第2話

 矢野さんは神社に行きたいというので、17時過ぎに神社に行くことにした。冬の神社は暗くて静かだった。

「なんで、こんな夕方に神社になんて行くの?」

「神に祈るのよ」

「え?お参り?」

「ただのお参りじゃないわ。昔ながらのやり方よ。神に祈って、災いを防ぐの」

「そういうことか」

「湯川君も、ちょっと手伝ってくれる?ほとんど私一人でやるから」

「別にいいけど。正直、早く帰りたいかな」

「急ぐわよ。心の準備がいるけど」

「何の話?」

「いいからついてきて」

そういうと彼女は、神社の奥へと向かった。その足取りは重かった。


 彼女は池の方に行くと立ち止まった。

「ここからは、あなたにも手伝ってもらうわ」

「何をするの?」

そう聞くと、矢野さんは黙ったまま、80cmくらいのロープをカバンから取り出した。

「湯川君。悪いんだけど、あそこにしめ縄がついている大きな石を転がしてきてくれる?」

「え?あれ触ったら罰が当たるやつじゃないの?結構重そうだし」

その重石は、直径が50cmで、高さが30cmくらいの楕円形の石だった。

「お願いだから、ここまで持ってきて」

矢野さんは、目を潤ませて優しい声で言うので、僕はついその石を池のほとりまで持ってきてしまった。

「ありがとう。湯川君はもう帰っていいわよ――」


 そう言いかけた時に、大地が強く揺れ始めた。神社の池は高波を上げ荒れ狂い、カラスたちが騒ぎながら一斉に飛び回る。池の水は渦を巻き、中心から何者かの影が揺らめく……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る