第2話 お姉様を護送します!
お姉様の嫁入りの日はすぐやってきた。
お母様とお父様は、パーティがあるとかでお姉様の見送りもせずお出かけ。
どうせ、この家の金で散財してくるつもりなんでしょ。
全部、お姉様が稼いでるってことも知らないで。
わたしは、熱があるからと言って計画通り残ったわ。
頃合いを見計らって玄関ホールへ降りていくと、お姉様は涙の別れの真っ最中。
前の奥様、つまり、お父様の正妻が生きてた頃から、ずっと仕えていた執事や侍女達と、抱き合ったり嘆きあったり、うるわしいわね。
わたしは、不機嫌な金切り声でそいつらを追い散らすと、いかにも意地悪な顔をして、お姉様に言ってやった。
「お姉様の気が変わって、駄々こねて嫁入りしなくなるといけないから、評判の悪い侯爵様のところへ行くのを見届けてあげる」
泣きそうな顔でわたしを見るだけのお姉様に、何か文句あるの? と切り口上に告げて、一緒の馬車に無理矢理乗りこんでやる。
馬車は走る。
イライラする無言を乗せて。
そういえば、姉妹ふたりきりで同じ空間にいるのは初めてかもしんない。
この不景気な顔を間近で見るのも今日が最後。
栄養不足で血色の悪い顔。やせほそった躯。それを包む継ぎ当てだらけのドレス。
あー。見てるだけでムカムカする。不快。
ちょっとだけ化粧して、少しだけ肉をつけて、似合う服装をすれば誰もが振り返る美女なのに。それにすら全く気づいていないお姉様。
わたしなんかより、本当はもっともっともーっと美人なお姉様。
こんなに素晴らしいのに、自分自身を愛することだけは理解できないお姉様。
自分のことには無関心なお姉様。
わたしは化粧で3割底上げだけど、お姉様なら、あそことあそこをああすれば見違えるような美人になるでしょうに。元がいいのに更に手を加えたらどれだけ傾国になることやら。
ああ、勿体ない。ねたましい。
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