第3話

「王太子妃様は気に入らない人間をすぐ解雇するんだって!」


いいえ違うの。そんな理由で解雇したことなんてないわ。1度だけ私の物を盗んで個人資産にしようとしていたから仕方なく暇を出したのよ。

私だって、王宮に来て5年ほど一緒にいて信頼していたから解雇なんてしたくなかったのに。

でも確かに解雇した時にはなぜか周りの人達が私の方を見てこそこそ話していたような気もするわ・・・。



「その割には自分の好みの男性を侍らせてるんですってね。」


違うわ。私はいつでも決まった侍女と近衛としかいなかった。たしかにたまに近衛が変わることもあったけれど、彼以外の近衛にはお礼以外そんなに話したことだってないの。というよりも、彼以外は話しかけてもくれなかったわね?お礼を言っても黙礼だけだったし・・・。



「しかも毎日違うドレスを着ているらしいわよ!」


いいえ、毎日違うドレスを着ていたのは王妃様の方だわ。私のドレスは家が出してくれていたし、持っているのだって用途別の最低限の体裁が整う程度のものだった。

仕事をしていたのだから接する人間はそれを知っていたはずだし、1度お茶会に少しだけアレンジを効かせた同じドレスを着ていった時には皆何か言いたげだった様な気がしたから既にバレていると思っていたのだかれど・・・。



「王太子様に近づいた女性なんて二度と近づかないように言えないようなことしてるらしいわよ?」

「実際それで人前に出られなくなった方もいるんですって!」

「そんなに?一体何をしたのかしら・・・?」


違う


「女の嫉妬ってやっぱり怖いな。」

「いやでもあの体であの顔だろ?両手じゃ収まらない人がお手つきになってるって話だし、俺も選ばれないかなぁ。」

「お前には無理だよ。なんて言ったって選ばれてんのは1人残らず眉目秀麗だって噂だぜ?」


違うわ


「やっぱりあの人が王太子妃なんかじゃだめね。」

「生まれてくるお子がもしかしたら王太子様の子じゃないかもしれないのはね。」

「治らないって言うもんな。ああいうのって。」

「このまま王太子妃だったら国庫はからになっちまうよな。」

「俺らは王太子妃様のドレスのために働いてるようなもんなのかね。」


違うの、私は、私は・・・・・・・・・









「ああぁああぅあああいぁあぁ!!!(嫉妬するほどあの方のことなんて好きでもないし、ドレスなんて重いだけで嫌いだしれっきとした乙女なのよ!!!!!!!!!!!!!」




そもそも私は悪くないのよ!

全部王宮が悪いんだわ!!私のことを勝手に婚約者にした挙句その後のフォローは一切無し。家族になるというのに歩み寄ろうともしない!確かに噂をそのままにしてた私も私だけれど、どうしてそんな人たちの為に私が自分の事を責めなければいけないの!どうして私の家族が傷つけられなくてはいけないのよ!



しかもなにが自分好みの男を侍らせてるですって?!私だって本当に好きな人と一緒にいることが許されたならずっと一緒にいたいわ!


・・・え、もしかしてあの近衛のことを皆言っていたのかしら?!?!いや、そもそも殿下や王妃様の仕事をしていたからそんなに人に見られるほど外に出ていないもの!ということは王宮の人間がそのような噂を周りに広めたということ?それか近衛か侍女が・・・・・・??いや、そんなはずが無いわよね?私彼等にはきちんと自分の気持ちを教えていたもの・・・。





思い返すとどうにもおかしいことばかりだわ!どう考えてもそのような噂が出そうにも出るはずのない生活をしていたと自負しているのに、どうしてこんなにも周りとの認知がズレているのかしら??

もう少し社交界で味方を付けておくべきだった?でもそのような機会には仕事を押し付けられていたからほとんど出られなかったし、私の生活を知っていたのはごく限られた男性だけだったわ!だから知らない間に噂が広まっていたというの?


それにしても広がる噂がどうにも偏っているような気もするし、どれも大衆向けの記事のようなものだし・・・。








〜〜〜〜っもう!!!どうして私がこんなにも悩まされなくてはいけないの?!私だってただの令嬢だわ!本当は仕事だってできるだけやりたくも無いし、そもそもあれは私の仕事では無いけれど!同じような年代の女性とお友達になって、誰が格好いいとかこの前誰が告白されたとかそういうお話だってしたいし!王太子妃になるには学園にも行かなくてはいけないと言われ行ったものの、お友達がいないから放課後のお友達とのショッピングやティータイムなんかもできなかったのよ!!どれだけ同じクラスの方が羨ましかったことか!!

私から話しかけてもその頃には噂が出回っていた誰も相手にして下さらなかったし・・・。





どれもこれも私が殿下と婚約をしてしまったせいだわ!!!!小さい頃だったけれどお父様に殿下と婚約をすることになったって報告された時に、どうして特に何も考えずに了承してしままったのかしら!!普通に考えて婚約は両家の当人の希望を考慮すべき契約だわ!




「あぅああぅううあぁ!!!!・・・・・・・・・・・・・あぅ?(〜っどうにかしてでもあの婚約を受け入れなければよかったわ!!!!・・・・・・・・・・・・・え?」


「あああぅぁあえあ?!?!(私死んだんじゃなかったの?!?!)」













え・・・・・・・・・・・・・・・?







一体これは、どういうこと??













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年上騎士団長が悪役令嬢に猛アタックされる話 @Miyabi0505

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