第6話



あの後海翔とギルドで合流したが、まだ武器のメンテナンスが終わっていないらしくそっちの方で武器の様子を見ているとのこと。


俺は探索者登録をしてステータスカードをもらわないといけないので、以前行った属性検査アフィニティテストの窓口とは反対方向にある探索者用窓口に向かった。


「すみません」

「はい、こんにちは、今日は探索者登録のご利用ですか?」

「あ、そうです」


そう言うと引き出しから書類を何枚かだして渡してくる。


「では、こちらの書類を埋めてください」

「わかりました」


渡された書類をぱっぱと埋めて返す。受付のお姉さんは一通り目を通した後にっこりと微笑んでトレイに乗せた2枚のカードを渡してくる。


「はい、確認できました。ステータスカードはいつでも新しいのをお渡しできますが、探索者証は紛失すると再発行に2000円かかりますので無くさないようにしてくださいね」

「わかりました」


トレイに乗っていたステータスカードと探索者証を受け取って財布にしまう。まあ無くさないに越したことはないので大事にしよう。


「では、続いてギルドのシステムについての説明をさせて頂きます」

「お願いします」

「ギルドに登録することで、探索者はダンジョンに入る法的な許可を得ることができます。ギルド未登録の探索者はダンジョンに入ると罰せられますのでお気を付けください」

「わかりました」


車の免許みたいなものなのかな。


「探索者にはE級からS級までの6区分に分けられています。ギルドへの貢献度に応じて等級が上がっていきます。C級以上に昇格するためにはギルドが設定した昇格クエストをクリアして実力、平たく言えば探索者としての強さの証明をしていただくことになります」


なるほど。E級からD級に上がるためにはギルドへの貢献度が大事で、それ以降はギルドへの貢献度プラス探索者としての実力が求められるってわけだ。ラノベで見る冒険者ギルドとかと似たようなシステムでわかりやすくて良い。


「黒鉄さんは登録したてなのでまだE級です。E級からD級に上がる為にはE級クエストを3種類達成して頂いた上、ギルドにE級魔物以上の魔石を合計50ptポイント分納品しなければなりません」

「pt...?」


また初めて聞く単語だ。


「はい、ダンジョンに生息する魔物を倒すと魔石やアイテムをドロップします。そして魔石はドロップする魔物に応じてptが振り分けられています。例えばスライムの魔石は2ptで、ゴブリンの魔石は3pt、みたいな感じですね。それを合計50pt分ギルドに納品してもらう。ということです」


D級に上がりたければE級のクエストを3種類達成し、魔物を合計50pt分の魔石が溜まるまで倒し続けて納品しろ、ってことか。


「わかりました」

「はい、次はギルドのルールの話になります。守らないと探索者証の剥奪もあり得ますので気を付けてくださいね」


受付のお姉さんの話をまとめると


・他の探索者が接敵しているのを見つけた場合、明確な救援要請がない限り手出しはしてはいけない。


・他の探索者へ迷惑行為はダンジョン内外問わず禁止。喧嘩などももちろん禁止。危害を加えた場合は傷害罪で訴えられる可能性もある。


・魔物のモンスタートレイン(ヘイト擦り付け)行為は探索者証と、探索者証の再発行の権利の剥奪。程度によっては殺人未遂罪で逮捕される場合もある。


・自分の等級より2つ上以上のダンジョンには入ってはいけない。E級の冒険者はD級のダンジョンまで、D級の冒険者はC級のダンジョンまでしか入っては行けない。


・パーティは最大2ランク差まで、E級の俺が組めるのはC級の人までしか無理だ。ただしS級探索者とパーティを組めるのはB級ではなくA級以上


こんなところだ。


魔石の納品をしたい場合は今受け付けてくれている窓口まで行けばいいとのこと。それ以外の魔石やモンスターからのアイテムドロップは、買い取り窓口まで行けば査定して買い取ってくれる。魔石やアイテムドロップは忘れずに回収しておくとあとあとお金になるからおすすめ。


まあ大体理解した。


「以上となります。何か質問等ございますか?」

「今のところは大丈夫です」

「わかりました、黒鉄さんは18歳未満ですので、ギルドの規定によって探索者登録時にギルドから装備品が支給されます。ステータスに補正がかかりますので探索に行く際は是非それを装備して行ってくださいね」

「ステータスに補正...」


そんな装備品があるのか。普通の服とは何か違うんだろうか...?


「黒鉄さん、身長をお伺いしても?」

「あ...165㎝です」

「ん-、ではMサイズですね、少々お待ちください」


記憶を頼りに答えると、受付のお姉さんがかがんでカウンターの下からバックパックを取り出す。さっきの書類しかり手際良すぎないかこのお姉さん。


「はい、では中身の内訳が記されたリストと一緒にお渡しします。どうぞ。ロッカールームが奥にございますので良ければご利用ください」

「ありがとうございます」


お姉さんがさっき取り出した小さめのバックパックと紙を渡された。中をちらっと見ると服とか小瓶が入っている。これが初心者用の初期装備品なのか。大分しっかりした物に見えるけど、これ18歳未満全員に配ってたらかなりギルド側の出費かさみそうだな。


「ふふ、国からの支援が出ているのでその心配はありませんよ」


顔に思いっきり出ていたみたいでお姉さんに笑われる。海翔にもよく思っていることがバレるし、そんなにわかりやすいのかな。


「あ...そうなんですね」

「えぇ、黒鉄さんは今日から探索を行う予定ですか?」

「そのつもりです。連れが今武器のメンテナンスに行っていて、それが終わり次第ですかね」


そういえば海翔は魔法メインなのに武器のメンテナンスなんて必要なのだろうか?


「では今お渡しした装備品に着替えて頂いてから、お連れ様とこちらへお越しください。黒鉄さんが受けられる等級のクエストのリストをお渡しします。頑張ってくださいね」

「わかりました、ありがとうございます」


受付を離れて海翔の方を見るがまだ武器店にいたので先に着替えてしまおうと思いメモを見ながらロッカールームの方へと向かう。


貰ったメモを見ると


・鉄の短剣:(STR+5)

・木の杖:(INT+5)

・ヘルメット:(VIT+1・MND+1・AGI-1)

・探索者の服上:(VIT+1・MND+1・AGI-1)

・探索者の服下:(VIT+1・MND+1・AGI-1)

・探索者の籠手:(VIT+1・MND+1・AGI-1)

・探索者の革靴:(VIT+1・MND+1・AGI+3)

・初級回復薬×3:(HP+10)

・初級魔力薬×3:(MP+10)


と書いてあった。STRとかINTとかは多分さっきお姉さんが言ってたステータスの補正の話だろう。至れり尽くせりで感謝しかない。服のサイズもぴったりだしよかった。武器はどちらか1つしか装備できないみたいだから、魔法メインで戦うつもりの俺は杖を装備しておく。


ステータスが気になったので、ロッカールームを出て壁際の椅子に座ってステータスカードを取り出す。海翔がレジらしき場所で財布を出しているのが見えたのでもう終わるだろう。


「ステータス」


ステータスカードが淡く光を帯びると目の前に錬金を使ったときに出てきたのと似たホログラムのメニューが投影される。


【レベル】

名前:黒鉄玲

年齢:16

性別:男

レベル:1


【ステータス】

HP:20/20

MP:20/20

STR:5

VIT:10 (+5)

DEX:5

INT:10 (+5)

MND:10 (+5)

AGI:4 (-1)

―――

SP:10


【魔法】

錬金魔法:1


待ちに待った自分のステータス情報だが思ったよりパっとしない。かっこのなかの数字は、恐らく装備品によってかかったステータスの補正値だろう。レベル1の探索者のステータスはデフォルトで全部5なんだろうな。


さてさて、確かギルドの人の説明によれば、上から


HP(体力)

MP(魔力)

STR(物理攻撃力)

VIT(物理防御力)

DEX(器用さ)

INT(魔法攻撃力)

MND(魔法防御力)

AGI(敏捷)


だったはずだ。SPはステータスポイントの事で、割り振ることで任意のステータスを向上させることが出来ると教えてもらった。E級のダンジョンくらいならば、ステータスを弄っていない素レベル1の状態だったとしても、問題なく攻略できると教えてもらったので今はステータスポイントには触らないでおこう。


「玲、待たせたな。探索者登録はできたか?」

「うわっ!あ、びっくりした、海翔か」


ステータス画面とにらめっこしていると海翔から声を掛けられて驚いてしまった。


「あはは、うわってなんだよ」

「い、いや、ステータス見ててあんま周り見てなくてびっくりした...」

「あーなるほどな、悪い悪い。俺からしたらぼーっとしてるようにしか見えなかったからさ」


確かに他人がステータスを見れないなら海翔とか他の人からはそう見えるのか。ステータス見るのは面白かったが集中しすぎるのはよくないな。アホ面晒すことになりそうだし気を付けよう。


「あと、登録はちゃんとできたよ。探索者証もステータスカードももらえた。海翔こそ武器のメンテナンスは終わったの?」

「おう、ばっちりだぜ。まあ武器メンテっていっても近距離戦闘になっちまった時用の小盾と去年貰った短剣だし、基本は魔法で戦うんだけどよ。それで手入れサボって壊れたら危ねえだろ?」


意外に安全管理ちゃんとしているんだな、って思ったけど、そもそも海翔ってラン作者としては1年先輩だから当たり前か。俺も色々教えてもらうしかない。


「俺も盾とか買った方がいいの?さっき受付のお姉さんからもらった初心者支給品のバックに盾は入ってなかったけど」

「いんや、まあ俺はあるに越したことはないって思ってるけど、あれ普通に買うと1万円ちょいくらいして結構高いしなぁ...正直レベル10くらいまではギルドから最初に貰ったその装備品で事足りると思うぞ」


確かに高校生に1万円は少し高い。それならお金を少し稼げるようになるまでは良いかな。


「それに俺はほら、光魔法使えるから懐中電灯とかヘルメット用のヘッドライトとか買わなくてよかったんだよ。それで浮いた金で買ったんだ」

「なるほどね」


確かに光魔法で光源は確保できるから要らないのか。便利だな。


「もう準備は良いか?」


そう海翔に言われ服装や持ち物を確認する。スマホ以外の私服や私物は全部ロッカールームのロッカーにしまってきたし大丈夫なはず。回復薬とかも持ったし行けるはず


「うん、準備できたよ」

「よし、じゃあ行こうぜ、玲の初ダンジョン」


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