第7話・恋の落とし穴ボリック

筋次郎「んでさ、ツヨ子とはどうなってんの?」

太腕ノ助「へへへ・・・まぁ、なんっちゅーか、ぼちぼち?」

筋「というと?」

太「そのまんまだな」

筋「なんだよ。ラブレター渡しただろ」

太「そうだけどさー。でもまだ返事来ねぇーんだよ。どうしようもねぇんだろ?待つしか」

筋「そうやって待たせんのもなぁ。心配じゃねぇの?」

太「そりゃ心配だろこんちくしょう!ハラハラしててここ一週間一睡も取ってねぇぞ!でもしゃあねぇもんはしゃあねぇって!レディーの乙女心って物を知らんのか貴様!」

筋「知るかよ!ただ、怪しいっつってるだけ」

太「なにが?」

筋「レディーもくそも知らんがな、おめぇに気がありゃさっさとオッケー出せば良くね?逆に気がなけりゃ『ごめん、無理』って言えばいいじゃん」

太「じゃあ・・・促せって事?」

筋「いやいやいやそれは止めとけって。うぜぇやつって思われたら終わりだぞ」

太「まぁな。でもじゃあ、どうすりゃいいんだよ!このダブルちくしょうめ!なんで答えてくれねーんだよ!」

筋「泳がせてんだよ、お前を。いいな?聞け。恋愛ってのはな、取引なんだよ。彼女がお前と付き合ってやるって話なら、お前は彼女に対して何をしてやるんだ?」

太「そりゃ、こっちも付き合うだろ。そういうもんだろ。平等だと思うが」


筋次郎は怒って、太腕ノ助に向かってビンタをする。二人が2メートル以上離れて座っている為彼の顔に触れてさえいないが、強すぎる腕の動きが衝撃波を起こして間接的に太腕ノ助の頬を打つ。


筋次郎「馬鹿野郎!甘っちょろい事言うんじゃねー!頭の中の花畑からさっさと出てこいや!お前と付き合って何の見返りになるっていうんだ!?それだったら待つ意味もねぇだろうが!明らかに他の何かがある」

太腕ノ助「た、たとえば?」

筋「さぁな。例えば、彼女にとんでもない秘密があって、それを隠すのを手伝ってくれたら付き合ってやってもいいよって話かもな」

太「なるほどな・・・でも彼女に何の秘密が?」

筋「そりゃ秘密だから知ってる訳ねぇだろ。知りてぇなら学校が終わったら尾行でもしてみろ」

太「それって・・・案外いいアイデアかもな。貴様もたまにはまっとうな事が言えるじゃねぇか」

筋「だろ?」


最後の授業が終わり、部活前の筋トレが終わり、部活が終わり、部活後の筋トレも終わり、いよいよ家に帰る時間。太腕ノ助と筋次郎は壁の後ろに隠れて、学校から出ようとするツヨ子を観察している。彼女は慎重に周りを確認してから携帯を鞄から出し、電話をかける。すると、本の一秒だけ学校全体の明かりが消えてしまう。真っ暗である。明かりはすぐ戻るが、もうそこにはツヨ子は居ない。太腕ノ助は壁から飛び出て確認してみるが、やはりどこにも居ない。


太腕ノ助「一体どういう訳なんだ、これ」

筋次郎「さぁ。でも一つだけは分かった。彼女には何かしら隠し事がある」

太「おい、まさか・・・例の事件と関係が・・・?」

筋「どうだろうな。ありえんとは言い切れねぇ」

太「言い切れるだろ!なんでツヨ子ちゃんがお前の姉ちゃんを殺すんだよ!?」

筋「はぁ・・・な、太腕ノ助。貴様はあのスケの事が気に入ってるらしいから黙ってたんだが、動機ならあるだろ」

太「な、なんだそれ・・・」

筋「週一の学校の人気投票ってあるだろ?」

太「うん・・・」

筋「それで毎回俺のアネキが一位になってたのは知ってるよな」

太「そりゃまあ。うちのクラスでもたいてい、皆彼女に入れていたしな。お前含めて」

筋「じゃあ、毎回二位になってたのは誰だと思う?」

太「おい、おい、おい・・・」

筋「そう。葉和古ぱわふる ツヨ子つよこだ」

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