ひとつになった世界
世界の変化
西暦2050年代初頭のあの日、謎の「声」が全世界の人々――いや、全生物に語り掛けた翌日、その変化は顕著に現れた。
まず、全ての大陸、島々が、国境線の範囲で、短くて1千キロメートル、長くなると100万キロメートル超も離れた。
アダムスブリッジがあるためか、インドとスリランカは離れなかったけれど、マレーシアとインドネシアは見事に離れ、台湾に至ってはユーラシア大陸から離れたばかりか、その間に新たな大陸まで出現する有様だった。
台湾は自治はしているけど、一応は中国の領土だった筈なのに。
その大陸は台湾を囲い込むかのように、南シナ海から元台湾海峡を通って東シナ海を通過し、二俣に分かれてフィリピン海に達している。
その所為か、南シナ海パラセル諸島に勝手に建造された人工島や海上メガソーラーフロートが、出現した大陸と重なる形となり、あえなく
勿論大陸が現れ南シナ海と分断されたため、九段線とかそんなモノを主張出来る筈もなく、資源目当ての海上開発は完全に頓挫した。
他所様の領海に何の了解も得ずに、自国領を主張して勝手にそんなものを作っていたんだから、自業自得と言わざるを得ない。
いや、あの「声」が本当に神様だとしたならば、神罰になるのだろうか。
本島から離れた島々――ガラパゴス諸島、ラパ・ヌイ島などはそのままであったが、大陸を出現させる都合か最初に文句を言われた腹いせなのか、ハワイ州が驚くほどアメリカ本土寄りに、具体的には距離にして約400万キロメートルだったものが、たったの1千キロメートルなっていた。
更に、ジョンストン島などアメリカ領の無人島は、自然保護区だろうと関係ないと言わんばかりに残らず消滅してしまったようで、だがその傍のマーシャル諸島は何事もなく残っていたそうだ。
これほど大規模に地形を弄るなんてことは、それこそ神様でもない限り出来るものではない。
それから、その大陸の所為でフランス領ポリネシアの位置が捕捉不能になって、本国がちょっとした騒ぎになったりしたらしい。
それに関してフランスがなにか声明を出していたが、GPSネットワークを強化したことでその事態は鎮静したようだ。
グリーンランドは更に北上し、北極海に出現した大陸と僅か10キロメートルまでに接近し、その気候は更に低下した。幸か不幸か、温暖化の影響で溶け出している氷河問題が、それにより事実上解決したのである。
アフリカ大陸はスエズ運河を境界としてユーラシア大陸から1千キロメートル離れ、ハドレー循環の亜熱帯高気圧帯から外れたため気候が劇的に変化し、熱帯雨林のようになった。
最低降雨量が130ミリリットルを誇る砂漠地帯が、連日繰り返されるスコールにより潤い始めることとなる。
もっとも、それにより水害も起きているのだが、そもそも砂漠地帯の中心では生物がほぼ存在していないし、いたとしても人と違って危険察知能力に長けているため被害はそれほどないだろう。
……多分……。
オセアニア地域は、前述の消滅した無人島を除いてそのまま南に移動した。
オーストラリアやニージーランド、ニューカレドニアがそれに当たるが、同じオセアニア地域でも、ニューギニア島とビスマルク諸島、ソロモン諸島はインドネシアに引っ張られたかのようにそちら寄りとなっていた。
地理的にいえば、ユーラシア大陸も南下した形となり、それにより北欧やロシアの氷河や永久凍土が溶け始めた。
何故かアメリカの緯度は変わらず、アラスカのそれはそのままで、よってベーリング海は事実上無くなっている。
日本の位置もその例に漏れず、地形はそのままに大幅に東へと移動した。
ちなみに領土問題で揉めている島や諸島も諸共移動し、東シナ海に出現した大陸がユーラシア大陸と日本を隔てるように日本海であった海にも出現し、ついでに南下したカムチャッカ半島も間に入ってしまったために、本格的に隣国が変わってしまっている。
そうなっても、結局は島国である日本の状況はほぼ変わらなかったが。
そのようにして地球の地形が大幅に変化し、そして出現した大陸には、それぞれ一つずつ国が在るようだった。
太平洋上の大陸は「魔法国家マルスギア」。
大西洋上の大陸は「インクラヴァーナ王国」。
インド洋上の大陸は「ファエラス神聖公国」。
南シナ海、日本海、フィリピン海上の大陸は「竜王国ラーヴァ」。
そして北極海上の大陸は「地底帝国ドラスベン」。
それぞれ広大な大陸であるにもかかわらず、その大陸自体が単一の国家として成り立っているらしい。
詳細は不明だけど。
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