Ⅹ:神判の刻 - judgment -

〝再逢〟 / Side A


 アリスが次に目を覚ますと、そこは、真っ白で曖昧な世界であった。

 そこまでを考え、その場所が〝神様〟の住まう世界――つまり、アリスの故郷――であるコトを彼女は察していた。

 戻って来たのだ、と、その意味を彼女は理解する。


「そう。私はあの時に死んだのだから。もう戻るコトはできないの」

「そうだね――……。ボクも。キミにはもっと生きて欲しかった」

「ユキト……」


 アリスが目を向ける、白い空間の――上も下も左右も分からない――中に、青年ユキトが静かに佇んでいた。

 その表情は、まるで、憂いという名の感情。

 あるいは、哀しみ、という感情だろうか。

 本来であれば、そう、簡単に死ねないハズのアリス、だが、彼女は今や完全に人の身に近い存在と成り果てていた。

 死を迎え、この場にアリスが佇んでいる、その現実がすべてを物語っている。

 神の加護を失い、脆い、弱い。

 存在の一つ。

 ユキトと同様に、あるいは、ソレ以下の力しか持たない存在と化している。


「神様は。きっと。私のコトを――」

「行こうか。アリス」


 ユキトはアリスの言葉を遮った。

 つまり、ユキト自身も、これから先に起こるであろう〝結末〟を理解している。

 そういうコトだ。

 アリスは小さく息を吐く。

 終わりだ。


「大丈夫。――心配は要らないよ」


 どれだけ時間がかかっても、必ず、ボクがキミを助け出すから。

 そう、ユキトはアリスに笑いかけ、空間の中に在る大きな扉に手を当てる。

 扉を、そう、開け放つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る