第58話 4人は銅級冒険者
とりあえずトラブルが解決したようでひと安心である。中堅冒険者たちは、リーダー以外は頭を下げて謝っていたが、リーダーだけは意固地になっていて結局頭を下げる事すらしなかった。だが、ヴァルラにとってはそれはどうでもいい事なので小声でリーダー以外のメンバーに労いの声を掛けておいた。
さて、残されたのは銅級冒険者の4人だ。
「いや、すみませんでした。ご迷惑をお掛けしたようで」
リーダー格の男が頭を下げてお礼を言ってきた。
「いや、こっちが勝手にお節介しただけだ。別に気にしていないぞ」
ヴァルラは真顔で言っている。
「だがそれよりも、私がさっき使った魔法の影響は出てないか? 精神に作用させる魔法だし、初めて使ったから何かしら影響が出てないといいのだが……」
「いえ、今のところ大丈夫です」
さっき使った魔法についてヴァルラは心配になったのだが、4人ともが大丈夫そうでひとまずは安心した。
「本当に助かりました。あの冒険者ったら絡んできて鬱陶しかったので、本当に怖かったです」
魔法使いのような格好した女性が、横からお礼を言ってきた。
確かに、あのリーダーらしき冒険者は執拗だったように思う。周りが見えない面倒なタイプなのだろう。あの様子じゃ、あのパーティーは自然と解消されるかも知れないが、正直どうでもよかった。
「向こうの言い分も分からんでもないがな。挟撃されたからといって、すぐさま戦力を分断というわけにもいかんからな。難しいところぞ」
ヴァルラが顎を触りながら感想を話す。
「リーダー格の男の性格はともかく実力はあるようだからな。そのおかげであの時は正解になっただけだ。己の実力というのは正確に把握せねば命取りになるから気を付ける事だな」
「肝に銘じます」
ヴァルラの説教じみた言い方にも、銅級冒険者の4人は素直に受け入れていた。
「ふむ。ではここで自己紹介させてもらおう。私は先ほども言った通り、通称『森の魔女』と呼ばれておる。名前はヴァルラだ。こっちのメイド服の少女はキリー、横のウサギはホビィという」
「き、キリーです」
「ホビィなのです」
ヴァルラにつられるように、キリーとホビィも自己紹介をする。ヴァルラが視線を向けると、4人組も自己紹介を始める。
「俺たちは幼馴染で、一応俺がリーダーでスザークと言います」
「セイルと言います。見ての通りの魔法使いです」
「ブゲンだ。一撃に物を言わせる格闘家を目指してる」
「私はヒャコです。治癒師を目指してます」
前衛2の後衛2という、鉄板のような組み合わせだった。服装も見るからにそれぞれの職からイメージされる服装そのままという感じだ。型から入るのは別に悪くないので、ヴァルラもそれはあまり気にしなかった。
「君たちの実力を直接見てみたいものだな。コターン、近場で何か討伐系の依頼はあるか?」
「ん? ああ、ちょっと待ってろ」
ギルドマスターを呼び捨てにするヴァルラ。それを見たスザークたちはとても驚いていた。ギルドマスターを呼び捨てにして、しかも小間使いにしているのだから仕方ないだろう。ヴァルラの見た目は20歳代というのも意外性に拍車を掛けていた。
「君たちの実力を見ると同時に、キリーとホビィにもちょっと慣れてもらおうと思ってね。ちなみに2人とも銀級冒険者レベルの実力はあるからな」
「ええ?!」
ヴァルラが依頼を確認させた趣旨を説明する。ついでに言ったキリーとホビィの実力のレベルに4人は大声で驚いた。まぁおとなしそうなメイドと全身もふもふのウサギだから、見た目からすればそうなるのだろう。
「銀級冒険者に上がったマスールという男を、二人とも楽に倒してるからね。ついでに言えば、ホビィはキリーのサポートがあったとはいえ、オーク11体を全部一人で倒したくらいだぞ?」
4人組が言葉を失って固まっている。
そうこうしている間に、依頼の確認をしてきたコターンが戻ってきた。
「どうしたんだ、こいつら」
無言で立ち尽くす4人を見て、不思議なものを見ている気分になるコターン。
「なに、ちょっと驚いただけだよ」
「そうか……」
コターンは軽く流して、ヴァルラに討伐系の依頼の紙を渡す。それを軽く確認したヴァルラは、一つの依頼を受ける事にした。
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