第7話


「まずは受付に行ってパーティ登録しなきゃな」

「そういえばそうだった」


海翔と一緒に先ほどの窓口に行くとさっきのお姉さんが出迎えてくれる。


「あ、南さん、玲とパーティ登録したいのでお願いします」


受付のお姉さんは南さんって言うらしい。そういえば属性検査アフィニティテストの時のお兄さんの名前も聞いてないな。


南さんは少し驚いたような表情を見せるとパーティ申請用の紙を2枚取り出して俺たちに渡してくる。


「...黒鉄さんだったんですね、びっくりしました」

「はい、俺が待ってたのがこいつです」

「ようやくパーティを組むんですね」

「1年ソロでしたもんね、ははは」


え、1年間ソロだったの?確かに一緒にパーティ組む約束はしてたけど俺が登録するまでくらいは他のパーティにいると思ってた。


「そうですよ、何度パーティ探すのをおすすめしたことか...」

「初めてのパーティこいつと組むって決めてたんで待ってたんです」


初めて聞いた。海翔からも一度もそんな話は聞かされていない。


「別に他で組んでてくれても良かったのに...」

「良いんだよ、俺が勝手にそうしたことだから」


思わずじーんと来てしまう。なんて良い奴なんだ。ますます頑張らなきゃいけないな。


「毎回言ってましたもんね。来年登録しに来る俺の親友とパーティ組むまではソロでやるって」

「ちょ、今はその話は良いから!とにかくパーティ登録!お願いします!」


照れて焦る海翔も初めて見た。いつもは兄貴分な感じなのに珍しい。


「ふふふ、わかりました。速水さんはC級で黒鉄さんはE級ですので平均値のD級パーティとして登録されます。なのでD級のダンジョンまで入ることができますが、今日はどちらに出向かれる予定ですか?」


海翔ってC級だったのか。C級は確か上位2割に入るから結構な上級者ってことか?大丈夫かな、ますます不安になってくる。


「初めてだしとりあえずE級から連れて行こうと思ってます」

「賢明です。ではE級ダンジョンで達成できる依頼をお渡ししますのでこの中から選んでください。一度に受けられるクエストは最大3つまでです」


渡されたクエストのリストには色々書いてあったが、海翔に選んでもらい、初心者におすすめだというスライム5匹の討伐、ゴブリン3匹の討伐、ホーンラビット3匹の討伐の3種類を選んでくれた。


「では気をつけて行ってきてくださいね」

「はい、頑張ります」

「0から教えてやる」


―――――


俺自身はE級探索者だが、C級の海翔と一緒なので現状D級ダンジョンまで入ることができる。が、今回は俺が初めてのダンジョンということで最下級のE級ダンジョンに連れていってもらうことになった。実はギルドから一番近いE級ダンジョンの入り口はギルドの裏手にあるんだが、海翔曰く別に偶然とかではないらしい。


「そもそもE級とD級の探索者で探索者全体の6割を占めるからな。E級ダンジョンの近くにギルドを建てたのも利便性のためだと思うぞ」

「合理的だね、よく考えられてる」


とのこと、南さんに見送られた後に聞いた話なのだが、探索者の約75%がE級とD級に分類され、C級は20%で、B級は5%。A級に至っては全体の1%程。S級は枠が決まっていてA級の上位30人がなることができるらしい。今のS級探索者が30人前後とあやふやなのは30位付近で激しい順位争いが起こっているからなのだとか。


そして実は南さんは元A級探索者らしい。恐ろしや


ギルドの裏手から出てすぐの場所にE級ダンジョンの入り口らしき場所があった。入り口周りに俺と同じ服装の人たちがいっぱいいるので間違いないだろう。


入り口には職員さんもいたので話しかけて海翔と一緒に探索者証を見せる。


「C級の速水海翔さんとE級の黒鉄玲さんですね。確認できました。どうぞ」

「「ありがとうございます」」


お礼を言って海翔と中に入る。階段を下りていく感じらしい。


「この階段を降りるともう1つ扉があるんだが、その扉を抜けた先がダンジョンだ。ダンジョンの中は基本暗いから光源が必須になるが、俺がいるからそこはまあ大丈夫。あんまり気にするな」

「助かる」

「魔物はどこから出てくるかはわからないか、ら曲がり角は必ずクリアリングしてから進むこと。FPSなんかで敵がいないか確認するだろ?あれをここでもやらなきゃいけないんだ」

「なるほど」


確かにA◯exなんかでも角待ちなんかされてたら大変だ、何度ハイドに殺されたことか。クリアリングは大事だ。


「さて、E級ダンジョンに登場する魔物は5種類。スライム、ビッグスライム、ホーンラビット、ゴブリン、コボルトだな。まずスライムは弱い。絶望的に弱い。攻撃力は0に等しい。ぽよぽよ跳ねていてたまに突進してくるが全くダメージはない。一番危険度の低い魔物だ」

「まあRPGとかでも序盤に出てくるしな...」


スライムといえば、といった感じの弱さだな。これでスライムがめちゃくちゃ強かったら困るし想像通りでよかった。


「続いてゴブリンとコボルト。こいつらは人型の魔物で、まあ見た目は想像つくだろ?木の棒とか錆びた剣を持ってる。武器を持っているとはいえこいつらの身長がそもそも100~120㎝程度だから力も小学校の高学年程度で恐れる程じゃない。コボルトは少し足が速いが、全然俺らの方が速い。落ち着いて対処すれば魔法を使わなくてもまず1対1で負けることはない」

「なるほどな。そういえばコボルトのクエストもリストの中にあったけどなんでホーンラビットのクエストにしたんだ?」


同じ人型の魔物で足が速い程度ならコボルトのクエストを受けても良かったんじゃないだろうか。


「コボルトはゴブリンと違って群れるからな。1対1で負けることはないけど1対1の状況を作りにくいんだ。ホーンラビットとゴブリンは基本群れないから1対1をしやすい。後はまあ、シンプルにゴブリンとコボルトは見た目も倒し方もがほぼ一緒なんだよ」

「両方人型って言ってたしな、そういうことか」

「そ、しかも両方木の棒とか錆びた剣とかでの物理攻撃しかしてこないから攻撃パターンもほぼ一緒。倒し方もそれ相応に似たものになる。だから正直練習するならどっちかでいいんだよ。んでゴブリンのクエストを受けるなら、もう1枠はホーンラビットのクエストが良いと思ってよ。獣型の魔物は最初は大変だし練習になるからな」


俺の成長のために選んでくれてるみたいだった、ここまで考えてくれてるとは思わなかったが、いい機会だし是非ともできるだけ吸収したい。


「...!」ぽよんぽよん

「言ってる間にスライムがでてきたな。2匹いるしせっかくだから1匹は最初に俺がお手本を見せるよ。だから2匹目は玲がやってみろ。スライムは打撃に対して耐性があるから魔法か斬撃で攻撃すると楽に倒せるぞ。ッ水弾アクアバレット!」


指示を俺に出しながら海翔が右手を前に突き出すと、突き出した手の平から水の球が飛び出してスライムに当たった。跡形もなく消し飛んだスライムは小さな石のような物を落とした。


「よし、次は玲の番。あと1匹やってみ?」

「わ、わかった...」


ついに初陣だ。



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