い、恋愛に発展するというストーリーのゲームだ。
俺、鈴木は昨日自分の部屋で寝たはずだった、そして起きると知らない部屋、驚きを隠せずに鏡を見ると、そこには主人公の顔が……ではなく、主人公を殺そうとして逆に殺されてしまう悪役の顔があった。
ゲームの世界に転生、しかも好きなゲームだ、だがそれは主人公とヒロインが好きであって、別に殺られ役の悪役が好きなわけじゃない。
「うああぁ!!!!!???」
死に方を思い出すと、思わず叫んでしまう。
とりあえず主人公の説明からだ。
歳14 名前
次はヒロイン、一応、主人公に恋する人間は5人もいる。
歳14 名前
そして俺、悪役だ。
歳14 名前
「うわぁ……もうマジで無理……」
「お兄ちゃん、うるさい」
「おお、妹よ、すまないな」
「本当になんなの?」
「妹よ、少し今お兄ちゃんは焦っていてな……」
「妹とか言って気持ち悪い。朝ご飯できてるから早く食べてね、私はもう行くよ」
そうして扉を閉められる。仕方ねえだろ、お前の名前なんて知らねえもん、ゲームでも妹、としか出てこなかったし。
「学園には行かないとだよな……とりあえず朝飯だな」
下に降り妹が作ってくれた飯を食う。美味しい、味噌汁とポテトサラダだ。
てか食材が少ないな……妹買ってきてくれるかな……?
「学園……学園……怖えよぉ……!?」
学園生活を想像してみよう。
怖い顔、だから誰にも近寄ってこないでボッチ生活を送る……あれ……前世と同じじゃん。
「でもなぁ……イベントだよな、問題は」
まあ後から考えるとしよう。
そして時計を見る。8時25分を指していた。
「確か……30分に始まるよな……え?」
自分で言って自分で驚く。
「時間がねええ!?」
食器は無視して自分の部屋に戻り学園の服を着る。
「急げえ!!?」
靴を履きそのまま外に出る。学園に走るとして掛かる時間は5分……詰みってやつだな。だがトロトロ遅くする訳にもいかないので走る。
「顔面怖くて最初の学園にも遅刻するって学園生活決まった様なもんやん」
んー。ハッピーエンド、迎えたいな〜。とりあえず確定していることは絶対にストーリー通りにはさせない、ぶち壊してやる。
「5分でいいからそこでお茶しようよ」
「嫌です、学園に行かないといけないんです」
路地裏から聞こえる声、それは妹の声だった。覗いてみると、妹と……大学生くらいの男がいた。
近道を通ろうとして捕まったのだろう。妹普通に可愛い顔してるからなぁ……ってそんな事考えてる場合じゃねえ、早く助けないと。
「少しでいいから、ねっ?」
「だから嫌ですって!」
腕を掴まれる妹、無理矢理解こうとしても男の力に勝てるはずもなく。
俺はその男の腕を掴む。
「あ? お前なんだ……よ……」
「人の妹に手を出すとはいい度胸だな? お兄さんならダメな行動してるってわかるよなぁ?」
「あ……す、すいませんッ!!」
「わかればよろしい、お兄さんもダメな道を進むなよ」
逃げ去る大学生。俺は妹の方を向く。
「急がば回れだぞ。ほら、俺が今回は送ってやるから着いてこい」
「え、あ、ありがとう……な、なんか朝からおかしくない……?」
「そんな事ないさ、いつものお兄ちゃんだろ?」
「いつも物みたいに扱ってくるじゃん」
「そんな扱いしてたのかよ」
「お兄ちゃんの事だよ?」
「あ、ああ、そうだったな」
悪役が妹をどう扱ってるかなんて知らねえよ……悪くはしてないと書いてあったけど結構やべえじゃねえか。
「よし、ここまで来たらお前が先に行け」
「え? お兄ちゃんは一緒に来ないの?」
「あのなぁ、俺の様な顔面怖いやつと一緒にいたらそう言う感じに見られるぞ?」
「やっぱり変だよ、どうして急に人を心配する様になったの?」
「人は変わるもんだ」
「お兄ちゃんは急に変わりすぎだよ」
「んな話どうでもいいから早く行きなさい」
「わかった」
はぁ……。
「俺の学園生活詰んだぁぁ!?」
遅刻、多分10分ほど遅刻すんだろなぁ……。
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