第4話 お姉様ってば気持ち悪い。
お姉様の態度がわたしには理解不能。
わたしは娼館生まれ。
だから娼館に通っていた貴族どもの会話から色々知ってる。
貴族どもは、血筋がいちばん。血筋が入っていない人間は跡をつげない。
つまり、このみすぼらしいお姉様こそがあのお屋敷の親分。
もとい、当主。
当主のくせにどうしてお父様が連れ込んだ愛人で平民でしかないお母様にぺこぺこするのか判らない。
婿で期間限定の後見人でしかないお父様にぺこぺこするのかも判らない。
っていうか年齢からいしても、すでにお姉様が当主でしょ?
となりゃ、今やお父様は単なる平民。
お姉様はその命令に従う必要なんかこれっぽっちもない。
なんで命令通りに嫁ぐのか判らない。
権利をぜんぜん主張しないのが判らない。気持ち悪い。
お父様とお母様が押しつけてくるありとあらゆる頭の悪い無根拠な理不尽に逆らわないわけが判らない。
何度かお屋敷に来たまともなご友人達がお姉様の能力を褒めているのに、頭から信じようとしないのが判らない。
あきらかにお姉様を溺愛している叔母様や叔父様、
うちのお金儲けも領地の管理も全部やってるくせに、どうしてこんなに卑屈なのか判らない。
その全てを、どうして誰でも出来ることだとか思えるのか判らない。
お姉様がうちから消えたら、家が崩壊するのは確実なのに、それが判っていないのが判らない。
それとも判っているのかしら?
なら判っているのに、唯々諾々と従ってるのが判らない。
わかんない。わかんない。わかんなーい。
バカで愚劣なお母様とお父様とわたしを破滅させて復讐でもしたいのだったら、まだよかった。
そうしたら、ちょっとは共感出来たのに。
お姉様がそんな風に万事やってしまうから。
元々容姿以外何の取り柄もない凡庸なお母様はすっかりおかしくなって。
浮気者で下半身男のお父様もすっかりでかい態度になって。
ふたりとも子爵家の当主とその奥方気取り。
お姉様の元婚約者さまも、お姉様の手柄を自分の手柄だと思い込んでる。
お姉様が全部やっているのに。
お姉様が訴えもせず黙っているからってだけなのに。
まぁ判らなくもないわ。
お姉様が陰で全部やっちゃってて、あのふたりは浮かれ騒いでればいいんだもの。
楽だもの。ふわふわと楽だもの。
わたしだってひとのことは言えない。
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