第13話
「ん、おいしーー!!やっぱり裕兄ちゃんのご飯、めちゃくちゃおいしい!!」
「よかった。いっぱい食べろよ」
「っあ!お前俺のとこから取んじゃねぇ!!」
「研はいつも裕兄ちゃんの料理食べてるんだろ!?っていうか、研には裕兄ちゃんのご飯はもったいないでーす」
「んだとこのクソガキ!」
「一つしか年、違いませんけどー?」
「まぁまぁ二人とも、たくさんあるからケンカしないで」
これがこれからしばらく続くと考えるだけで、頭が痛い・・・・・・。それに、鈴音がいる間は研とのエッチもできない。過剰なスキンシップだってバレるだろうし、そもそも鈴音の前では甘えてきてはくれないのだ。
「そうだ、急だったから来客用の布団、押し入れの中なんだけど・・・・・・」
「だったら今日は裕兄ちゃんと一緒に寝る!」
「はぁ!?ソファで寝ろよ」
「うるさいダサ男!研は関係ないでしょ」
「じゃあ、俺がソファで寝るから鈴が俺のベッド使って」
「だったら兄さんが俺のベッド使えよ。俺がソファで寝る」
「なんでそうなるの!?裕兄ちゃん、僕のこと嫌いになった・・・?」
「そうじゃないよ。ただ、鈴ももう中学三年生だろ?二人じゃあ狭くて寝られないと思うよ」
『狭くてもいいもん・・・』と、むむぅと膨れる鈴を宥め、風呂が沸いたからと先に勧める。
「ったく、中三にもなって一人で寝れねぇのかよ」
「うるさい!!ドダくて鈍くさい底辺男のくせに!!」
鈴が持ってきた荷物の中からパジャマを取り出し脱衣所へと向かう途中、研が頬杖をつきながら最期の追い打ちをかけるように言うと、鈴は大きな声で研を罵倒してリビングから出ていった。
『こわっ』と身震いする研。普段言わないようなことを鈴音には言うのが少しだけ妬ましいと黒い感情を抱いてしまったが、おそらく妬いてくれたのだろうと思うとじわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
しかも温かい目で研を見ると目が合った研が顔を染めて俯いたので、さらに胸が嬉しさにきゅんと鳴いた。
風呂場の扉が閉められた音を確認すると、研が顔を近づけてくる。口に手を添える様子は、何か小声で話したいのだろう。
「俺のベッドで、いっしょに寝よう?」
「っ!!」
近づけた耳元に小声でそう言われ、一気に身体の熱が上がった気がした。
研は裕よりも身体が大きく、こちらに引っ越してくる際に大きめのベッドを購入したので、研のでは二人で寝ることができるのだ。今のベッドを選んだ理由は、研の身体の大きさ以外にも二人で寝られるようにという想いがあったのだが。
きっと二人でベッドの上に上がったら、ただ寝るだけでは終わらないと裕は思う。頬を赤くしている研も、同じことを思っているはずだ。可愛いよりも格好良い弟の恥じらった上目遣いと共に『ダメ?』とか細く聞かれ理性を落としかけたが、裕はにこりと無理矢理に笑って冷静さを取り戻そうとした。オレンジ色の明かりが漏れる風呂場からは、水の流れる音と鈴音の鼻歌が聞こえる。
「久しぶりに会ったんだし、少しは鈴の我儘を聞いてあげることにするよ。狭いと思うけどね」
長い間放置され水位を知らせる線の入ったカップを盆に乗せ、裕はそれらをシンクの中に静かに置いた。研はちぇっと小さく舌打ちを零し、先ほどの鈴音のようにむくれた顔をしたが、裕はそれを見てまた胸にじわじわとした喜びを感じた。
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