神々の戯言 / Side G


     ***


『〝のアリスに失敗があったとすれば。それは。ひとえに人の子が原因である〟』

『〝以前に。アリスに自我が芽生えた。その例は数こそ少なし〟』

『〝だが。そのほとんどが人の子との極端な接触にあった〟』

『〝やはり。人の子は。我らの世界にすら影響を及ぼしかねない〟』

『〝庇護する対象とは言え。我らの行いを邪魔するのであれば――。容赦はできぬ〟』

『〝――――〟』


 神々はで黄昏れていた。

 白く淡い。

 存在自体が曖昧な、ふわふわとした、雲の上のような空間。

 広大な世界。

 ただ、そこには、神々以外の存在は何処にもない。


 混沌とした人の世界を野放しにしてはならない、救世、それだけを本能として、神々かれらという存在は形を成している。


 ただ。

 では、いったい誰がどんな目的で、神々という存在を創り上げたのか。

 真の意図は何処にある?

 実際のところは、神々自身でさえ、理解をしてはいないのだ。

 本能のまま、ただ、〝善い〟という判断を取るだけ。

 ソレだけである。


『〝あのアリスに。すべての罪を乗せる。世界の不穏な気配を含めて〟』

『〝それが最良〟』

『〝もはや。それしかあるまいな。やむを得まい〟』

『〝償わせよ。人の子と共に。そのすべての業を〟』



 アリスはまだ知らない。

 自分が、神々から〝捌け口〟としての最期を、利用価値として見出されたコトを。

 後に下る、最期の神託の、その意図を。


 神々はまだ知らない。

 己がどのような〝罪〟を成したかというコトを。

 人の子が持つ力、悍ましき力、本当の意味での狂気を。


 互いに知らない。

 黄昏は既に近いところにまで来ているのだというコトを。

 一人の青年が鍵となる。

 扉を開き、その先を滅ぼしていく、神々の黄昏ラグナロク

 すべてが無に還る。



 誰もまだ知らない。

 終わりは近い。

 望むべく世界へ向かう日へ。


 ……――たった一人、ソレだけのために、世界のすべてを敵に回す。


 彼がいた。

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