第3話 お姉様に覚悟させておきます!


 本当にこの人は、なんでも持っているわよね。

 美貌も才能も家柄も友人も、なにもかも。

 本人が気づかないだけでみんな。


 この鈍感さは本当にムカつく。


 そもそも、どうしてこんな境遇を受け入れてるか判らない。

 そこがひどく気持ち悪いお姉様。


 見ているだけでむしゃくしゃが更に増す。


 どうしてお姉様がわたしじゃなかったんだろう。

 わたしだったら、この才能も美貌も思う存分使い倒すのに!


 ああ、いやだ。自分がどんどん醜くなる。


 我慢できない。


 惨めな自分から目をそらすために、口汚くいじめて罵倒してやりたくなる。

 自分がもっと惨めに小さくまずしくなるだけだと判っていても、そうしてやりたくなる。


 だから、そのイライラを吐き出すために、嫁ぎ先の侯爵の悪評を、こんこんと聞かせてやる。


「ふふ。子爵家令嬢のお姉様が、侯爵様と結婚出来るなんて、ほんと、よかったわね。例え相手が評判悪くたって侯爵だもの。

 その人が例え、5回も離婚してたって、顔に悪魔の形の大きな恐ろしい痣があったって、二目と見られない顔だって、肝心なのは心持ちだもの。

 それに、恐ろしいお顔は、どんな時でも仮面で隠してるから見ずにすむでしょうしね。それ以前に人を近づけないようにしてるみたいだし。

 でも、お姉様は一緒に子作りするんだから、醜い顔を見てしまうかもしれないわね。だから色々と覚悟して置いたほうがいいわ。

 だって、子供が出来なかったらナニをしてくるか判らない相手だもの。なんでも名家を守るためだけに結婚しては初夜に「君を愛せない」とかほざいて、せっかく大金積んで買った、もとい、用意した結婚相手に心底嫌われて、暴力をふるっては逃げられてるそうだもの。

 ね、覚悟が必要な相手でしょう? お母様とお父様とちがってわたしは親切だから忠告しておくわ。

 しかも、暴力をふるって相手に怪我を負わせても、大金をを払ってぜんぶなかったことにするんですって。

 いくら侯爵様でも、わたしだったら遠慮したい相手だけど、お姉様は文句ないんでしょう? 良かったわね」


 そうしたらお姉様ってば、もっとおどおどして泣きそうな顔になっている。


 いい気味よ。


 わたしはお姉様を嫌いだから。

 二度と顔も見たくないくらい嫌い。


 だって心底、気持ち悪いから。

 だから、これくらい意地悪したっていいわよね。




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