【無限】

 「納得いかない……!」

異次元に侵入して開口一番、日緋色が発した言葉は不平不満だった。

 「どうしたのひひろん?何が嫌なのかな~?」

お前ぜってー煽ってるだろという口調で、銀河うちゅうが日緋色に声を掛ける。

 「…………」

 「ちょっと境夜!何で魅傀と銀河うちゅうは両肩に一人ずつ乗っけておいて、あたしだけ肩車なわけ?その辺弁明してみなさいよ」

 「解、小さいから。バランスの問題だ」

 ガシガシガシガシ‼

 境夜は日緋色に銃のマガジンを入れる部分の角で殴られる。痛い。

 「あはははは! ほんとにひひろんは小さいって言われるとおこなんだから~」

 「そうなのか。小さいのは良いぞ。大は小を兼ねない。デカすぎると市販の家具の何割かは使用不可能になる。主にベッドだ」

 「慰めてるつもりかコラ!」

 「いたい、いたい、いたい、いたい、いたい」

 異次元に侵入してきたと言うのに、まるで緊張感が無いようにしか見えない一行だが、チャージしなければ攻撃出来ない銀河うちゅうはジャベリンに魔力を充填し始めているし、設置型の魅傀はすでに自分を含めた四人の足や急所部分にスタンプを設置して守りを固めている。日緋色は空になった薬莢に学生ポイントを利用して万全の状態にしてある。この三人、案外抜け目は無い。

 「境夜にゃん。ここ、本当に異次元なの?さっきと景色が一緒にゃ」

 「ああ。そのとおり。

 異次元と言うと仰々しく聞こえるかもしれないが、かみ砕いて説明するなら、俺達が住んでいる地球をもう一つ創って、それを自分の城みたいにしているだけだからな。

 俺はあの学園に来てから三か月。この世界を跳びまわってたんだ」

 「ふーん? でも元の地球と一緒の世界なら、そんなに問題はなさそうね」

 「そうでもない。この世界は第一奇跡まほうで精巧に創られたプラモデルに過ぎない」

 「これがプラモデル? どう見ても地球そのものって感じー。これがプラモなら買い手数多だね~」

 「それもどうだろうな。クルマも飛行機も動かないし、電気も来てなければ、そもそも生命体がいないから、水も食料も死んでいる。ほら、ちょうどそこに海が見えるだろ」

 「おお、そうか! 海もあるんだこの島! プライベートビーチ付き別荘タイプのプラモ! 絶対に売れる……って何アレグロっ⁉ 昔テレビで視た数十年間保温しっぱなしの状態で放置されてたお米みたいだよ⁉ グロテスクにレインボーじゃん‼ 何で⁉」

 「生命体って言うのは、虫も微生物も含まれる。要するに自然界の水も、自力で美しいわけじゃないってことだ。当然、安全でもない。

だからこの案件、俺と言う人類の枠を超越した生命体でなければ不可能な任務になる。

 第三奇跡まほう【無限】の奇跡の一部。生命の到達点。【完成なる者アンリミテッド】に至った者でもなければ、こんな地獄同然の環境で調査なんて出来ん」

 「おおー! 次から次へと設定がお出しされている……現実の魔術って、ほんと夢も希望も魔法少女もないなー」

 「ちょ、ちょっと待ってよ。第三奇跡まほう⁉  それってビッグバンとか宇宙創造説みたいなフィクションモドキじゃないの⁉」

 「あーひひろん~! 人類が頑張って宇宙の謎を解き明かしながらどうにかこうにかソレっぽい理屈を立てたのをフィクションって切り捨てるのは考えた人に失礼だよーいけないんだー! 」

 「う、そうね。ごめん。ってアンタも大概失礼でしょ。

でも、【無限】の奇跡か。あんたくらい出鱈目なら、おかしくないのかな?と言うより、そのくらいの方が逆に説明が付く……?」

 「ふーむ。ねえ境ちゃん。【無限】って、何がどう無限なの?授業だと日本史ならぬ魔導史の枠でちょっと先生が話した程度だったんだよね~」

 「図書室に本があったじゃない。読めば良いのに」

 「……ひひろん。うーちゃんね、あの地球全域の番号が記された電話帳みたいな本四冊分を読むのは若さに対する冒涜だと思うの」

 「アンタの発言は人類に対する冒涜よ」

 「そこまで言う⁉」

 「うーちゃんの質問の答えだが、言ってしまえば総てだ。

エネルギー量は言うに及ばず。生命力。腕力などの測定可能なものから。才能、感性といった抽象的な物まで『限り』を『無』にする奇跡(まほう)。それが【無限】だ。当然体力も無限なので、四台元素の中では最も『生かす』『殺す』と言った戦闘関係を得意としている。

 と言っても、同じ格の奇跡と戦ったところで決着はつかないけどな」

 「どうしてどうして?」

 「【時空】は文字通り『時』を操るから、寿命は尽きないし、体力だって『戻せる』。これは無限と同じだ。

 【夢幻】は夢や想像力が有れば幾らでも『何か』を生み出せる。寿命も、体力も。これも無限だ。

 【次元】に至っては平行世界から延々己と同じ存在を持って来れる。これもまた無限だ。

 ……だから決着が付かないんだよ」

 「おおすごい! 言ってることがなんにも分からない!」

 「そうか⁉」

 分かりやすく嚙み砕いて説明したつもりの境夜が思わず驚くが、日緋色は理解したようで、分かってない子を無視して続ける。

 「それじゃあ【次元】も【時空】も【夢幻】も、無限と同じことが出来るってことじゃない。もしかして【無限】って四台元素の中ではハズレなのって言うか相手も同じ【奇跡まほう使い】……って言えばいいんだっけ? とにかく【次元】の奇跡を使うわけでしょ?境夜の言ってることが正しければ、勝てないってことじゃないの?」


 「問題ない。学園から依頼を受ける時に資料を受け取ったが、敵の奇跡まほう|は、石を無理やり削って振りかけた程度のものでしかない。俺の【無限】と戦闘になることは無い。一方的に狩りとってお終いだ。

 【無限】に関しては、全てを知っているわけじゃないから、分からん」

 「持ち主なのにわかんないってどういうことよ?」

 「可能性すらも【無限】なんだ。宇宙が人間にとって無限の可能性に満ちているように、宇宙を創造した奇跡の可能性も無限。

想像力が白旗を上げない限り【無限】は無限に強くなる。そう言う意味では【無限】とは【夢幻】でもある」

 「ああ~~頭がチンプンカンプンしてきたよ~きょうちゃーん」

興味の無いことはメンドクサイだけな銀河うちゅうが、ぐったりして日緋色に寄りかかる。身体の小さな日緋色では当然支えるだけの力なんてないので、自然と魅傀の方まで傾く。

 「にゃあ~落ちちゃうよーうちゅうにゃんー」

 「って言うか重いのよ! 今すぐこの不快な乳袋をあたしの頭から退かせぇ‼」

 「言うほど膨らんでないよーDくらい?」

 「殺すわよ……!(ピキピキ)」

 「きゃーん。ひひろんこわーい♪」

 (楽しそうだなこの子たちは。戦場だっていうのに)

 まるで学校の教室の中みたいな光景に頬を緩ませていると、この次元に侵入してくる前に境夜が叩き割った地面から、魔力の光柱が空に上がった。

 「きゃっ⁉ な、何よこのバカみたいな魔力量は⁉」

 「あわわわわわ……⁉」

 「にゃあ⁉」

 「来たか。待ちわびたぞ。三か月……三か月だ……カレーが食えない三か月だ……‼」

 「よしよしにゃ」

 天に上がった魔力光が、空を覆うように拡がって溶け込んでいく。いずれメッキが剥がれるようにボロボロと何かが崩れ落ち、光の柱から真っ白な彫刻像が降りてくる。

 「何、あの女神像? かな? 良く見えないけど、どっかで見たような感じ。何か天使みたい……あ」

 「アレがラスボス? もっと悪魔悪魔しい感じなのを期待してたのに……あれ?  あの女神像って……」

 日緋色と銀河うちゅうの二人が息を飲んだ。二人の心はシンクロしている。同じだ。夢で視たあの彫刻だ。

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 「きゃあっ⁉ 何よコレ‼」

 「うえっ⁉ 彫刻が悲鳴上げてる! 耳痛っ⁉」

 「……にゃあ。血の涙」

 日緋色と銀河うちゅうは夢で視た光景と被っていたために、多少ぼんやりとしていたが、ギリギリでカタチを捕らえているだけだが、魅傀はその動物的な視力ではっきりと女神像の造詣。その細部が見えている。そんな彼女がまず気にしていたのは、目元から流している赤い液体。そして、悲しみと怒りに震える女性の悲鳴を聴いて、魅傀はアレを血の涙なのだと確信した。

 「ねえ、境夜にゃん。あの女神像は、何なの?」

魅傀の言葉に、それまで聞かれたことを隠しもせず答えていた境夜が僅かに言葉が詰まった。

 「…………どこにでもあるのに、まるで周知されていない狂気の被害者だ」

 「被害者?どういう意味にゃ?」

 「――ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー‼」

 魅傀の質問を遮るように、再び悲鳴を上げた女神像。その背後……天空には、雲も星も太陽も遮るほどの、魔法陣の天幕が出来上がっている。その数が百や千で足りる

 「な……何よアレ⁉」

 「夢で視た時は八つくらいしかなかったのに。まさかアレ全部から撃つつもりじゃ――」

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 悲鳴を合図に魔法陣が起動する。天空を覆う全ての魔法陣に魔力が注ぎ込まれ、極太の熱光線が放たれる。

 その威力を夢で視ている日緋色と銀河うちゅうは、それぞれ自分のMACを構えて相殺を試みた。

 「装填完了リロード・オン|! 非殺傷設定崩壊リミッターブレイク 魔力充填レディ‼ リーサルガン、砲撃バスター―‼」

 「非殺傷モード無効リミッター解除魔力解放マナオープン全注入シリンダーオン魔力弾連続掃射スターライト・デストロイヤー―‼」

 放たれた極太のレーザーは、一本一本が人を地面ごと焼き払うには充分な力を持っている。だが、裏を返せば一本でも相殺出来れば、どうにか安全地帯を確保できることになる。無論、衝撃の余波と広がる熱で焼け死ぬことは回避できないが、とにかくまずこれを防がなければどうにもならない。

 「こっのおおおおおおおおおおおおおおー‼」

 「うりゃああああああああああああああー‼」

 打ち合わせも無く、両者同じレーザーに攻撃し続ける。日緋色のREXは装弾数三発という関係上、どうしても途中で攻撃が途切れる。だが、落ちてくるベクトルと上がっていくベクトルがぶつかり合えば、重力の影響を多分に受ける為、落ちてくるベクトルの方が遥かに有利だ。

 それを下から受け止める形で抵抗するのだから、負担の差は計り知れない。ましてこちらは撃ち続ける必要があるが、あちらは撃ったらそのまま放置なのだ。不利に振り切れている天秤の秤は、二人の身体に容赦なく圧し掛かる。

 「ひひろにゃん! うちゅーにゃん! 頑張って‼」

 攻撃的な性能を持たない魅傀のMACでは加勢も出来ず、ただ応援することしか出来ない。

 「ぐうっ……! これ、やっばい!」

 (魔力のチャージはマックスだったのに、全然勢いが落ちてこないっっ!)

 「だめっ……! 撃ち負ける……‼」

 最大量の魔力を放出している反動を一身に受け続けている銀河うちゅうの全身は悲鳴を上げ続け、腕からは弾けるように血飛沫を上げている。

 一発の弾丸が恐るべき貫通力を誇る日緋色のリーサルガンも、撃ち出す反動は軽いものではなく、それを連射している日緋色の指は紫に変色して、更に握力も徐々に失われて行く。

 すでに死力をを尽くした後の二人は、更に戦う力と戦う身体を削られて限界だ。

 「たった一本の魔力砲ですら二人掛かりで打ち消せない。【魔術】と【奇跡まほう】にはそれだけ違いが出るんだ」

 そう言いながら、それまで後ろで見守っていた境夜が前に出て、三人を庇うように両腕を拡げた。

 「境夜……っ」

 「ちょ、危ないよきょーちゃん⁉」

止めきれなかったレーザーも、そもそも放置されていたレーザーも、全てが地上諸共 四人を焼き滅ぼそうと、あと一メートルまで迫っていた。


 「圧迫手あくはくしゅ


 パン‼


 拡げた手を一本締めのようにパンと鳴らす。ただそれだけの行為で、迫りくる数千の極太のレーザーは全て叩き潰されて霧散した。

 「ハァ、ハァ……で、出来るなら最初からやりなさいよ……」

 「無駄に疲れたよー!」

 「一発かましてやらないと気が済まないと言っていたから、やるだけやった方が諦めも付くかと思ってな」

 「アンタマジで後で覚えてなさいよ……!」

 「俺が悪いのか?」

 「悪くはないけどムカつくのよ!」

 「理不尽な」

 愉しそうにニヤリと笑った境夜は、そのまま女神像に向けて走り出す。

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 境夜が接近してきた瞬間、女神像が再び悲鳴を上げる。それを合図に、天空に敷き詰められた魔法陣が八か所に集約され、それぞれひとつの巨大な魔法陣を成形しなおした。

 その挙動は、明らかに境夜を警戒したものだ。

 「【次元の混命ボーダー・クォーター】。人造の奇跡がどれだけオレに近づくのか見せてみろ」

 助走を付けて跳び上がり、女神像に接近する。

 「おお! きょーちゃんジャンプ力やばっ!」

跳躍は約三十メートル。地上の生命としては異常としか言いようが無いが、天空まで届くはずもなく、いずれ重力に従い落下を始める。

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

そこを逃すまいと八つの魔法陣を起動してレーザーを準備する女神像。

 「何やってんのよ境夜! 無限の奇跡が使えるならジャンプ力も無限にしなさいよ‼」

 「そんな無茶苦茶な……あーあ。ひひろんが変なこと言うから落ちて来てるよー」

 「落ちてくるのは自然の摂理のせいであたしのせいじゃない!」

 「ひひろにゃん、ひひろにゃん」

 魅傀がちょんちょんと日緋色のつむじを突く。

 「何よ魅傀。旋毛押さないでよね。迷信とはいえ背が伸びなくなるなんて言われるようなことされると縁起悪いじゃない」

 「ごめんにゃ。でも、ほら。境夜にゃんを見てみるにゃ」

 「何よ?どうせアイツの出鱈目さ加減なら、落ちて来ても無傷なんでしょ?」

言いながら大体このぐらいかと予想した着地点の周囲を見渡す。だが、あの金髪の巨体は見当たらない。まさかもう一度跳んだのかと思って上を見れば、やはりいない。

 「? ねえ魅傀。アイツどこ行ったの?」

 「上にゃ」

 魅傀が指を指す方を見る。だがいない。代わりに見えるのは、魔法陣から放射されたレーザーが直線で曲がりながら飛んでいる光景だけ。光がクリスタルを描くようにして残留しているのが、幾何学的に美しさを演出している。

 「いないじゃない」

 「あっち! あ、あっちにゃ! ああーアッチにゃ‼」

 「ん~~? 全然分かんないんだけど、って言うか、みけみけが星座を繋げてるだけにしか見えないんだけど」

 魅傀が慌ただしく指し示す位置を変えて行く。銀河うちゅうも境夜の姿を探してみるが、まるで見えない。

 「とりあえず、きょーちゃんはどうやって飛んでるの? 魔力でぼーとか、翼生えてぴゅーんとか。飛び方が分かんないと軌道も読めないし探せないよ。あと、みけみけの視力がヤバいのも無限にあると思うけど」

 「そうね。あいつが飛んでたってもう驚かないけど、せめて状況が分からないと見つけられないわ」

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー‼」

 女神像の悲鳴が再び響く。怖くは無いが、声量が過剰に過ぎるためにいちいち身体が怯む。それに負けるまいと睨みながら見上げる日緋色。だが、視界は真っ黒だ。

 「あれ? 女神像がいない⁉」

 「ひひろにゃん。またさっきの島落としにゃ」

 驚愕する日緋色に対して、冷静な声で魅傀が返す。

 「みけみけ、ここに来てからずっと驚かないね。感情どうしたの? 怖い気持ちどっか落とした?」

 「にゃあ。その言い方じゃ、ミケがロボットみたいにゃ」

心外にゃ。とむくれる魅傀。その表情からは、とても感情が喪われたようには思えない。

 「それに、うちゅーにゃんも、ひひろにゃんも、もうあんまり怖がってないにゃ」

 「んー。まあ、そうかもね~」

 魅傀の指摘にあははと笑って答える銀河うちゅう。おちゃらけたその様子に は、たしかに恐怖は読み取れない。同じく日緋色も、恐怖よりも、一種の呆れの方が強いようで。

 「だって仕方ないじゃない。どうせアイツがなんとかしてくれるんでしょ。なんか慣れちゃったわよ。アイツ本当に……」

 日緋色の期待あきれに応えるように、さっき境夜が受け止めたのと同じサイズの大きさの島が真っ二つに割れる。そして何かを殴りつける音がして、二つに割れた島の塊が左右に吹き飛んでいった。


 「存在が【奇跡まほう】そのものなんだもの」


 それからすぐに境夜が空から降りてくる。片膝を付いた良い子はマネしちゃいけないヒーロー着地だ。

 「おかえり。どこ行ってたの?」

 「ん? 戦っていたぞ。天空あそこで」

 「あーはいはい。翼でも生やした? それとも魔力でぶわー?」

 「いや、空気を踏んで足場にして跳びまわったんだ」

 「あーそうなんだね凄い凄い。じゃあついでに」

 理解することを完全に諦めた日緋色は、着地の体制のままの境夜の頭を撫でながら、他人事のように天空からの更なる追撃を指さして。

 「また撃ってこようとしてるレーザーもなんとかしてもらえる?」

 「任せておけ」

 境夜が振り向くと、女神像は悲鳴と共にレーザーを射出する。境夜は自身の両手を 胸筋の前で構えると、手のひらの間に球体の超高密度魔力丸を造り出してブーメランでも投げるようなフォームで撃ち出した。

 「はあっ‼」

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 天空を覆い尽くす数から集約された八つの魔法陣。そこから放たれるレーザーは日緋色と銀河うちゅうが対抗していた物とは比にならない威力になっていて、大地に近づくごとに土も木々も崩れて行く。そんなものが一点に集中して撃たれているにも関わらず、境夜の撃ち出した魔力丸はそれを全て薙ぎ払いながら女神像に直撃した。

 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 「いやほんとに凄いわアイツ」

 「いいぞー! きょうちゃーん! やったれー!」

 「境夜にゃんカッコいいにゃー‼」

 声援を受けた境夜は、気恥ずかしそうにしつつ、何か思いついたのか日緋色に近寄った。

 「日緋色。あの銃貸してくれないか?」

 「銃って、REXを? 貸してもいいけど、アンタの呼び捨てが気に入らないわねえ」

 「代わりに一発かましてやるから」

 「ふーん? そういうことなら、まあいいか。はい。

 間違っても 握 り 潰 す ん じ ゃ な い わ よ ? 」

 「大丈夫だ。多分」

 「オイこら、今はっきり聞こえたわよ⁉」

 「…………」

 日緋色の怒りを無視してREXを受け取ると、そのまま天空に向けて構える。

 「あ! そもそもアンタ使い方知らないでしょ⁉ 薬莢カートリッジ撃ち尽くしたからまずチャージを……おい聞け!」

 「問題ない。こういう魔導具は基本設計の段階で外部から魔力を込める為の魔力光玉が組み込まれているんだ。ちなみにREXの場合は、このトリガーの上辺りの如何 にもな紅玉だ。

 だから容量を超えない程度に魔力を込めてやれば……」

境夜の魔力補充に呼応して、REXが吼える。口の部分が大きく開いて射出口が二倍になった。

 「それって……アンタまさか⁉」

 「こう見えて昔は、色んな武器を使ったこともあったんだ。

 見せてやるよ。この武器の本当の性能。魅傀は耳を塞いだほうがいい」

 「にゃあ」

 「ちょ、ちょっと! それまだアタシだって使ったことないのに!」

 「――デストラクションブラスター」

 「ああああああああああああああーー‼」

 カチン。トリガーを押して、込めた魔力を解放する。可視化された魔力は、境夜が撃った魔力丸の大きさを優に超えている。境夜が発射の衝撃を感じて少ししてから……


 ドン――‼


 振動に遅れて音が鳴り響き、鼓膜を震わせる。撃ち放たれたデストラクションは大 きな魔力丸を中心に、惑星の恒星のような少しサイズの小さい球が周囲に八つほど付き従って女神像に突き進む。

 「アアアアアアアアアアアアーー‼」

だが、女神像もむざむざ受けるつもりはない。島落としをした時と同じように天空に巨大な次元の穴を空けて、別次元から何かを出現させる。

 「また島を落とすつもり⁉ ちょっとアンタ‼ 気軽に別世界から島一つ消してんじゃないわよ‼」

 「そうだそうだー! 島だって落とされると思って生まれてないんだぞー」

 「だいたい落とすなら海水で充分でしょうが!」

 「そうだそうだー! ……いや、実際にそんなの落とされたらたまったもんじゃないからひひろんは今すぐ口を閉じて」

 日緋色の言葉を知ってか知らずが、空間に空いた穴からは島ではなく大量の水が落ちてきた。

 それも滝と呼ぶのも烏滸がましいほどの、まるで惑星全ての海水を流し込むような物量に、放たれた魔力丸は大爆発を起こしはしたものの、それも流し尽くす激流が押し迫る。

 「あれ?なんか本当に水が落ちて来てない?

しかも、地球最後の日を早送りしてるんじゃないってくらいの水が落ちて来てるんだけど」

 「あーあ。ひひろんがフラグ立てるから」

 「きっと、深海とかに通じる穴を空けたにゃ。

ひひろにゃんの軽率な発言のせいで、今どこかの地球は干からびた死の星になってるにゃ」

 「…………あーえっと。境夜、あの海水はどうにか出来る?」

 「ひひろん逃げ方がきょーちゃんに依存しすぎだよ」

 「さすがに地球上の全ての海水は拍手しても潰しきれない。俺だけなら別に気にしなくてもいいんだけどな」

 「あー! きょうちゃんがさらっとうちゅー達を足手まとい扱いしたー! きょーちゃん、真実を語ることは時に人を――お?」

 丸太でも担ぐようにひょいと銀河うちゅうを持ち上げる境夜。

 「すまん、うーちゃん。ちょっと飛んでくれ」

 「え? ちょ? 何?うーちゃん星になるの?」

 「フン!」

 水の影響を受けない場所を狙って空に向かって直角に投げつける。

 「うひゃああああああああああああああああーー⁉」

 「銀河うちゅうー⁉ちょっと境夜あんた何して――」

 「すまん」

 「え⁉ ちょ、ヤダ待ってごめんなさい‼」

 続いて日緋色を猫のようにつまみ上げて。

 「うりゃあ!」

 「きゃあああああああああああああああああーー⁉」

 海水が降ってくる高さと同じかそれ以上の高さに放っていく。

 そして最後に。

 「にゃあ~~!(キラキラした目)」

 両手を広げて満面の笑みで、今か今かと自分の番を待つ魅傀、をそのままにして。

 「はあっ‼」

 海水の着地点となる島の土地を殴り砕いて直接海に放流されるようにした。

 「ひゃあああああああああああああああーー‼」

 「よっと」

 「うああああああああああああああああーー‼」

 「ほっと」

 落下してくる二人を衝撃を逃がしながら受け止めてすぐに軽めに放りなおした。

 「何でえええええーー⁉」

 「きゃあああああー―⁉」

 「よいしょっと」

 そして最後に二人を受け止めなおして、ようやく地上に降ろされた。数秒間生きた 心地のしなかった日緋色と銀河うちゅうは、自分が生きていることをしっかり認識してから……。

 「うりゃあ‼」

 「おりゃあ‼」

 バキッ‼

 「いて」

 思いっきり境夜の脛を蹴った。

 「「殺す気かぁ‼」」

 「助けたんだが」

 「やり方ってもんがあるでしょうがこんちくしょう‼」

 「うーちゃんちょっと漏らすかと思ったんですけど⁉」

 「大体何で魅傀は地上にそのままなのよ⁉」

 「一番空中適正高いじゃん‼」

 「にゃあ……さみしい。このドキドキはどうしたらいいの?」

 「間違って島を割りすぎた時に三人を一気に運ぶには、ちょっと力加減に不安が残ったから保険として。最悪のケースでも、魅傀なら自分の魔導具で自衛出来ると踏んでだな――」

 「ほら次来たわよ‼ よそ見してないで戦え境夜‼」

 「そして戦いが終わったらスイーツで埋め合わせして貰おうか!」

 「……理不尽だ」

 「魅傀も後で高い高いして欲しいにゃー……」

 「分かった。そうしよう」

 日緋色の言う通りに女神像は次の攻撃に移るべく魔法陣を起動する。


 バリン――‼


 「――⁉」

 突如背後の魔法陣が砕け散り、動揺の声を上げる女神像。

 「思ったよりこの銃、容量が大きいな……これならもう少し注いでもいいか」

バリンバリンバリン――‼

REXのデストラクションモードを正確に照準を合わせて三枚を同時に撃ち抜く。

 「アイツ……平然と人の武器つかいこなしてんじゃないわよ……」

神業を披露した境夜に掛けられた声は、暖かい声援ではなく、本来の持ち主の心無い罵倒だった。悲しすぎる扱いに心で泣きつつ、残った四枚の魔法陣も正確に撃ち抜いた。

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー―⁉」

 「これでもう守りを気にしなくていいな。そろそろ終わらせよう。いい加減ダメージが酷い」

 主に背後の先輩二人のせいで。

 足場はぶっ壊してしまったので、助走無しで垂直に上に跳び上がり、落下する前に脚部に力を入れて何もない空間を踏みしめて更に高く跳び上がる。

 「うわっ! マジで何もない場所で跳んでる‼」

 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 女神像はヤケクソになったのか、もう打つ手が無いのか。クジラやサメ、ダイオウイカなど、水を抜いた海にいたのであろう生物を落として来た。

 「ふっ! はっ! せい!」

 それを殺さないように海に放りつつ、跳び上がる速度を緩めない境夜。拳を握り、とうとう肉薄したその位置で拳を振り上げて……

 「――――。――」

 女神像を全身で貫いた。

 「やったか⁉」

 スパン! ←銀河うちゅうが日緋色に殴られる音

 「ごめんなさいぃ……」

 「今度余計なこと言ったら首から上を飛ばすわよ?」

 「怖っ⁉」

 女神像に大穴が空いたことを確認した境夜は、重力に逆らうことを止めて落ち始める。ついでに像も回収しようと手を伸ばす。


 バサッ‼


 「何⁉」

 女神像の穴から白い翼が生えてきた。

 「何だ、これは」


 “時ハ満チタ……。

 【次元】の欠片。母なる者の死。そして、オリジナルの魔力ト、存在の設計 図…………”

 「――まさか!」


 “我【次元の混命ボーダー・クォーター也】”


 それを見た境夜は何かに思い至ったのか、落ちる軌道を変えて三人の元に飛び降りた。

 「きゃっ⁉ 何よ血相変えて?」

 「――遊びの時間は終わった」

 それだけ言うと、壁ドンのように三人の背後を殴りつける。もちろん、そこには何もない空間が広がっているだけ。

 ミシミシと音を立てて、バリンという一際目立つ音が聞こえたあと、そこには【次元】の穴が空いていた。

 「今すぐ逃げろ‼」

 「は⁉ どうしたって言うのよ⁉」

 「な、何か分かんないけど言う通りにしとこうひひろん! こういう時に戸惑ってると絶対にろくなことにならない!」

 「アンタが変なフラグ立てたからでしょうがー‼」

 「ごめんってー!」

 六年前に戦争よりも酷い大災害に巻き込まれた経験上、命が惜しければ説明を求めるよりも言われたとおりに動く方が確実に状況を悪くしないと学んでいた二人の行動は早かった。言い争いをしながら、既に身体は次元の穴の中だ。

そんな中、魅傀は少しだけ戸惑いを見せた。強い信頼を寄せていた初恋の人を死地に置いて行くことに躊躇している。

 「……境夜にゃん……」

 「……すまない。ただの欠片だけなら、どうにでもする自信があったが、もうダメだ。

 最悪の場合、護り切れない」

 「…………やくそく、忘れちゃだめだよ」

 「ああ」

 ほんの僅かな猶予を使い、精一杯の言葉を交わして、思い人の邪魔にならぬよう、犬飼魅傀も、その場を去って行った。

 ここから先は、誰も知らない神話の世界。人が見ることの叶わない、究極者同士の……戦争だ。


 「…………」

 魅傀が無事に逃げたのを見届けると、境夜は降りてくる何者かを待ち構えた。

 バサリ。翼の羽ばたく音がして、女神像から出てきたソレは、叩き割られた島に降り立つ。


 まず目に入るのは、天使のような白い翼。そして、その下に生えている蝙蝠のような紫色の翼だ。そして、全身が赤く染まった、境夜と並んでも見劣りしない筋骨隆々な肉体。これまで屠られてきたTCSと同じ怪腕となった右腕。胸部にはひし形のクリスタルが埋め込まれており、下半身は捨てられた赤子を包むような布が巻かれている。

 そして、顔。境夜と同じく、獣のような顔立ちをしていながら、正反対の泣き顔をしている。


 『ヒトの手が加えられたカオスを……命を弄んだ先の顛末を示す。理不尽ですら侮蔑也。我が母の十年の生涯を穢した蛮行を許さぬ。』


 「…………お前は、実験体の……『岸辺織羽』の怨念か?」


 「天網恢恢疎にして漏らさず。生命を弄び、死を嘲笑う蛮行に裁きを。


 裁く神も無く、拾う神も無き世に裁定を下し、ヒトの世にヒトの狂気…………共愚劣なる惑星ほしに終焉を」


 「…………まあ、そうなるな。

だがお前の復讐を見逃すわけには行かない。母とも呼べる存在への義理を果たす気持ちを否定はしないが、お前の怨敵、森羅継國を殺しても……世界から戦争バカ|は無くならない」


 「…………なら、オリジナルを滅ぼし、【次元】と【無限】の二つを担い、あの穢れた惑星に滅びをもたらさん」


 「ああ。せめてお前の……お前たちの怒りを受け止めよう。それが、俺に出来るせめてもの手向けの花だ。

 人造の奇跡、その真価を見せてみるがいい」


 「惑星ほしに滅びを‼ 愚者に裁きを‼」


 境夜、【次元の混命ボーダー・クォーター】の両名は同時に腕を伸ばす。境夜は敵に。敵は真横に。

 境夜の行動はシンプルだ。【無限】の魔力に任せて超高出力の『魔力砲』を放出するだけ。対して【次元の混命ボーダー・クォーター】は、突き出した手の先に魔法陣が描かれて、瞬時に【次元の混命ボーダー・クォーター】の全身を通り抜けて空へ向かった。その様子は、まるでコンピューターのスキャンでもしているかのようだ。

 そのすぐ後、海を抉るほどのエネルギーの放出により、敵は全身をバラバラにされて肉片も残さず葬り去られた。

 「はああああああああああっ‼」

 敵を葬ったにも関わらず、境夜は魔力の放出を続けて、左腕を未だ移動中の魔法陣を追いかけるように翳し続ける。その手の先には、バラバラに葬ったはずの【次元の混命ボーダー・クォーター】の肉体。魔法陣が移動するごとに二つ、三つと増えて行く敵の肉体。【次元】の奇跡によって、メタバース世界から自身と同一の存在を次々にこの次元に召喚し続けることで疑似的に再現される無限の肉体。それらは命を賭して更なる魔法陣を生み出し、同一存在の複製効率を二倍、三倍と上げて行き、ついには四方八方に散らばった。

 今度は自分が攻撃する番だと、散らばった副生体たちが境夜目掛けて【奇跡まほう】を使用した。

 「隕石落としメテオ・ゲート

 宇宙空間に点在する星に成れなかった固体物質を【次元】の奇跡で吸い寄せて落とす対惑星攻撃用奇跡まほうによって召喚された隕石が次々と地表に向かって落下していく。

 「はあっ‼」

 落ちてくる隕石に怯みもせずに、放出中の魔力砲を鞭のようにぶつける境夜。しかし、一つ二つを破壊することは出来ても、残った隕石が境夜を直撃する。

 地上に激突した隕石から、音の壁を打ち破った鈍い音が響く。周囲の海に落ちたものもあって、津波が巻き起こり、ただでさえ地球一つ分増えた海水により侵食されていた島を、一瞬で飲み込んだ。

 「地上の断罪、浄化の水。これこそが人の世を洗い流す福音也」

空に飛んでいて増え続けている何千、何万もの【次元の混命ボーダー・クォーター】はまるでその影響を受けず、更に追撃をかけるべく、新たな星の成りそこないを召喚し続ける。

 抉られて行く地球ほし爆風ひめいを上げ、海水おえつを吐き出し、大地ひふを焼かれていく。大気圏を超えて落ちる隕石の熱に宛てられて温度を上げて行く海や、地平線の向こうで燃えている木々や家々。誰もいないこの場所が、誰も住めない地獄へ変貌していく。

 そんな海の中でも。神条境夜は当たり前のように生存し、【次元の混命ボーダー・クォーター】の真下まで潜水して移動すると地に足付くまで潜り続け、自らの拳でマントルまで届く穴を空ける。

 「何だと……⁉」

 惑星の核となる熱と、海水の温度によって異常な蒸気が吹き上がり、地球の熱そのものが直撃した【次元の混命ボーダー・クォーター】数千体を絶命に追いやる。代償として干上がった元海、地表に立った境夜は、日本列島を覆いつくす程の体積の魔力球を造り発射する。更に数万、数億体の【次元の混命ボーダー・クォーター】が消えていく。

 「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああーー‼」

 チリのように消されて行く【次元の混命ボーダー・クォーター】。その全ては命であり、意志ある者。死を受け入れがたしとする生存本能も持ち合わせる。そんな存在が死に恐れを感じないはずもなく、絶叫を上げて行く。

 境夜は思う。これでは、戦争と同じだ。必然性も無く戦わされ、意味も無く価値も無く殺されて行く命。最も罪深き者は安全な場所で笑っているだろうに……!

 

 「これが……裁きの必然性。

これが……破壊の必要性。

これらが、終焉を齎す最初の神の鉄槌と成る」

 

 泣き顔のまま、血の涙を流した【次元の混命ボーダー・クォーター】は、殺された数億の自分を補填し、更に数億を召喚し、奇跡を振るう。


 「神は誰も救わない。神は誰も裁かない。神は誰も……愛さない。

ゆえに、我が神となり、この手を振るおう。

まるで成長しない、終わった世界に終焉を」


 全ての【次元の混命ボーダー・クォーター】が一斉に天空に手を翳す。すると、それまでの隕石とは比較にならない大きさの火球が一つ振ってくる。


 「「「破壊の彗星メガトン・フォール」」」


 凄まじいスピードで地上に激突した火球の衝撃に曝された海は一瞬で蒸発し、抉り取られた大地は、あまりの深さから一部マントルがむき出しになっている。それは正しく地獄。かつて恐竜がそうだったように、この惑星に生命体が有れば絶滅は必須。島も大陸も分け隔てなく更地と化し、国境も差別も特別扱いも存在しない、公平な鉄槌だ。


 「…………これが、お前の望んだ裁きのカタチか。凡庸だ。神に成りたがる人そのものだ」


 そんな中で惑星の法則の中に存在しない【奇跡】が一柱ひとつ

 金髪の巨人が立っているその場所だけは、土も、草も、水も、消えることなく残留している。


 「何故だ……【無限】も【次元】も、同格の奇跡のはず……何故こうも、一方的に差し引かれる?」


 「同じ武器を持った戦士同士が戦い、決着が付かない。そのようなことがあると思うか?」


 「馬鹿な。我が劣っているというのか……オリジナル……神条境夜を生み出すための『神羅計画』によって生まれた我が……?

 幾星霜もの命を辱めてたどり着いた人為的な奇跡……神たる我が劣っている……っっ。


 ――犠牲にされた者たちの踏みにじられた全てが……無為に終わると言うのかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ”あああああああああああああああああああああああーー‼」


 怒号が鳴り響く。怒りが。

 これまでの計画で実験で使われた遺体の数々を悼んだ嘆きが響く。


 「多重次元召喚‼」


 【次元の混命ボーダー・クォーター】達は魔法陣から新たな力を召喚した。


 蝙蝠のような翼と、角に牙が特徴的な悪魔。四本の腕に金棒を持った鬼。言わずと知れた龍。


 「異世界の悪魔族、鬼に、龍……か。召喚術は【次元】の得意分野だが、召喚したところで従えるが出来るかどうかは別問題だ」


 「従える意味などない。いずれも異世界の最強種だ。捨て置いても破壊を選ぶ‼」

 【次元の混命ボーダー・クォーター】の言葉を肯定するように、悪魔の口か ら魔力砲が放たれる。

 「グオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 敵も味方も、生も物も関係の無い攻撃が周囲を襲う。


 境夜も、【次元の混命ボーダー・クォーター】も、諸共攻撃している。

 「ぬっ……!」

 悪魔の心臓狙いの攻撃を避けもせず直撃した境夜は、魔力の物理衝撃で僅かに身体が後ろに下がる。

 「フフフフフフ……!フハハハハハーー‼」

一方、【次元の混命ボーダー・クォーター】に向かってきた攻撃は、それまでの境夜の攻撃とは異なり、途中でどこかに消え失せてしまった。

 「【無限】の担い手とは言え悪魔族の魔王の攻撃は痛いか? なら更にくれてやろう!」

 「ぬっ⁉」

 【次元の混命(ボーダー・クォーター)】の宣言と共に境夜は背後から衝撃を感じた。

 「フハハハハハハ‼ 『自業自得の返し』。今回は特別に魔王の攻撃に使ってやろう‼」

 「……ずいぶん嬉しそうだな。敵の攻撃を吸収し、別次元に送った後に送った場所から再度召喚。俺の魔力砲に使わなかったのは、門が耐えられないと悟ったからか?」

 「ふん! 負け惜しみを――」

 「はっ‼」

 【次元の混命ボーダー・クォーター】が言い終わる前に、境夜は右手を悪魔にかざして魔力砲を撃ち込んだ。

 「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

境夜の攻撃に反応した悪魔も同じく魔力砲を口から放つ。

 だが

 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー⁉」

 一瞬たりもとも力が拮抗することもなく、魔王だったらしい悪魔は吹き飛ばされた。

 「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーー‼」

それを見た鬼の判断は早く、境夜に四つの腕の金棒で襲い掛かる。身長はおおよそ同じ位。振り下ろした金棒は境夜の頭目掛けて行き……

 「ふっ!」

 物理法則から外れる握力で圧縮されてしまった。

 「ナンダト⁉ ナラバコレデドウダ‼」

 武器の一つを潰された鬼は、三本同時に金棒を振るう。境夜の手は二本。鬼は四本。有利は鬼にある。

 「はっ!」

 だが、有利は境夜の右腕一本で弾き飛ばされた。一回振り抜くだけで、三本の金棒は弾き飛ばされた。

 「バカナ‼ ニンゲンゴトキガ‼」

 「俺が人間か……久しぶりにそう言われたな」

 愉しそうにそう言いながら、手を差し出す。

 「何ノ真似ダ?」

 「臆せず来るか? それとも逃げるか? 帰り道なら俺が拓いてやろう。拳でな」

 「ニンゲンガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーー‼」

 怒り狂って差し出された手を握りそうと力を込める。だが……

 「この程度か? 鬼の力」

 「嘗メルナニンゲンンンンンンンンンンンンンンンンンンンーー‼」

 怒りの咆哮を上げた鬼を、気にもせずに持ち上げた境夜は、そのまま宙に放り上げた。

 「ヌウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアアーーーー⁉」

 「人間を舐めるな。知恵泣き・・子よ」

飛ぶことが出来ない鬼は、重力に従い落下して、そのままハエを払うような手付きで五体を木っ端みじんに吹き飛ばされた。

 「……俺は、ヒトではないだろうがな」

 最後に残ったのは龍。生命の中でも幻想種と同格。生命・種族の頂点たる存在だ。


 「…………」

 『…………』

 両者視線を合わせて佇むだけ。どちらが動く様子も無く、戦う予兆も無い。

 「…………どうする?龍種」

 『…………止めておこう』

 「そうか。道は要るか?」

 『心遣いにのみ感謝しよう』

 「そうか」


 龍は戦いを拒み、自らの力で次元の壁を破って消えて行く。


 「【無限の奇跡まほう】……その名に恥じぬ力か」


 惑星の命そのものを滅ぼす彗星の一撃すら意に介さず、召喚した異世界の最強の種も物の数にならない【無限】の担い手に、生まれたばかりの【次元】の奇跡の担い手は賞賛の声を漏らした。

 「【次元の奇跡まほう】……宇宙を創造する上で最初に生まれた第一の奇跡。宇宙創造以前の【無】に対抗した力。

 その本来の真価は空間と境界の支配。次元の壁を越えて何かを持ってくることなど副産物に過ぎない。だと言うのに、お前はそれしかやっていない。

その発想では、お前は人の枠を超えられない。神に足りうる器ではない」

 「……そうか。真の【奇跡まほう使い】から見れば、やはりこれは児戯か」

 「人間の脳では『限界』がある。【次元】も【時空】も【夢幻】も。等しく人には分不相応なオモチャに過ぎない。お前が森羅継國に埋め込まれた【次元】の欠片も、新たな死体を手に入れる程度の浅い思慮での利用目的に過ぎない。

 俺に言わせれば、お前も翼が生えただけで、他の人間と大差が無い。見た目など、人かどうかを判別するにはあまりにも心もとない判断材料だ。


 機械の身体でも人に至れる世界を視た。


 獣の姿でも人に成れる世界を視た。


 天使も、悪魔も、鬼も、龍も。すべては同じ。殺せば死ぬ命なんだ ・・・・・・・・・


 「……そうだ。命だ。だから我が母は森羅継國に実験体として弄ばれ、我と言う 『命』が………………ああ、そうか。そう言うことか」


 「気付いた・・・・か。なら、それでいい」


 焦土と化した地平を見渡し、隕石の影響で灰に包まれた天空を観て、境夜は太陽を浴びるように両手を拡げた。何をしているのか、人の身では理解出来ない。だが、 【次元の混命ボーダー・クォーター】はソレを理解しているらしく。


 「良いだろう。母の命は十年だった。私の命は十分だった。親子の悲願を果たせぬ雪辱。否…………せめてもの八つ当たりだ。小僧の癇癪と思って、受けてもらうぞ神条境夜‼」


 その言葉と共に、一瞬で惑星の全ては飲み込まれ、消えてなくなった。


 音も無く、反動も無く、威力も無く。飲み込んだソレは、突然現れて、総てを喰らった。


 宇宙空間の喰らう者。それが存在すれば一瞬で全てを飲み込む暗黒の星。

 「ブラックホール。何もかも無かったことにするつもりってことか……」


 【次元の混命ボーダー・クォーター】の八つ当たりで召喚された暴食者。召喚者自らも喰らわれる巨大な死の星。それにより、地球はおろか、太陽系全てが飲み込まれた結果。世界は暗黒に満たされる。


 「…………なぜ生きて、何故殺されるのか。死ぬと分かっていて、何故生きるのか?人はその命題と矛盾から逃れることも出来ず、目を逸らす。或いは……直視しすぎて壊れる」


 神条境夜もまた、ブラックホールの重力の渦の中で揺蕩っている。近づくものを飲み込む引力は、いかに【無限】の奇跡であっても変わらない。


 「人が命の在り方に干渉すれば、必ず何かが狂って壊れる。その結果、人間はいつか破滅する。


 【次元の混命ボーダー・クォーター】。人の愚かさの犠牲者の落とし子。


 個人的な復讐で全てを破壊していてはキリが無い。


 全て壊して無にすれば、壊さなくて良いものまで壊してしまう。


 命……愛……欲望……変化……世界が続いていくための希望(まほう)まで壊していては先が無い」


 拳を握りこむ。



 「一秒先に滅びを迎える世界など、誰も欲しくはない」

 

 握りこんだ先の拳が発光し、徐々に金色に侵食されて行く。

 

 「戦争も、破滅も、復讐も、悔恨も。全ては誰かを不幸にする我儘だ…………」

 

 腕先の金色が全身を覆いむと、境夜は全身をバッと拡げて、ブラックホールの重力の渦を払いのけて宙に浮いた。

 

「【次元の混命ボーダー・クォーター】。俺は探しているんだ。誰もが幸福になる世界を。

 お前の母の仇はいずれ俺が取ってやる。だから今は…………」

 

 両腕を胸の前でクロスして、力を溜める。

 

 「お前の母が生まれた世界の存続を、諦めゆるしてやってくれ」

 

 誰も聞いていない言葉を最後に、溜め込んだ【無限】の力を解放し……

 

 「根源想起ワールド・リグレイション

 

 【次元】の奇跡(まほう)に創造された、偽りの宇宙せかいを消滅させた。

 

 

 

 一週間後。

 校長室の中で導真学園校長――林堂薫は、森羅継國に事の顛末を報告していた。

 「以上が、聞き取りで纏めた今回の事の顛末だよ」

 モニターに映る白髪の老人に嫌悪感丸出しで目を逸らしながら報告書を読み上げ終わった薫は、今すぐにでもモニターの電源を切ってやりたい衝動に駆られるが、残念 ながらこちら側からそれを実行する手段が無いため、向こうの反応を待たざるを得なかった。

 「ふむふむ。なるほどのう……まさか死体が材料になった失敗作から生命が誕生するとは……いやはや。まさしく奇跡・・の所業よなあ」

 「……そもそもジジイ。お前は何故【奇跡の欠片】なんてものを実験体に埋め込んだんだい?

 いくらアンタの地位であっても、『【COSMOS】の至宝』のひとつをそんな適当に扱う権利なんかあるとは思えないんだがねえ」

 「フッフッフ……なぁに。組み込んだのはほんの砂粒くらいのものよ。爪でひっかいて僅かに付着した物を、気まぐれに振りかけてみたのよ。

 そしたらなんと嬉しいことに、そんな砂粒が成長を遂げて、元はただの小娘だった実験体が【次元】の奇跡のほんの一部を宿して、実験室から逃亡、更に他の実験体の強奪までに至ったのだから、行幸も行幸よ。まして、それが子を生み出し、神条境夜との接触があったとは言え、その『子』まで【次元】の奇跡を宿した。それも母体よりも遥かに強力な奇跡だ‼

 これが他の実験体でも同じことが起こせるなら、【次元】の奇跡を人為的に量産出来るやもしれぬ! フハハハハハハハハー‼ 笑いが止まらんわ」

 「人の命をそこまで軽んじられるとはね。恐れ入ったよ妖怪ジジイ」

それまで逸らしていた目を合わせて憎悪を向ける薫。だが、継國はそれすらもおかしいらしく、一層笑い声が大きくなる。

 「ハァ……残念なのは、あの巨人が死に損なった生徒達を一人残らず命を救ってしまったことかのう」

 それまでの高笑いから一転。自分の学校の生徒が一人も死ななかったことに肩を落とす妖怪クソジジイ。

 「はん! 神条境夜が『神の手』なんて呼ばれる救命のプロフェッショナルであることは、アンタも知っているはずだろうが」

 「それはもちろん知っておるが、あの破壊神が関わりも無い人間を助けるとは思わなんだわ」

 「ふん……」

 鼻を鳴らした薫は、その時の様子を思い返していた。確かに境夜は、TCSにボロボロにされた生徒を助けることを疑問視していた。

 と言うのも、彼は死を遠ざけることが出来るだけで、壊れた物を治せるわけじゃない。具体的には、ボロボロに砕かれた足を治して義足生活になる未来を遠ざけることが出来ない。砕かれた背骨を治して下半身不随を治すコトが出来ない。ぐしゃぐしゃにされた顔を戻して元の美人だった顔に戻すことが出来ないのだ。

 『死なせてやった方が幸せなんじゃないのか?』

 冷たいことを言っているように聞こえるが、命を救うということは、それだけの責任が伴う。生き残らせてはい終わりと言うには、損傷が激しい人が多すぎる。

 (あの時代遅れのリーゼントが説得しなければ、おそらく本当にそうなっていただろうね)


 『仲間を救えるのならお頼み申す‼ 生き残った仲間たちが「死んでいたかった」と言った時は、ワシも一緒に死ぬ覚悟だ・・・・・・・・


どうか、どうかお頼み申すううううううううううううううううううううううーーーーーーー‼』


 (骨がボロボロな腕でしがみ付いて離れない姿と覚悟に胸を撃たれる辺り、アイツも充分に人間の心があるんだがね)

 「それで、報告はもういいかい? アンタのツラと声は寿命に悪いから早く切って欲しいんがね」

 「ああ。それでは最後にこれだけ聞いておこうか。

神条境夜は、今何をしている?」

 「ああ……あの小僧なら今頃――」




 薫との通信を切って、森羅継國は二時間棒立ちさせていた斉木が持っていた物を受け取ってさっさと下がらせる。

 「フフ……フフフフフフ!」

 受け取った物を見ながら気持ち悪い笑顔でニヤニヤしながら、この妖怪は何を思うのか。

 「これが、神条境夜の【無限】の奇跡とDNAマップを吸収したTCSの残骸か……ウヒヒ……‼ これが有れば創れる。今度こそ。完璧な【奇跡まほう】を内蔵した新人類……【完成なる者アンリミテッド】が‼


 これで……今度こそ。ワシが不死と成る。キヒッ!キヒヒ!キヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャーー‼」

 歳も考えず高笑いが止まらない醜悪な姿。どれだけ老いさらばえようとも、死を前にした俗物の悲願など、こんなものだ。

 「さあて……またどこぞの【次元】からモルモットをかき集めさせなければのう」




 同じころ。

 自然と人間の過ごしやすさが同居した山中にて。

 「にゃあああああああああああああああああああああああ――‼」

 「よっと。もういいか?」

 「やー。もっともっとー! 一週間もお預けされたミケの心は思いっきり飛び出したいにゃー‼」

 「飛び出しているのは身体だと思うが。まあ、いいか。それっ」

 「にゃーー‼」

 綺麗な青空、済んだ空気の中で山登りに来ていた若い男女。周囲には誰もいない。そんな状況でやることと言えば一つ。思いっきり声を出して遊ぶことだ。出来そうで そうそう出来ることじゃないこれを、魅傀は以前お預けをくらっていた高い高いを境夜にして貰うことで実現していた。安全に配慮して東京タワーのてっぺん程度の高さに調整された高度の『高い高い』を山の上から受けていた魅傀は、日本全てを見渡しているような気分で解放感に浸っている。

 「…………まさか俺が、こんな普通な遊びをする日がくるとはな」

 「にゃあ?」

 魅傀を受け止めた境夜がしみじみと口にする。

 「ああ、いや。俺は昔から力が強かったし、ガキの頃は少年兵だったしで、こんな風に遊ぶことなんてなくてな。少し、感動したんだ」

 「そっかぁ……じゃあ、魅傀と同じだね!」

 「? 同じ? どういうことだ?」

 「犬飼家は、昔から犬の神霊や使い魔を使役して国の政に関わってきた古い家系の分家なんだよ。

 なのに、魅傀の耳と尻尾。これって生まれた時にはもう生えててね。宗家の偉い人たちはお父さんとお母さんを物凄く責めたの。犬神を使役し力を高めてきた一族の恥さらしだって。


 ずっとそう言われてたから、私も遊ぶとか、それどころじゃなくって。お父さんもお母さんも、私を手放すチャンスだって、導真学園に私を送ったんだよ」

 そう語る魅傀の表情は、悲しそうであるはずなのに、どこか感情が喪われているようにも見える。

 「【大神災】の時にお家が壊れて、偶然私が隔離されていた場所から逃げ出せなかったら、ひひろにゃんにもうちゅーにゃんにも会えなかったくらいに、ずっと監禁してたのに、あっさり捨てられちゃったにゃ」

 「……そうか、お前もそんな調子だったのか」

 「うん。だからね、魅傀にとっては二人が初めての親友で……境夜にゃんが、最初に見た親族以外の男の子だったの。初めて会った男の子が境夜にゃんだったから、魅傀はずっと初恋を忘れられなかったよ。だって、あんな衝撃的な出会いも、どんな怖いことからも守ってくる力強さも、感じられなくて、女の子と変わらないような気がしちゃったから」

 「それは、なんと言って良いのか分からないな……」

 「分からなくっても良いよ?だって、魅傀達はまだ友達になったばっかりなんだから。

 少しづつ知り合っていきたいにゃ」

 「いきなり求婚してきたのにか?」

 「あ、あの時はずっと会いたくて会いたくて、ちょっと焦ってたから……にゃあ」

 「そういうものなのか」

 「そういうものにゃ!」

 そんな会話をしながら、登り続けていると、やがて二人は山頂まで登頂した。重い荷物を降ろして、一層の解放感に浸って、うーんと背伸びを一つした魅傀は、境夜に振り返って


 「それじゃあ境夜にゃん。約束通り、ピクニックを始めるにゃ!」


 屈託の無い最高の笑顔をで言った。そんな彼女を見た境夜は……。


 (やっぱりこの子可愛いよな。笑った顔も、声を上げて笑う姿も。持ち上げる時結構ドキドキするんだよな柔らかいし、触れる場所とか気を付けないとセクハラで嫌われるかもしれないし。耳とか触ったら怒るだろうか?尻尾は?時折陰のある表情をするのも素直な感じがしてほっとするし…………実は最初に学校で会った時から好きだったから、為にならないと思いつつ告白も断れなかったわけだし。しかしお互いよく知らないし、魅傀が心変わりして振られたりしたらオレ耐えられそうにないしなあ……)


 「――ああ」


 一言だけ返事をして、境夜はシートを拡げたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神羅計画-Lekage‐ 不死を求めた老獪の不始末で死にかける学生達 納豆ミカン @nattomikan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ