第6話・ブルーはベリーより出でて青より青し

事件の事で頭がいっぱいの太腕ノ助は、朝の筋トレに集中出来ずたったの二時間で切り上げた。学校に早く着いたものの、偶然にも寝坊した筋次郎はまだ居ないので廊下で軽くジョギングしながら情報を整理する事にした。


太腕ノ助「ブルーベリー大好き人間、か。そもそもブルーベリーとはなんだ?木の実だ。甘くて、小さい。一個に付き、多くて2グラムあるかないかだろ。100グラムで84.2カロリーが入っていると言われているから、ブルーベリー一個には1.6カロリーしかない訳だ。中央値でいうと、この学校の平均的な男子は確か・・・体重が86.1キログラムで体脂肪率が6%。控えめに見積もっても一日3,700カロリーは必要だろ。ブルーベリーしか食わなければ、一日2,300個位食う必要があるって事か。一秒に一個食ったとしても・・・いや、それはおかしい。理解出来ん。何故エネルギー効率の悪い物をあえて食う?このブルーベリー大好き人間とやらにはカロリー摂取以外の目的があるはず・・・」


偶然にも、ちょうどその時太腕ノ助は五年生の教室の前を通る。ふと中を見たら、席に座って朝ごはんを食べている生徒が居て、机の上に並んでいるぼたもちにクレアチンの粉状サプリを丁寧に振っている。


突然閃く太腕ノ助。


太腕ノ助「そうだ!微量栄養素だ!思い出せ、太腕ノ助、思い出せ!ブルーベリーに含まれている微量栄養素はなんだ!?ビタミンC・・・ビタミンK・・・マンガン・・・それに・・・もちろん・・・!」


偶然にも、学校で同じくジョギングをしていた骨太田先生がその時に向こうから来て、すれ違う。


太腕ノ助「・・・アントシアニンだ!」


骨太田「何の騒ぎだ、森々君。アントシアニンがどうしたんだ」


太腕ノ助「先生!アントシアニンは何の効果がありますか!?」


骨太田「アントシアニンと言えば視力回復だろ」


そう言って、骨太田先生は風の如く走り去る。


太腕ノ助「なるほど、視力回復か・・・でもこの学校で視力の悪い奴なんて居んのか?」


偶然にも、ちょうどその時バキっというと音がする。太腕ノ助は何かを踏んでしまっていたのだ。本来なら轟くような自分の足音のせいで気づきもしなかったが、その日は偶然にも裸足だったので感触で気づいた。屈んで、床に落ちていた物を拾う。恐らくガラスと何らかの金属で出来ている物だったという事はなんとなく分かるが、彼の無敵な足裏のせいでもはや粉々に成ってしまっていて、元の姿が分からない。しかし、少し目を動かせばすぐとなりに手がかりを見つけてしまう。割れた眼鏡。汚れた眼鏡。左右対称じゃない眼鏡。レンズに傷がついた眼鏡。無選別せんべいのように大量に積んである眼鏡の山。


太腕ノ助「なんだこりゃ?メガネ・・・?にしてもすげぇ数だ。俺の胸の高さまである。でも、誰のだ?」


偶然にも、眼鏡の山から拾った一枚のフレームの内側に持ち主の名前がマジックで書いてある。いや、これに限っては偶然ではない。なんせ、どれを確認しても同じ名前が書いてある。はっきりと。


「もやしの ほそお」と。

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