第9話
☀ ☀ ☀
「わっ!」
角を曲がったところで、前から来た人に思いきりぶつかった。
久しぶりの裕と過ごせる時間。小さな時から大好きな裕とは、彼が高校に上がるときに離ればなれになってしまった。会いに行こうと思ってもなかなか簡単には会いに行けない場所。それに、裕は生徒会に入ってしまいそうそう時間も取れないほど忙しそうだったため、鈴音は迷惑を掛けないよう会いたいという気持ちを我慢していた。
それなのに、涼しい顔をして裕との二人暮らし生活を獲得したもう一人の従兄弟である研。裕と同じ家に住み同じ時間を過ごす研を、鈴音は昔から大嫌いだった。煌びやかで輝いている裕の側にいる、ダサい男。こんな奴、裕には相応しくないといつもいつも思っていたのだ。いつも可愛いと言ってくれ、重い荷物は持ってくれて学校でも人気が高く皆一様に『格好良い』と言う自慢の従兄弟。そんな完璧な彼の側には、邪魔なダサい奴。
研の存在が、なんだか許せなかった。
裕と同じ高校に入学しても、年齢が三つ離れているため同じ空間にいることはできない。しかし同じ学校に入れば一人暮らしして裕の近くにいることができるし、もしかしたら裕の家に世話になれるかもしれないと思い、志望校を裕と同じ高校に設定した。
そして来年受験を控え、高校近くの偵察とモチベーションの引き上げと称して中学最後の夏休みを裕の家で過ごすことにしたのだ。実はアポなしで来てしまったのだが、裕は鈴音に甘いし、それを見越して両親にはちゃんと裕に世話になる予定だと言ってある。
久しぶりにあった裕は、写真で見るよりも格好良くなっていて、大人の魅力に溢れていた。前に見たときよりも色っぽく、思わず頭が真っ白になって勝手に喋り続けてしまい、挙げ句の果てには賞味期限切れのつゆを発見し買ってくると裕の返事も聞かずに出ていってしまったのだ。
1秒でも早く帰って格好いい裕を堪能したい!そう思って走ってたのに・・・・・・
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