第10話

魔法で生み出した物体は操れる。もしこれが一時的なものではなく永続的なものならただ前に飛ばすだけじゃなくて目の前にずっと浮かせたままキープすることだってできるんじゃないだろうか。


今回作ろうとしているのは石回転銃ロックライフルではなく盾なので、小石ではなく少し大きい拳サイズの石を手に持つ。


【直径50㎝の丸盾に変形】


これは問題なくできた。MPが少し減った感覚がある。次は目の前に浮かせっぱなしにする方法だ。


【自分の1m前方に常に浮遊する】


これを詠唱と紐づける。上手くいくだろうか


石盾ロックガード


安直なネーミングセンスだが、頭の中でパズルのピースがカチリ、とはまった感覚があった。上手く紐づけられたようだ。そして肝心の魔法だが、しっかり発動して目の前を浮遊している。若干下に置かれてるから視界が塞がれることもないしこれは成功と言っていいんじゃないだろうか。


「なるほど、石の盾か」

「これで相手の攻撃防御しようかなって」


この魔法が発動している間はMPがじわじわと減っていくようだ。やっぱり浮かせっぱなしにするのにもMPはしっかり使うみたいだな。そりゃただ一発飛ばすだけとは違うししょうがない。


ただ減る量も2分で1MP程度だから特に問題になるほどでもないし経線能力も良し。


それに俺の場合は3分で1MPくらい自然回復するから、実際ほぼ減っていないのと同じ。コスパもいい感じ。悪くない魔法じゃないだろうか。


問題の耐久力だが、ゴブリンが石の盾をこん棒で殴りつけているがヒビが入ったりもしていないしE級の魔物相手にならば問題はなさそうだ。


「これ...」


石回転銃ロックライフル石盾ロックガードも変形してから操作という過程で魔法を発動している。


いまだに俺は変質を使っていない、ということだ。


これは試してみるしかない。


【石盾が鉄製の盾に変質する】


今回はテストなので詠唱とは紐づけずに魔法が発動するかだけの確認をする。


すると目の石盾が淡く光り、次の瞬間金属製の盾に変化していた。


「よしっ!」

「お?それが変質か?いいな!かっけぇ」

「うん、鉄の盾ならもっと耐久力上がると思って」

「多種多様ですげえな...だがそれは置いといてMP大丈夫か?」


言われてステータスを確認すると、30秒に1MPというとんでもない速度でMPが減少しているのに気づく。


「ま、まずい!」

「ははっ!まだお前に鉄の盾は早かったみたいだな」


とっさに元の石の盾に戻す。俺のレベルでこの魔法はまだ実用的ではないな。ゴブリン相手ならばこの魔法でも事足りるわけだし、今は鉄盾アイアンガードが実用性はともかく発動できる魔法だと確認が取れただけ良しとしよう。


石回転銃ロックライフル


もうすっかり発動に慣れた石回転銃ロックライフルで盾を殴りつけていたゴブリン2匹を貫いて討伐する。


っと、レベルがまた上がったみたいだ。スライムよりゴブリンの方が経験値は多いのか。


「お疲れ、2匹相手でも問題なく対処できるってわかってよかったな。まあ魔法の検証をしていたせいで多少MP使っただろうし魔力薬は飲んでおけよ」

「うん、わかってるよ」


鞄から魔力薬を取り出して飲む。おいしい。


さて、今の戦闘で1つ分かったことがあって、それはわざわざ石盾ロックガードなんてしなくても、素早く石回転銃ロックライフルを2回使えば、ゴブリン2匹程度なら効率よく倒せるだろうってことだ。確かに石盾ロックガードを使った方が安全だが、わざわざそれ用にMPを割かなければいけないほどゴブリンは素早くない。


そのまま歩いていくと少し先には5階層目に降りる階段が見えてくる。


「あれが5階層目のいく階段だ。ちゃっちゃと行くぞちゃっちゃと。そろそろ夕飯の時間で腹減ってきたしホーンラビット3匹しばいて帰ろうぜ」


ホーンラビットが出てくる6階層目に行くには5階層を攻略しないといけないからな。この階層は手早く駆け抜けるか。


―――


5階層に降りてしばらくすると、初めて他の探索者が戦っている場面に遭遇した。見た感じ雷属性と土属性を使って戦っているソロの探索者だ。


土属性の魔法で地面から土の棘を出してゴブリンを下から貫き、そのあと自身の手から雷を飛ばしてゴブリンを黒焦げにして倒している。とんでもない火力でゴブリンを簡単に屠った彼はとても強く見えたが、E級ダンジョンにいるってことはE級探索者なんだろうか。


「あの人も強くない...?あれでもE級なのかな?」

「んなわけない、さすがに強すぎだ。ん-、二属性を満遍なく扱っているところと装備の見た目から最低でもB級はあるだろうな。C級の俺よりつえーよ」

「え、じゃあなんでこんなところにいるの?海翔みたいに初心者の付き添いっぽくは見えないし」


そんなに強いなら強いダンジョンに行ったほうがお金になるんじゃないだろうか


「親和性が上がったとか、新しい魔法とか魔法のコンボを思いついたとかじゃないか?実用性があるかどうか、高ランクの探索者にとっては安全なD級やE級のダンジョンにテストしに来たりするんだ」

「なるほど、確かにぶっつけ本番だと危ないもんね」


確かに俺が防御魔法を海翔がいるうちにゴブリン相手に練習したのと感覚的には似ているのだろう。強い魔物相手にぶっつけ本番は確かに危ないしな。


「おし、俺らも早く6階層に行くぞ」


海翔に言われ歩き出そうとした瞬間、背後からごぼごぼという不快な音が聞こえてる。


「お、この音は魔物が発生するときの音だな。ダンジョン内に散らばっている魔力を回収して地面から現れるん...だ......よ......?」

「か、海翔......こいつってまさか...」


振り返った俺たちが目にしたのは、巨大な両手斧を持った身長3mはあるであろう2足歩行の牛の魔物、ミノタウロスだった。


「ブモォォォッ!!!」

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